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二人の結婚式
しおりを挟むで、今に至る。帝都で、今日は私たちの結婚式だ。
「まさか、婚約式の1年後に、結婚式するとは思わなかった・・・。」
純白のウェディングドレスを着た私は、控室でそっと、つぶやいた。部屋には、お手伝いでエリーゼが来てくれていた。彼女も、もうすぐ式を挙げる予定だ。エリーゼは、薄い青色のドレスを着ていた。
「ほんと、アイリス様、今日は一段と美しいですわ。」
エリーゼの王室ファン具合は、変わらなかった。どうやら半年前に行われた、ソルディーエルとララクライン様の結婚式にも、参列したらしい。
「あの日のソルディーエルも、輝いておりました。でも、今日のアイリス様も、素晴らしいですわ。」
ソル兄さまも、今日はララクライン様と一緒に参列してくれている。会うのは1年ぶりだから、懐かしい。
そうしているうちに、式の時間となった私は、聖堂に向かった。父さまにエスコートされて、真っ白な道の上を、歩いていく。
祭壇の前で、父さまから、レオンにエスコートが代わる。レオンは父さまに軽く一礼した。父さまも、少し目を赤くしていた。
ここで、私たちはお互いに、自分の半身と思い、愛し合うことを誓った。レオンは誓いのキスを、私の頬にした。どうやら、恥ずかしかったらしい。お礼に、私も彼の頬にチュっとしたら、参列していた人たちから拍手と歓声が沸き上がった。
帝国の皇子の結婚式だけど、パレードも、披露宴もしない、小さな結婚式。皇帝はちょっとだけ、参列されて、そしてすぐにいなくなった。レオンは気にしていなかったけど、子どもが23人もいると、こうなるのかなぁ。夫の両親なのに、まだまともに会話したことがなかった。
◇◇◇◇◇
式も無事に終わり、参列者と一緒にガーデンパーティーの会場に移動した。
「ソル兄さま。ララクライン様、今日は参列ありがとうございました。」
レオンは私の腰に腕を回して、離してくれない。
「アイリス、今日は、結婚おめでとう。いい天気で、本当に良かったね。」
「ええ、ララクライン様も、体調はいかがですか?大変な時期に、来てくださりありがとうございました。」
そう、二人は半年前に結婚して、既にララクライン様は妊娠されていた。結婚式の招待状を送ったところ、参加はお腹の子と合わせて3人です、と、可愛い字で近況を教えてくれていた。
「ソルディーエル、お前、フライングしたんじゃないのか?」
レオンの一言で、その場が凍る。
「ははは。その質問は、君にも返すよ。あ、答えなくていいからね。」
私もララクライン様も、真っ赤になってしまう。フライングしそうになったから、結婚が早まったとは言えない。
「ララも、お腹の子も、順調だよ。私はリード家の領地管理など、学ぶことが多くてね。忙しくしている。」
ソル兄さまは、結婚を機に騎士団を(寿)退職されて、今はリード公爵領を回ったり、帝都で社交界に出たりと、公爵を継ぐ準備をしているようだ。帝都の社交界では、その美貌でかなり話題になっているらしい。
二人はお互いを、ララ、ソルディ、と愛称で呼び合っていた。どうやら、仲良くしているみたいだ。
「そういえば、サボ師匠の噂を聞いたよ。帝国を出て、西の国の内戦を終結させたようだ。」
ソル兄さまは、懐かしい師匠の話を教えてくれた。あのスイレン宮が燃えてから1年。直接別れの言葉も交わさないままになっている。が、いつかまた、フラッと戻ってきて、会えるような気がする。
「西の国か。あそこは女傑が多いからな。意外とアグレッシブな王女様から、結婚を迫られていたりしてな!」
私たちは笑っていたが、その時サボは、本当に笑えない状況に陥っていたようだ。でも、それを私たちが知るのは、かなり先のことだった。
「そういえば、サボからプレゼントが届いていたよ。」
と、父さまが箱を持ってきた。結婚式に招待したかったが、居場所が全くわからなかった。だが、サボ師匠は私の結婚を、祝ってくれる。嬉しかった。
「なんだろう、早速開けてみようぜ。」
レオンが興味を持ったが、なんとな~く、嫌な予感がする。サボ師匠は、いい人ではあるが、あのエロ親父・・・いや、エロ魔王でもある。結婚のプレゼントが、まともなものとも思えなかった。
私は箱をそっと、だれにも見えないように開けて、すぐに閉じた。マズイ。これは今レオンには見せてはいけない。
「で、何だった?」
レオンの顔がにやついている。コイツ、わかっているな・・・
「うん、後でね。」
レオンの耳元で、小さな声で教えてあげる。中身はピンクのナイトウェアだよって。レオンは何か、いろいろと妄想してしまったようで、顔を真っ赤にしていた。
その日、私たちは幸せな時を過ごし、私の妖力で「弾けるような、幸せな気持ちになる」ようになったスパークリングワインを、大勢に振舞った。後日、そのワインを飲んだ人たちの水虫が治ったようだった。
妖力、恐るべし。
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