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始まった日常
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『陽くーん、おはよー』
咲恵が大きな荷物を持って玄関を開ける頃、蒴也は陽の着替えを手伝っていた。
菜々子が選んでくれたタータンチェックのコットンシャツのボタンをかけられず、手が止まってしまったのだ。
いや、ボタンをかけることすら知らなかったのかもしれない。
『朝ご飯、まだでしょ?』
すぐに食べられるようサンドイッチを作ってきてくれたと言う咲恵の荷物の多さに些か不安になる。
昨日の大量の夕食を思い出してしまったのだ。
案の定、何人前あるのかと思うほどのサンドイッチは、やはり咲恵の豪快な人柄が表れているような気がした。
『陽くん、顔洗って朝ご飯にしましょ』
朝起きて顔を洗う。当然のことようだが、陽にはわからない。咲恵に伴われ洗面所へと歩く陽は咲恵と手を繋いではいなかった。
陽が自分には少しだけ気を許してくれている。手を繋ぐことで無意識にそれを伝えてくれている。
そんな風に思ってしまうのは蒴也の小さな自惚れなのだろうか。
そうではないと信じたい蒴也は陽に関して狭量な自分が嫌いではなかった。
3人で囲む食卓は咲恵のお陰で人数よりも随分賑やかなものとなった。
何種類かのサンドイッチの中からレタスとチーズがたっぷりと使われたサンドイッチを取り分けられた陽は無表情、無反応のまま食べ進めている。
『陽くんはエラいわね。ちゃんと野菜も食べられるものね』
少し大袈裟に陽を褒めるのは、少しでも気持ちを伝えたいと言う咲恵の思いを表しているのだろう。
『そうだ。冷蔵庫にゼリーが入っていたわね』
吾妻が何種類か用意したものだ。
『今日はおやつにゼリーを食べてみましょうね』
まだ1切れのサンドイッチを食べ終わらない陽におやつの話をするのは、なんだか滑稽にも見えるのだが、咲恵にも何か考えがあってのことなのだろう。
結局サンドイッチ2切れで口を動かさなくなった陽に代わり、蒴也が残りのサンドイッチを平らげたのだが
『咲恵さん!無理です』
一度の食事量が、昨夜も今朝もキャパシティを越えている。
もう少し控えめな量で、と伝えれば逆に驚かれてしまった。
『えっ?これだけでお腹いっぱいなの?』
食べることを疎かにしがちな蒴也ではあるが、一般的な成人男性と比べても食が細いわけではない。
『ねぇ、もしかして』
昨日の晩ご飯も多かった?と聞かれ正直に答えれば
『生前の夫と佐伯君は2人で完食してた量だから』
あれでも足りないのではと心配したと言うのだ。
医師の仕事はハードだと聞く。それ故かもしれないのだが、蒴也はヤクザであって医師ではない。
『昨夜も4人で漸く完食でした』
白状すれば、咲恵はカラカラと笑いながら
『何事も自分の物差しを押し付けるのはダメよね』
お昼からは少なめに作るわね。と早々に朝食の片付けを始める。
蒴也も成る程と思う。陽に自分の物差しを押し付けたところで何もうまくいかないだろうことは想像できる。
ただ、何をどうすれば陽の心と体を育めるのか具体的には答えの出せない蒴也だった。
咲恵が大きな荷物を持って玄関を開ける頃、蒴也は陽の着替えを手伝っていた。
菜々子が選んでくれたタータンチェックのコットンシャツのボタンをかけられず、手が止まってしまったのだ。
いや、ボタンをかけることすら知らなかったのかもしれない。
『朝ご飯、まだでしょ?』
すぐに食べられるようサンドイッチを作ってきてくれたと言う咲恵の荷物の多さに些か不安になる。
昨日の大量の夕食を思い出してしまったのだ。
案の定、何人前あるのかと思うほどのサンドイッチは、やはり咲恵の豪快な人柄が表れているような気がした。
『陽くん、顔洗って朝ご飯にしましょ』
朝起きて顔を洗う。当然のことようだが、陽にはわからない。咲恵に伴われ洗面所へと歩く陽は咲恵と手を繋いではいなかった。
陽が自分には少しだけ気を許してくれている。手を繋ぐことで無意識にそれを伝えてくれている。
そんな風に思ってしまうのは蒴也の小さな自惚れなのだろうか。
そうではないと信じたい蒴也は陽に関して狭量な自分が嫌いではなかった。
3人で囲む食卓は咲恵のお陰で人数よりも随分賑やかなものとなった。
何種類かのサンドイッチの中からレタスとチーズがたっぷりと使われたサンドイッチを取り分けられた陽は無表情、無反応のまま食べ進めている。
『陽くんはエラいわね。ちゃんと野菜も食べられるものね』
少し大袈裟に陽を褒めるのは、少しでも気持ちを伝えたいと言う咲恵の思いを表しているのだろう。
『そうだ。冷蔵庫にゼリーが入っていたわね』
吾妻が何種類か用意したものだ。
『今日はおやつにゼリーを食べてみましょうね』
まだ1切れのサンドイッチを食べ終わらない陽におやつの話をするのは、なんだか滑稽にも見えるのだが、咲恵にも何か考えがあってのことなのだろう。
結局サンドイッチ2切れで口を動かさなくなった陽に代わり、蒴也が残りのサンドイッチを平らげたのだが
『咲恵さん!無理です』
一度の食事量が、昨夜も今朝もキャパシティを越えている。
もう少し控えめな量で、と伝えれば逆に驚かれてしまった。
『えっ?これだけでお腹いっぱいなの?』
食べることを疎かにしがちな蒴也ではあるが、一般的な成人男性と比べても食が細いわけではない。
『ねぇ、もしかして』
昨日の晩ご飯も多かった?と聞かれ正直に答えれば
『生前の夫と佐伯君は2人で完食してた量だから』
あれでも足りないのではと心配したと言うのだ。
医師の仕事はハードだと聞く。それ故かもしれないのだが、蒴也はヤクザであって医師ではない。
『昨夜も4人で漸く完食でした』
白状すれば、咲恵はカラカラと笑いながら
『何事も自分の物差しを押し付けるのはダメよね』
お昼からは少なめに作るわね。と早々に朝食の片付けを始める。
蒴也も成る程と思う。陽に自分の物差しを押し付けたところで何もうまくいかないだろうことは想像できる。
ただ、何をどうすれば陽の心と体を育めるのか具体的には答えの出せない蒴也だった。
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