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第百三十五話 美味しい食べ物の効果
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クラレシアの民達の明るい顔を見て私の心の中に安堵の気持ちが広がった。
見た感じ祖国を失った事に落ち込んでいる様子は見られなかったが、もちろんそれは私に気を使ってのことだろう。
きっと彼らは自分達が悲しめば私が責任を感じてしまうと考えたのかも知れない。ただ純粋に私の無事を喜び、これからのことに夢を馳せる彼らに感謝の気持ちが湧き上がった。
祖国を失っても生きる喜びを、そしてこの地を第二の祖国と思えるような安らぎを彼らが掴んでくれればと私はそう願わずにはいられなかった。
クラレシアの民達と再会した翌日、私はお店開店の為の準備を再開した。ベアトリーチェだった記憶は戻ったけど、カリンの記憶を無くしたわけではない。
それどころかどちらかと言うとカリンだった記憶の方を鮮明に覚えている。だからお店を開くという夢は私の心の中に留まっている。
「えーと、開店はいつにしようかな。メニューを決定して、メニュー表を作成して……宣伝も必要ね……」
書斎の机で今後の計画を立てながらこれからするべき事を思案する。
「そうね、宣伝も兼ねて何か試食品を彼方此方に配ろうかしら? クラレシアの民達にも私の料理を食べて貰いたいわね……」
プルルルルッ……
ポケットの中から突然聞こえた音にビクリと肩を震わせた。静かな室内に鳴り響く魔通器を手に取るとショウからの連絡だった。
「カリン、大丈夫か? 何も問題ないか? よければそっちに行っても良いか?」
魔通器から矢継ぎ早に聞こえてくるショウの声はとても心配そうだ。
クラレシアから直ぐにクランリー農場を後にしたからあまり説明することもできなかったことを思い出す。私は少し考えてショウに家に来ても良いと伝えた。
それから十数分後、グレンが『ふむ、ショウが来た様だぞ』と私に教えてくれた。
え? クランリー農場からここまで30分はかかるよね。あまりにも早い来訪に私は吃驚したが、それ程ショウが私を心配してくれたのだろう。
お店のエントランスでショウを出迎える。ショウは私を一目見ると躊躇せずに近寄ってきた。私が声を掛ける間もないあっという間の出来事だった。気がつくと私はショウの腕の中にいたのだった。
「カリン、よかったぁ……元気そうで……」
心底ホッとしたような声が私の頭上から聞こえた。
元気そうも何もクランリー農場で別れてから数日しか経っていないよね。何をそんなに心配する事があるのか疑問に思った。
「えっ……とぉ、ショウ? あの……もちろん私は元気だから」
私はショウを安心させるように自分の腕をショウの背中に回し擦った。
「カリン……が、あの時真っ青になって倒れたから……」
驚くことにショウの頬には涙が伝っていた。
え? えーっ? 何で? いや、確かに私あの時倒れたけど…………。
ベアトリーチェの記憶が戻る前にアーニャの顔を見て倒れたときのことを思い出す。もしかして、ショウはあの時のことにショックを受けていた?
「あの、ショウ? 私は本当に大丈夫よ」
そう言って私はハンカチを出すとショウの濡れた頬を優しく拭った。
「兎に角、お茶でも飲んで落ち着きましょう。美味しいお菓子もあるわよ」
宥めるように言いながらショウの手を取り、お店にあるテーブルに誘導する。
「うん……」
潤んだ瞳で子供のように返事をするショウ。
え? なんか可愛い?
私はショウの可愛さに内心身悶えた。
やばいわ。ショウがとても可愛く見える。前世の記憶とベアトリーチェだった記憶をプラスすると見た目は私の方が年下だけど、中身はえっといくつ年上になるかしら? ……うん、考えたくないわね。
兎に角、そのせいで母性本能が芽生えた……のかな?
お茶と以前作っておいたチョコクッキーをトレーに乗せてショウの座るテーブルに運ぶと、何故かグレンまでショウの隣に当たり前の様にちょこんと座って待っていた。
もちろん、グレンの分も忘れていない。
ショウは目の前に置かれたチョコクッキーに目を輝かせながらポイッと一口自分の口に投げ入れた。ショウの口からサクサクという音が零れる。
「やっぱりカリンが作ったお菓子は美味しいよ。カリンは天才だね」
お決まりのセリフを口から放つショウの顔に浮かんださっきまでの不安が払拭されたように見えた。
美味しいものって心を落ち着かせる効果もあるのね。
そう思った私はクラレシアの民達に私の料理を食べて貰おうとショウにお願いの言葉を発した。
「ショウ、私ね。沢山お弁当を作らなくちゃならないの。手伝ってくれる?」
見た感じ祖国を失った事に落ち込んでいる様子は見られなかったが、もちろんそれは私に気を使ってのことだろう。
きっと彼らは自分達が悲しめば私が責任を感じてしまうと考えたのかも知れない。ただ純粋に私の無事を喜び、これからのことに夢を馳せる彼らに感謝の気持ちが湧き上がった。
祖国を失っても生きる喜びを、そしてこの地を第二の祖国と思えるような安らぎを彼らが掴んでくれればと私はそう願わずにはいられなかった。
クラレシアの民達と再会した翌日、私はお店開店の為の準備を再開した。ベアトリーチェだった記憶は戻ったけど、カリンの記憶を無くしたわけではない。
それどころかどちらかと言うとカリンだった記憶の方を鮮明に覚えている。だからお店を開くという夢は私の心の中に留まっている。
「えーと、開店はいつにしようかな。メニューを決定して、メニュー表を作成して……宣伝も必要ね……」
書斎の机で今後の計画を立てながらこれからするべき事を思案する。
「そうね、宣伝も兼ねて何か試食品を彼方此方に配ろうかしら? クラレシアの民達にも私の料理を食べて貰いたいわね……」
プルルルルッ……
ポケットの中から突然聞こえた音にビクリと肩を震わせた。静かな室内に鳴り響く魔通器を手に取るとショウからの連絡だった。
「カリン、大丈夫か? 何も問題ないか? よければそっちに行っても良いか?」
魔通器から矢継ぎ早に聞こえてくるショウの声はとても心配そうだ。
クラレシアから直ぐにクランリー農場を後にしたからあまり説明することもできなかったことを思い出す。私は少し考えてショウに家に来ても良いと伝えた。
それから十数分後、グレンが『ふむ、ショウが来た様だぞ』と私に教えてくれた。
え? クランリー農場からここまで30分はかかるよね。あまりにも早い来訪に私は吃驚したが、それ程ショウが私を心配してくれたのだろう。
お店のエントランスでショウを出迎える。ショウは私を一目見ると躊躇せずに近寄ってきた。私が声を掛ける間もないあっという間の出来事だった。気がつくと私はショウの腕の中にいたのだった。
「カリン、よかったぁ……元気そうで……」
心底ホッとしたような声が私の頭上から聞こえた。
元気そうも何もクランリー農場で別れてから数日しか経っていないよね。何をそんなに心配する事があるのか疑問に思った。
「えっ……とぉ、ショウ? あの……もちろん私は元気だから」
私はショウを安心させるように自分の腕をショウの背中に回し擦った。
「カリン……が、あの時真っ青になって倒れたから……」
驚くことにショウの頬には涙が伝っていた。
え? えーっ? 何で? いや、確かに私あの時倒れたけど…………。
ベアトリーチェの記憶が戻る前にアーニャの顔を見て倒れたときのことを思い出す。もしかして、ショウはあの時のことにショックを受けていた?
「あの、ショウ? 私は本当に大丈夫よ」
そう言って私はハンカチを出すとショウの濡れた頬を優しく拭った。
「兎に角、お茶でも飲んで落ち着きましょう。美味しいお菓子もあるわよ」
宥めるように言いながらショウの手を取り、お店にあるテーブルに誘導する。
「うん……」
潤んだ瞳で子供のように返事をするショウ。
え? なんか可愛い?
私はショウの可愛さに内心身悶えた。
やばいわ。ショウがとても可愛く見える。前世の記憶とベアトリーチェだった記憶をプラスすると見た目は私の方が年下だけど、中身はえっといくつ年上になるかしら? ……うん、考えたくないわね。
兎に角、そのせいで母性本能が芽生えた……のかな?
お茶と以前作っておいたチョコクッキーをトレーに乗せてショウの座るテーブルに運ぶと、何故かグレンまでショウの隣に当たり前の様にちょこんと座って待っていた。
もちろん、グレンの分も忘れていない。
ショウは目の前に置かれたチョコクッキーに目を輝かせながらポイッと一口自分の口に投げ入れた。ショウの口からサクサクという音が零れる。
「やっぱりカリンが作ったお菓子は美味しいよ。カリンは天才だね」
お決まりのセリフを口から放つショウの顔に浮かんださっきまでの不安が払拭されたように見えた。
美味しいものって心を落ち着かせる効果もあるのね。
そう思った私はクラレシアの民達に私の料理を食べて貰おうとショウにお願いの言葉を発した。
「ショウ、私ね。沢山お弁当を作らなくちゃならないの。手伝ってくれる?」
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