転生少女は異世界で理想のお店を始めたい 猫すぎる神獣と一緒に、自由気ままにがんばります!

梅丸みかん

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第百四十七話 他のお店?

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「アーニャ、会社を設立するのはいいけど運営は任せたわ」

 私はアーニャにそう宣言した。私がやりたいのはお店であって会社ではない。アーニャがあまりにも熱を持って語るから同意したけど私は小さなお店で美味しい料理が作れれば満足なのだ。

「分かりました。でも、代表者はカリン様でお願いします。私はあくまでもカリン様の天才的料理を世界中に広めるのが目的ですので」

 どうやらアーニャの決心は揺らがない様だ。私はアーニャに後の事を丸投げ……託し、お店の開店準備に集中することにした。

 それから数日後、アーニャの指示で私の家の斜め後ろに立派な建物が二棟建設された。一棟は会社事務所、もう一棟が社員寮となる。

 建てたのはクラレシア人の中の建築を専門とした錬金術師である。

 工房地帯で働いている人の中から何人かアーニャが引き抜いてきたのだ。

 森の中に違和感なく建てられたそれぞれの建築物は、クラレシアの錬金術師の優秀さを如実に表していた。

 彼らにも給金を支払うべくいつの間にか商会口座に貯まっていた使い道のないお金をアーニャに渡していた。

 最初は固辞していたアーニャだったが会社設立の為の資本金だと言って預けた。

「資本金?」と首を傾げるアーニャに私は簡単に説明した。

 本来なら資本金は会社を起業する際の運営資金となるが、前世の特徴としては金額が多いほど信頼性や安定性が増し、取引の判断材料となっていた。

 会社という概念がないこの世界では組織を立ち上げる際の必要経費という説明に留めた。

 建築の作業に従事した者に関わらず、他の業務に携わった者達にも仕事に対して適切な対価を支払うようにアーニャには伝えた。

 私に取って無償奉仕なんて考えられない。何でもタダで物を貰ったり、仕事をして貰ったりすれば本当に必要な時にこちらから頼みづらくなるものだ。


 数日後、できあがったばかりの会社事務所で私のお店のオープンに向けての会議が行われることになった。

 私の家から歩いて数分の場所に有るその平屋の建物は殆どこの森の木材で建てられているが、前面がガラス張りでこの森の景色を堪能することができる。

 森と調和したその建物に感心してしまった。クラレシアの建築錬金術師は本当に有能である。

 建てられた事務所の中には執務室、事務室、会議室、洗面所とトイレ、給湯室が備え付けられていた。いつの間に準備したのか、木製の事務机や椅子などの家具も事務用品も、その他必要な物も全て準備されていた。

 快適に仕事ができそうな空間であるのは間違いない。

 不思議なのは広めに作られた調理場があることだ。前世にあった学校の調理室や料理教室などで使われていた様な調理場だ。

 ここでみんなで料理を作るつもりなのかしら?

 まあ、それも楽しそうだけど……。

 僅かな疑問を抱えつつ、アーニャの案内で会議室に行くと、エゴンとワシリーが席を立ち私を迎え入れてくれた。

 森の風景に包まれたガラス張りの会議室ではダンテさん、ウォルフ様、フランさん、エミュウさん、ドロシーさんが勢揃いしていた。

「え? みんな……ウォルフ様まで……」
 私は錚々たるメンバーを前に言葉を詰まらせた。

「カリン、いよいよ君の店がオープンするというではないか。もちろん、私達も協力は惜しまないよ」
「私も協力は吝かではない。君の料理はこの領土どころかこの国、この世界の食生活を豊かな物にしてくれるのは間違いないだろうからな」

「ダンテさん、ウォルフ様、ありがとうございます」

 ダンテさんとウォルフ様は最初から私に協力してくれていた。彼らがいなければ私は途方に暮れていたに違いない。

「カリンちゃん、私もカリンちゃんのお店に貢献出来るなんて嬉しいわ。先日、アーニャさんの依頼を受けてカリンちゃんのお店の洋服を担当することになったのよ。カリンちゃんのお店だけじゃなくカリンちゃんのレシピを提供する他のお店のも含めてね」

 ん? 私の店だけじゃなく? 私のレシピを提供するお店? どういうこと?

 私の中で疑問が浮上した。

「ありがとう、フランさん。でも他のお店って?」
「ああ、それはカリン様の料理を広めるためにカリン様系列のお店を他の場所にも提供する計画なのです。まあ、それは会議で詳しく説明いたしましょう。

 私の有能秘書アーニャが何やら色々と知らないうちに計画を立てているらしい。

 まぁ、私が全てアーニャに丸投げ……じゃなくておまかせしちゃったから今更文句が言える訳もない。

 これは引き続きおまかせすることにしよう。

 ここで私が口を出せば面倒なことになるだろう。

 アーニャは有能秘書なのだからきっと大丈夫に違いない。

 私は一抹の不安を頭から追い出し、得意のスルースキルで会議に参加するのだった。
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