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第百五十二話 妖精猫の告白
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僕は精霊王オルフェ様の眷属として使えていました。
オルフェ様はクラレ族の族長の娘であるレティアーナ様を見初め妃とされました。
そう、クラレ族とは後のクラレシアの民のことです。オルフェ様はレティアーナ様を守る為にクラレシア神聖王国を建国したのです。
そもそも、精霊王であらせられるオルフェ様には人間の国など必要無いのですから。
お二人の愛の結晶としてメディアーナ様がお生まれになりました。
メディアーナ様を守護するよう僕はフォルフェ様から仰せつかったのです。
オルフェ様の言葉は絶対です。僕はメディアーナ様を命を賭して守らなければならなかったのに結局それは叶いませんでした。
何故なら、僕はドメル帝国に捉えられメディアーナ様の守護をすることが出来なくなってしまったからです。
メディアーナ様とフォルナックス様が婚姻した直後のことでした。クラレシア神聖王国皇城にドメル帝国から親書が届いたのです。
内容は、フォルナックス様がドメル帝国の王族であり、生まれて直ぐに従者によって連れ去られてしまったこと。直ぐにドメル帝国に戻って来て欲しいとのことでした。
メディアーナ様もフォルナックス様も最初は不信に思っていました。
二人ともフォルナックス様はドメル帝国の悪習により、捨てられたことを知っていたからです。
ドメル帝国に問い合わせたら、悪習は昔のことでありその悪習による迷信を信心した従者が勝手にことに及んだ。帝国では王子であるフォルナックス様をずっと捜していたことが書かれていたのです。
フォルナックス様は取り敢えず一度ドメル帝国を訪れることにしました。ドメル人であるフォルナックス様は魔力が弱く、魔法が使えませんから僕もお供することになりました。
フォルナックス様はメディアーナ様に直ぐに戻ると伝えてクラレシアを後にしました。数人の護衛と僕だけを連れて。
次期王配となるフォルナックス様への護衛としては些か少ないように思えるかも知れませんが、フォルナックス様の母国に帰ることとクラレシア人の魔法は強力であり、魔法が使えないドメル人を制圧出来るだろうと思ってのことでした。
この時、どんなに強力な魔法を使えてもこれまで争い毎に縁がなく、疑うことも知らないクラレシア人の性質を鑑みていなかったのです。
皇宮内では魔法を使うのは禁止だと言われ、魔力封じの腕輪を付けられることになってしまいました。クラレシアの護衛達は何の疑いもなくそれに応じたのです。
最初は何の問題もないように見えました。ドメル王国もフォルナックス様を歓迎していたようでしたから。
しかし、フォルナックス様がメディアーナ様と婚姻したと知るやいなや今度はメディアーナ様を呼び寄せるように強要してきたのです。
不信に思ったフォルナックス様はもちろん断りました。すると、何だかんだ理由を付けてフォルナックス様を皇宮に留めようとしたのです。
一ヶ月も経った頃、流石にフォルナックス様は強引にクラレシアに戻る事にしました。そんなフォルナックス様は皇宮の兵士に捉えられクラレシアに帰る事が出来なくなってしまったのです。
僕は即座に隠れてメディアーナ様に念話で知らせました。フォルナックス様は念話は使えないし、護衛達は魔力封じの腕輪をされていましたから、僕しか知らせることができる者はいなかったのです。
メディアーナ様はクラレシアの者達に内緒でドメル帝国に直ぐに入国し皇宮まで辿りつきました。きっと周りに話せば止められてしまうと思ったのでしょう。
メディアーナ様はフォルナックス様のことになると周りが見えなくなるほど感情に左右される方でしたから。
僕も焦っていたのでしょう。本来ならメディアーナ様に念話を送るべきではなかったのです。
僕は皇宮の者達に気付かれないようにメディアーナ様をフォルナックス様が幽閉されている地下牢へ念話で誘導しました。
隠蔽の魔法で姿を消していた僕はフォルナックス様が捉えられたときにこっそり後を追っていたのです。
地下牢の前でメディアーナ様と対面した時に僕は愕然としました。メディアーナ様のお腹からメディアーナ様とは違う魔力波を感じたのです。
メディアーナ様はまだその事には気付いていないようでした。
でも、それよりもフォルナックス様を助け出すのが先です。
僕とメディアーナ様はフォルナックス様を何とか地下牢から救い出し逃げようとした時に皇宮の兵士達に囲まれてしまったのです。
その場所にはドメル帝国の皇太子で、フォルナックス様の双子の兄であるフェルカドが立ちふさがっていました。
実はこれはメディアーナ様をおびき出すための罠だったのです。
まんまと僕はフェルカドの罠に嵌ったということです。
『ほう、これはこれは。貴方がクラレシアの夜の真珠と言われている王女殿か? 私の側妃に相応しいほど美しい。フォルナックス、心配するな。お前の妃は私が面倒を見てやる』
『兄上、何を世迷い言を言っている。私がディアを渡すわけがないだろう!!』
フェルカドの言葉を聞いたフォルナックス様は激昂し、声を張り上げました。
『ふん、だからこうするのだよ』
そう言うやいなや、フェルカドの剣がフォルナックス様の胸に突き刺さったのです。
それは一瞬のことで、何が起こったのか把握することさえ直ぐには出来ませんでした。
『いやあああぁあああー!!!!』
メディアーナ様の悲鳴が辺りに響き、僕は咄嗟に転移の魔法陣をメディアーナ様の頭上に展開しました。
『いや、待って、ノア。フォルが……フォルを助けなきゃ』
『メディアーナ様、貴方はお腹の中に御子様を宿しています。フォルナックス様は僕にまかせて御子様の為にとにかくこの場から離れて下さい』
フォルナックス様は胸を一突きされどう足掻いても助けられないのは明白でした。それでも僕はメディアーナ様だけでもこの場から逃がすことに尽力したのです。
僕の魔力では御子様を宿したメディアーナ様を転移させるだけで精一杯だったのです。
クラレシアの騎士達がメディアーナ様を捜して皇宮の近くまで来ているのを感じていましたから、後は彼らに託すことにしたのです。
魔力を使い果たした僕はドメル帝国に捉えられ、地下室に幽閉されると魔力が回復する度に魔力を極限まで吸い取られ続けました。次第に魔力回復が追いつかなくなり使い物にならないと思ったのでしょう。
次第に誰も僕の元には訪れなくなったのです。僕は何とか最後の力を振り絞り、逃げ出しました。
そんな時、エミュウが見つけて僕を連れて逃げてくれたのです。
僕は結局フォルナック様の命を助けることが出来なかった。何とか出来たのは精霊王様にフォルナックス様の命の灯火が間も無く消えるとオルフェ様に念話で知らせることだけだったのです。
もう既に人間界では生きられないフォルナックス様でも、精霊界でなら精霊王オルフェ様の力で生きることができます。
『後はまかせなさい』
オルフェ様はそう言ってフォルナックス様を精霊界に連れて行きました。
メディアーナ様には念話でその事と共に、僕は大丈夫だから先ずは御子様を育てることを優先して欲しいと伝えました。
エミュウに助けられ、ティディアール王国で暮らし始めてからもクラレシアのことは気になっていました。でも、僕は弱くなった魔力のせいでどうせ戻っても僕には何も出来ないと思い戻る事が出来なかったのです。
なんて、それはタダの言い訳にすぎませんね。
本当は、クラレシアの守護者であるのにフォルナックス様を助けられないばかりか結果的にクラレシアの結界を破る魔導具製作に荷担してしまったことに後ろめたさを覚えていたせいでしょう。
神獣様、御子様……カリン様を守護して下さり本当に感謝の念に堪えません。
オルフェ様はクラレ族の族長の娘であるレティアーナ様を見初め妃とされました。
そう、クラレ族とは後のクラレシアの民のことです。オルフェ様はレティアーナ様を守る為にクラレシア神聖王国を建国したのです。
そもそも、精霊王であらせられるオルフェ様には人間の国など必要無いのですから。
お二人の愛の結晶としてメディアーナ様がお生まれになりました。
メディアーナ様を守護するよう僕はフォルフェ様から仰せつかったのです。
オルフェ様の言葉は絶対です。僕はメディアーナ様を命を賭して守らなければならなかったのに結局それは叶いませんでした。
何故なら、僕はドメル帝国に捉えられメディアーナ様の守護をすることが出来なくなってしまったからです。
メディアーナ様とフォルナックス様が婚姻した直後のことでした。クラレシア神聖王国皇城にドメル帝国から親書が届いたのです。
内容は、フォルナックス様がドメル帝国の王族であり、生まれて直ぐに従者によって連れ去られてしまったこと。直ぐにドメル帝国に戻って来て欲しいとのことでした。
メディアーナ様もフォルナックス様も最初は不信に思っていました。
二人ともフォルナックス様はドメル帝国の悪習により、捨てられたことを知っていたからです。
ドメル帝国に問い合わせたら、悪習は昔のことでありその悪習による迷信を信心した従者が勝手にことに及んだ。帝国では王子であるフォルナックス様をずっと捜していたことが書かれていたのです。
フォルナックス様は取り敢えず一度ドメル帝国を訪れることにしました。ドメル人であるフォルナックス様は魔力が弱く、魔法が使えませんから僕もお供することになりました。
フォルナックス様はメディアーナ様に直ぐに戻ると伝えてクラレシアを後にしました。数人の護衛と僕だけを連れて。
次期王配となるフォルナックス様への護衛としては些か少ないように思えるかも知れませんが、フォルナックス様の母国に帰ることとクラレシア人の魔法は強力であり、魔法が使えないドメル人を制圧出来るだろうと思ってのことでした。
この時、どんなに強力な魔法を使えてもこれまで争い毎に縁がなく、疑うことも知らないクラレシア人の性質を鑑みていなかったのです。
皇宮内では魔法を使うのは禁止だと言われ、魔力封じの腕輪を付けられることになってしまいました。クラレシアの護衛達は何の疑いもなくそれに応じたのです。
最初は何の問題もないように見えました。ドメル王国もフォルナックス様を歓迎していたようでしたから。
しかし、フォルナックス様がメディアーナ様と婚姻したと知るやいなや今度はメディアーナ様を呼び寄せるように強要してきたのです。
不信に思ったフォルナックス様はもちろん断りました。すると、何だかんだ理由を付けてフォルナックス様を皇宮に留めようとしたのです。
一ヶ月も経った頃、流石にフォルナックス様は強引にクラレシアに戻る事にしました。そんなフォルナックス様は皇宮の兵士に捉えられクラレシアに帰る事が出来なくなってしまったのです。
僕は即座に隠れてメディアーナ様に念話で知らせました。フォルナックス様は念話は使えないし、護衛達は魔力封じの腕輪をされていましたから、僕しか知らせることができる者はいなかったのです。
メディアーナ様はクラレシアの者達に内緒でドメル帝国に直ぐに入国し皇宮まで辿りつきました。きっと周りに話せば止められてしまうと思ったのでしょう。
メディアーナ様はフォルナックス様のことになると周りが見えなくなるほど感情に左右される方でしたから。
僕も焦っていたのでしょう。本来ならメディアーナ様に念話を送るべきではなかったのです。
僕は皇宮の者達に気付かれないようにメディアーナ様をフォルナックス様が幽閉されている地下牢へ念話で誘導しました。
隠蔽の魔法で姿を消していた僕はフォルナックス様が捉えられたときにこっそり後を追っていたのです。
地下牢の前でメディアーナ様と対面した時に僕は愕然としました。メディアーナ様のお腹からメディアーナ様とは違う魔力波を感じたのです。
メディアーナ様はまだその事には気付いていないようでした。
でも、それよりもフォルナックス様を助け出すのが先です。
僕とメディアーナ様はフォルナックス様を何とか地下牢から救い出し逃げようとした時に皇宮の兵士達に囲まれてしまったのです。
その場所にはドメル帝国の皇太子で、フォルナックス様の双子の兄であるフェルカドが立ちふさがっていました。
実はこれはメディアーナ様をおびき出すための罠だったのです。
まんまと僕はフェルカドの罠に嵌ったということです。
『ほう、これはこれは。貴方がクラレシアの夜の真珠と言われている王女殿か? 私の側妃に相応しいほど美しい。フォルナックス、心配するな。お前の妃は私が面倒を見てやる』
『兄上、何を世迷い言を言っている。私がディアを渡すわけがないだろう!!』
フェルカドの言葉を聞いたフォルナックス様は激昂し、声を張り上げました。
『ふん、だからこうするのだよ』
そう言うやいなや、フェルカドの剣がフォルナックス様の胸に突き刺さったのです。
それは一瞬のことで、何が起こったのか把握することさえ直ぐには出来ませんでした。
『いやあああぁあああー!!!!』
メディアーナ様の悲鳴が辺りに響き、僕は咄嗟に転移の魔法陣をメディアーナ様の頭上に展開しました。
『いや、待って、ノア。フォルが……フォルを助けなきゃ』
『メディアーナ様、貴方はお腹の中に御子様を宿しています。フォルナックス様は僕にまかせて御子様の為にとにかくこの場から離れて下さい』
フォルナックス様は胸を一突きされどう足掻いても助けられないのは明白でした。それでも僕はメディアーナ様だけでもこの場から逃がすことに尽力したのです。
僕の魔力では御子様を宿したメディアーナ様を転移させるだけで精一杯だったのです。
クラレシアの騎士達がメディアーナ様を捜して皇宮の近くまで来ているのを感じていましたから、後は彼らに託すことにしたのです。
魔力を使い果たした僕はドメル帝国に捉えられ、地下室に幽閉されると魔力が回復する度に魔力を極限まで吸い取られ続けました。次第に魔力回復が追いつかなくなり使い物にならないと思ったのでしょう。
次第に誰も僕の元には訪れなくなったのです。僕は何とか最後の力を振り絞り、逃げ出しました。
そんな時、エミュウが見つけて僕を連れて逃げてくれたのです。
僕は結局フォルナック様の命を助けることが出来なかった。何とか出来たのは精霊王様にフォルナックス様の命の灯火が間も無く消えるとオルフェ様に念話で知らせることだけだったのです。
もう既に人間界では生きられないフォルナックス様でも、精霊界でなら精霊王オルフェ様の力で生きることができます。
『後はまかせなさい』
オルフェ様はそう言ってフォルナックス様を精霊界に連れて行きました。
メディアーナ様には念話でその事と共に、僕は大丈夫だから先ずは御子様を育てることを優先して欲しいと伝えました。
エミュウに助けられ、ティディアール王国で暮らし始めてからもクラレシアのことは気になっていました。でも、僕は弱くなった魔力のせいでどうせ戻っても僕には何も出来ないと思い戻る事が出来なかったのです。
なんて、それはタダの言い訳にすぎませんね。
本当は、クラレシアの守護者であるのにフォルナックス様を助けられないばかりか結果的にクラレシアの結界を破る魔導具製作に荷担してしまったことに後ろめたさを覚えていたせいでしょう。
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