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森の奥の屋敷5
しおりを挟む招待状を作成すると、十二人いた仲間のうち辺境にいる二人を除く、十人が揃うことになった。女性は既に結婚している者ばかりで、子どもと夫を連れてやってくるようだ。男性陣は日頃からエドワードに仕えている者が多い。
久しぶりに楽器に触れる者が多いため、エドワードが宮殿にいる音楽隊を連れてくることになった。音の必要なところを補強してくれるから心強い。
セシリア妃殿下はユリアナにドレスを贈りたいと申し出てくれた。そのために仕立屋が派遣され、身体のラインを計測されることになった。どんなドレスになるのかは当日のお楽しみらしい。
ついでに、ということでレオナルドの礼服も仕立ててくれるという。普段はあまり気にしないけれど、彼はだんだんと簡易な服装になっている気がする。今では騎士服も着ていない。
レオナルドは無造作に髪を伸ばし始め、後ろで小さく結んでいる。綿でできた服を重ね、厚手の生地のズボンを着て長靴を履く。以前のパリッとした服装とは違い、どんどん使用人と変わらない服装になっていくようだ。
「ねぇ、ついでにレームの服も仕立てましょうよ。最近、簡素な服しか着ていないでしょ」
「いや、俺はこのくつろいだ服装が気に入っているから別にいいよ。舞踏会に行くわけでもないし、式典もない生活がこんなにも楽だとは思っていなかった」
「もう、そんなこと言って」
それでも彼は服装にお金をかけないようにしているのだろう、だんだんと上質な手触りの服ではなくなっていくことが、気になってしまう。
「仕立屋の方が来た時に頼んでみようかしら」
生まれた時から王子として生きて来た彼のことだから、やっぱり肌に馴染んだものを着て欲しい。ユリアナはどんな服を頼もうかしらと考えると、楽しみになってくる。彼に何かをプレゼントできることが、嬉しくて仕方がなかった。
その日、王都から評判の仕立屋が来るとあって、ユリアナは心を浮き立たせていた。自分のドレスもそうだけれど、レオナルドの服を注文したい。そわそわとして待っていると、「お嬢さま、到着されました」と執事が呼びに来る。
「わかったわ、今行きます」
珍しくレオナルドは先に階下に行き、仕立屋が服を広げている部屋で指示を出していた。ユリアナの足のことを考えて、服を広げすぎないようにしていたようだ。
「あぁ、ユリアナ。こちらが仕立をされる方だ。今、部屋を案内したところだ」
「はじめまして、ユリアナ様。モンドールと申します。お見知りおきを」
「はじめまして、ユリアナ・アーメントです。今日はよろしくお願いします」
ユリアナは淑女の礼もできないので、首を傾げて少しだけスカートを持ち上げる。すると仕立屋はユリアナに助手となる女性を紹介した。
「初めまして、フェリシアと申します。父の助手を務めておりますので、よろしくお願いします」
「娘をこの通り、後継ぎとして修業させているところです」
挨拶をされてユリアナは驚いてしまった。王都では職業婦人も増えていると聞いていたが、ユリアナはこれまであまり多くの人との接点がなかった。またフェリシアもユリアナを見ると、嬉しそうな声を上げた。
「まぁ、なんて可憐で素敵な方なのでしょう、王太子妃殿下にお願いされてきましたが、デザインするのがとっても楽しみです。レオナルド様も立派な体格をされていらっしゃいますし、腕がなりますわ。では、ユリアナ様、まずは身体のラインを測らせて頂きます」
「え、あなたが測るの?」
「はい、私どもはお客様の体形に合わせて服をデザインします。ですから、直接測らせて頂けると助かりますわ」
とはいっても、これまでは簡易なドレスしか着ていないため、本格的なドレスを仕立てるのは久しぶりだ。ユリアナは侍女に手を引かれながら別室に行くと、フェリシアもその後をついてくる。
身体の線を見せるのは、どうにも恥ずかしい。けれど彼女は手際よくユリアナの身体を測っていった。最後はコルセットをつけた状態のウエストラインまで測ることになり、久々に締め付けられたユリアナは息を切らしてしまう。
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