転生少女は異世界で理想のお店を始めたい 猫すぎる神獣と一緒に、自由気ままにがんばります!

梅丸みかん

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第百五十一話 天才魔導具師の過去【2】

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 その時に、穏やかで透き通る様な女性の声が聞こえたのよ。

『エミュウ・グランディア。この水を飲みなさい。貴方に智慧を授けます。その代わりこの先出会う精霊姫を助けなさい。彼女の死はこの世界の崩壊を意味します』

 すると、目の前に水の塊が現れたの。私はそれまで何日も食べ物も水も摂らなかったから直ぐに口を寄せて一気に飲んだわ。

 その瞬間、前世の記憶が蘇ってきたと同時に身体に生気が漲ってきたのよ。

 クリアになった頭の中には日本の電機メーカーでインダストリアルデザイナーとして働く自分の姿が映し出されたの。

 インダストリアルデザイナーっていうのは、電化製品の外観デザインやユーザーインターフェースの設計をする担当者のことよ。つまり、見た目や機能を設計する専門職なの。

 そのことを思い出しただけで、これまでより様々な魔導具を開発することが可能になったわ。

 そして今世での昔にあった出来事も鮮明に思い出すことができたの。その中でも以前助けたことがある冒険者達のことはその時の私を救うことになったわ。

 その冒険者は私が幼い頃、森の中で素材探しをしていた時に出会ったの。怪我をして仲間とはぐれたと言っていたから私が作った宅送鳥を渡したのよ。

 私が作った宅送鳥はその人の記憶に眠る魔力を察知してその相手に向かって飛ばすことも出来るからね。実はそれ、私が父に教えてもらって初めて作った魔導具だったんだけど役に立って良かったわ。

 そのお蔭で彼は無事に仲間に出会うことが出来たの。

 去り際に彼は言ったわ。「万が一助けが必要な時は自分を頼るように」と。

 彼が私に向けてくれた温かく包むような笑顔を思い出し、たった一つだけ持っていた宅送鳥を彼に飛ばしたの。

 あの時出会った冒険者、ダンテさんへ。

 ダンテさんがティディアール王国に向かうと言うことしか知らなかったけどまさかクランリー農場の経営者と結婚していたなんてその時初めて知ったのよ。

 カリンちゃんもよく知っていると思うけど、ダンテさんはあの通りとても優しい人だからね。直ぐに私の元に来て助けてくれたわ。

 そればかりか、私が魔導具店を開くために色々手伝ってくれたのよ。

 それから前世の記憶を元に色々な魔導具を開発してきたわ。

 魔導具店を開いて10年程経ったころかしら? カリンちゃんが店に現れたときにあの時の女性の声が蘇ったの。ああ、カリンちゃんがあの声が言っていた精霊姫だと直ぐに分かったわ。

 だって、ノアが精霊姫はクラレシア神聖王国の女王メディアーナ様の御子だろうと言っていたんだもの。メディアーナ様の特徴は藍色の髪に瑠璃色の瞳。まさにカリンちゃんの容姿そのものだったから。

 前向きに夢を追いかける明るい少女。

 でもそこで違和感を感じたの。

 亡国の元王女様が持つような雰囲気じゃなかったから。

 だってカリンちゃんってば、暗い影は一欠片も持っていなかったんだもの。

 私は、ドメル帝国にクラレシアが侵略されたことを知っていたからかなり戸惑ったわ。

 だから、記憶を失っていると聞いて直ぐに納得したの。それでもカリンちゃんの様子は記憶喪失だけでは片付けられなかったから、料理を食べてもしかしたら前世の記憶が有るんじゃないかと推測したのよ。

 ふふふっ、どう? さっき食べた栗のスイーツ盛り合わせにあったお菓子は私も前世で食べたことが有るから間違いないでしょ?

 それにしてもカリンちゃんの料理は何を食べても美味しいわね。

 あら? ありがとう、カリンちゃん。ノアが恨めしそうに私を見ていたからノアの分も用意してくれたのね。 

 良かったわね、ノア。

 ああ、そうそう、ノアもカリンちゃんに伝えたいことと言うか、謝りたいことが有ったんだったわね。

 じゃあ、次はノアの番ね。カリンちゃん、ノアの告白を聞いてあげてね。


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