転生少女は異世界で理想のお店を始めたい 猫すぎる神獣と一緒に、自由気ままにがんばります!

梅丸みかん

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第百四十八話 王命

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 会議は問題なく進んでいった。

 というか、会議と言うよりもアーニャが彼らと契約した取り決めを報告するだけなので報告会と言った方が正しいかも知れない。

 会議開始前に珍しくショウが来なかったので少し気になってダンテさんに聞いたら、

「ああ、数少ない友人が会いに来てたな。まあ、あいつは脳筋だからいてもいなくても変わりないから別にいいだろう」

 と、息子に対する辛辣な言葉を述べていた。まあ、その言葉には愛情が含まれているから問題ないだろうが。

 それにしても友達?

 ショウに友達なんていたの?

 なんて失礼なことを考えた私は、出会って間もない頃のショウは特殊な能力のせいで色々と拗らせていたことを思い出した。

 あの時はあまりにも無愛想なショウの態度に戸惑ったが今はそんな素振りを微塵も感じさせない。

 ロゼッタさんに恫喝され、言いたいことをぶちまけて心に鬱屈していたもやもやが霧散したのかも知れない。

 昔から知っているロゼッタさんには敵わないなぁと少しだけショウとロゼッタさんの仲を羨んだことを覚えている。

 特別な自分の能力に翻弄され、他者を寄せ付けないように見えたショウが心から信頼出来る友人を作るのは難しいように思えた。

 もしかしたら、その後に出来た友達なのかしら?

 でも、ショウに友達がいるのなら良かったわ。

 私は安堵の息を吐いたが、このときはまさかタダの平民であるショウの友人が王族だなんて思いも寄らなかった。

 ダンテさんの出自が侯爵家だと聞いていたことをすっかり忘れていたのだ。だとしたら、今はともかくダンテさんがセレンさんと結婚する前……というか、出奔前は王族との関わりが有ったかも知れないのに。


 話し合いの中、全然関係無いことを考えている内に、どうやらウォルフ様とアーニャの間でトーシャの根や輸送システムについての取り決めを突き詰めていたようだ。

 ドロシーさんには、私が以前創造魔法で製作したトーシャの根を切る為のナイフや紙バッグの錬金用魔法陣を伝えていたので私の店で持ち帰り用スイーツに使うパッケージを依頼することになっている。


 輸送に関してはエミュウさんが開発した魔導車を輸送用に発展させ、魔導輸送車として活用することになった。

 今まで遠方への輸送に何日もかかっていたが、今後はその日の内に荷物を届けることが可能となる。

 つまり、食料品を新鮮なうちに届けることができるのだ。クランリー農場ではセレンさんが状態維持の魔法を施していたが、他の農家では誰もが出来ることではなかった。

 魔導輸送車の登場で、輸送時間が短縮され食べ物も短時間で各地に届けられるようになる。工房地帯で作られた商品は何れ簡単に全国で販売されるのも時間の問題だ。
 
 そうなるとこの世界では高級品だった砂糖も安価な金額で売られるようになるだろう。

 但し、ウォルフ様の話では王宮から規制が入っているので先ずはタングスティン領内での販売に留められるそうだ。

 魔導輸送車だけではなく、そのうち乗り合い馬車ではなく魔導バスが各地を往来することをウォルフ様が仰った。

 本来なら王都での運行が優先されるようなのだが、今回は魔導車を開発したのがタングスティン領に居住するエミュウさんであったこと、元クラレシア神聖王国王女である私もそこを拠点としていることを鑑みてタングスティン領の方を優先していいと許可されたそうだ。

 ん? なんで私が住んでいるからって優先されるの? と思ったらウォルフ様が

「神獣様が守る王女様を優先するように」
 との王命が下ったとのことだった。

 いや、『元』王女様ね。それに今の私はカリンの記憶が強すぎて元王女としての自覚は殆どない。

 でもここで反論するのも面倒なのでもうそう言うことでいいやと思う私だった。

 そう思って溜息を吐いた私に今度はエミュウさんが真剣な顔で言った。

「カリンちゃん、お話したいことがあるの。もし、お店の開店準備で忙しいと思うけど、少しの間時間を取れるかしら?」

 会議中に時々私の顔を見て考え込むようにしていたのに気がついていた。私、エミュウさんに何かしてしまったのだろうか?

 とは言え、ここ最近お互いに色々と忙しくて話す時間がなかった。エミュウさんも王都に行っていたみたいだし。

 思い詰めたような表情に私は黙って頷くことしか出来なかった。


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