昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件

マサタカ

文字の大きさ
5 / 24
一章

しおりを挟む

 オレンジ色の空がどこまでも続いている。仄かに青っぽさが混じった暗さとは対極にあって、一日の終わりを実感させる。街はぽつぽつと街灯がついて夜を迎える準備に入っている。暑さが少しましになったとはいえ、まだじっとりとそこかしこに熱が残っている。

 いつも以上に疲弊している俺は、鞄の重さにすら負けてしまいそうで、傍目からすれば足どりが悪く熱中症に罹っていると誤解を受けるかもしれない。肉体的にではなく、精神的なダメージはときに脳にすら影響を与えるのだと初めて知った。

 このあと、バイトに行かなければいけない。家に一回寄るよりもどこかコンビニで軽食を買ってすませたほうが早い。わかってはいても通り過ぎる店に入るのすら億劫なあたり、大分限界が近いのかもしれない。駅近くになってサラリーマンたちの帰宅ラッシュに出くわした瞬間、やばいとおもって適当な店を探す。

 疲れ切った人々の表情と負のオーラ。家庭か自分自身のためか。労働している大人が纏っている独特な空気に、まさか俺も今ああなっているんじゃないかって危機感が芽生えた。冷たすぎるコンビニの空調は今の体にはちょうどいい。疲労が一瞬ましになったとすら錯覚するほどでレジに並んだときにはポジティブにすらなっている。

 れみとのおもわぬ再会。その後のやりとり。あんなことはもう二度とないだろう。実際、れみたちはバスに乗って帰っていったし。嘘をついちゃったことと、昔俺がしたことは当然のことだって受け入れることができた。研究室での執拗な態度・・・・・・粗探し、揚げ足取り、悪意、etc・・・・・・。

 あれ? なんだろう。泣きそうになってきた。

 けど、今後あの子と俺の人生はもう交わることはない。後悔していることはたくさんあるけど、お互いのためにも絶対そのほうが・・・・・・・・・。

「あはははは~。ごめんってれみ~」
「もう、まりあは。謝るなら気をつけてください。ただでさえあなたは――」

 コンビニを出た瞬間、出入り口ですっ転びかけて大股になって辛うじて免れる。そのせいで逆に注目を浴びてしまった。目の前にいる少女たちもその類いであることは火を見るより明らかだった。ぱちくりと大きく開いた目が、共学の色に染まっている。そしてどうしてここにいるんだって憤怒に塗り替えられるのに時間はいらなかった。

「あれ? パイセンじゃないスか。奇遇スね」

 幻覚でもなんでもない。バスに乗って帰ったはずのれみとまりあちゃん。約一時間ぶりの再会だけど、嘘だろ・・・・・・・どうしてここにいるんだ・・・・・・・・・って絶望とまた会えて嬉しさが若干入り交じってて。

「二人とも、ここでどうしたの?」
「あ、あははは~。ちょっとすいませんっス」

 もじもじしたまりあちゃんはお腹を抑えて一目散にトイレへ。それをぼけ~っと眺めたときに、なんとなく察することができた。自然と取り残された俺とれみは微動だにしないで対峙する。これでもかってくらいこわい顔で見上げてくる。ちょっとこわいくらいだけど、後ろめたさがある俺は顔を背けてしまう。

 コンビニに入ろうとするお客に気づいて、れみは店内へ。避ける余裕がなくて、圧される形で一歩一歩下がって、俺もまた戻ってしまう。れみはまりあちゃんが出てくるまで待っているつもりなのか、頻りに店内を動き回っている。さっさと出ればいいのに心配になって、残ってしまう。雑誌を読むフリをして、それとなくれみを見やる。いくつか商品を手にしたあと、れみは俺と同じ雑誌コーナー、というか俺の隣へ。生きた心地がしねぇ。

「どうしてここにいるんですか、兄さん」

 え。信じられなくて二度見してしまう。だって聞き間違いじゃなければ今俺のこと?

「なんですか、鳩が豆鉄砲くらった顔をして。兄さん?」

 兄さん、にいさん、ニイサン。脳内反芻がとまらない。小さいときと呼び方は違うけど、兄であるという認識が嬉しくて、顔がにやけてしまいそう。表情筋を強ばらせる自信はなくて腕で隠す。そのまま沈黙。

「なんですか、まりあだけじゃなくて兄さんまで体調悪いんですか? なにしてるんですか兄さんは」
「いや、ちょ」
「はい? なんですか? ちゃんと大きな声で喋ってくれないと聞こえませんよ兄さん」

 いや、やめて。その呼び方は効果抜群すぎる。死んじゃいそう。

「れみ、だよな」

 落ち着きを取り戻して少し。何を話せばいいか逡巡して。後ろめたさが勝っているメンタルで咄嗟に出たけど、はぁ? と首を傾げられた。

「当たり前です」
「うん。だよな。そうだよな。大きくなったな」

 改めて、成長を実感する。きりっとした顔つきは大人っぽくて、幼い頃の名残があるけど記憶のれみと結びつかないほど。時間が経ったんだなぁってしみじみ。

「最低です」
「は!? なんで!?」
「義理とはいえ、元とはいえ・・・・・・・血の繋がりがないとはいえ、いもうとにセクハラするなんてどういうつもりですか」
「なんでだよ!」
「だって人の体を見ながら大きくなったなぁなんて。どこのことを言っているんですか」
「違うわ!」

 隠しているつもりか。片手をバッ! と胸の前で。視覚から逸らしたいのか身を捩り、もう片手を太ももに当てている。僅かに半歩下がったあたり、冗談じゃなくて本気で勘違いしているのか。

「まりあともデレデレしながら話してましたし。大学でも先輩と近すぎる距離で一緒でしたし。いつからそんな節操ない男性になってしまったんですか?」
「穿った見方やめてくれない? 健じゃないんだから」
「兄さんも一人の男となってしまったんですね。この数年、さぞ乱れた時間を過ごしたんでしょう。それとも大学に入ってそうなってしまったんですか? 私は悲しいです」
「その台詞そのままバットで打ち返していい?」
「兄さんは変わってしまいました」
「俺からすればお前のほうが変わりすぎてるよ・・・・・・・・・」
「この変態」
「だからなんでだよ!」
「変わりすぎって、幼い義妹としてじゃなくって一人の異性に変わったってことでしょう。性的欲求を抱く存在へと変わったってことでしょう」
「お前はなんでもかんでもそっち系統に勘違いしないと気がすまないの?」

 いつの間にか罪悪感も気まずさも消えているとはいえ、気が抜けない状況。俺の言葉一つ一つを誤った解釈をするとんでもない女の子になっている妹に対して、別の意味で接し方がぎこちなくなる。

「兄さん、もしかして毎日そんな食事をしているんですか?」

 手に持っている菓子パンと飲み物を目敏く発見したれみは、責めるように次いで俺の顔に移った。

「そんな食事を毎日していては栄養が偏りますよ。勉強も仕事も、体が資本です。バランスもちゃんと考えた献立をしないと。将来的には重大な病気にも繋がって、普段の生活態度にも影響して――」

 なんだろう。年下の女の子に説教されるのってすごい悔しい。情けない。というかもう義妹じゃなくておかん?

「昔はこんなんじゃなかったのに・・・・・・・・・」
「は?」

 俺がはまってたアニメのロボット。あれのストラップをほしがって泣きじゃくってた。仕方ないから譲ったら喜んでいた。あとスポーツとか勉強とかお手伝いとか。頑張ってやろうとするけどできなくて。俺が手伝おう教えようとすると意地になって怒ってきたり。頼ってくれて、後ろにいつもついてきて真似して。かわいかった。けど今じゃあこんな風になってしまって。つい本音が出てしまった。

「こんなんってなんですか? 私は規律正しくあるだけです。逆に兄さんのほうがいけないのでは? 第一、誰のせいで・・・・・・・・・」
「い、いや。立派な女の子になったなって。もう大人だなって意味だぜうん。言葉が間違ってたうん」
「おだてて話を逸らさないでください。ああ、なるほど。そういうことですか」
「え? なに?」
「だからナンパしてきたんですね。だから偽名を使ったんですね」
「発想の突飛さがもう理解できねぇよ!」
「あの長井って人と毎日誰彼かまわずナンパしまくって爛れた生活をしているのでしょう。いもうとだって気づいたけど成長した私が魅力的すぎて、いつもの癖が出たってことでしょう? そのまま大学の使われていない講堂に連れ込むつもりだったのでしょう? こうやって私を待ち伏せしていたのもどこかの路地裏に連れ込んで・・・・・・・・・」
「お前の中の俺はどれだけ餓えているんだよ!」
「男は皆狼だと父さんが言っていました」
「あんのくそやろおおお!!」
「どうせあの年上の先輩とも良い仲なのでしょう? 体だけで恋愛感情がない都合のいい関係なんでしょう?! 常にチョメチョメしたいんでしょう? いやらしい!」
「いやらしいのはお前の頭だああ!! というかチョメチョメって微妙にセンスが古いわ!」
「店内で迷惑ですよ兄さん。声を抑えてください」
「原因わかってる!? わざと?!」

 そんなこんなをしていたら、申し訳なさそうなまりあちゃんが戻ってきた。駆け寄ってさっき俺にしたのと同じでお説教をはじめる。まりあちゃんは慣れているのか笑いながら受け流している。

 しきりに髪を撫でるれみの姿は、なんだか不思議なかんじがする。表情と行為が一致していないがゆえの違和感。だけど、なにに対して違和感を抱いているのか。気づけていないっていう不思議な心境。どこか既視感も加わってきて違和感も強くなる。

「それじゃあにい、ランドルフさん。私たちはこれで」

 コンビニを出た後、そう言い捨てて冷たく去っていく。まりあちゃんは手を小さく振って遅れて追いかける。短い時間の間にどっぷりと日が暮れてしまい、街には朧気な光しかない。どっと疲れながら見送って背中を向けそうになって、自問自答をする。このまま終わりにしていいのか。なにかしなければいけないんじゃないか。謝るべきじゃないのか。許されるのか。

 けど、れみは望んでいるのか。怒っているんじゃないか。人混みに紛れていって、そのまま一生会えなくなると錯覚に陥る。二人は遠目でだけど、立ち止まっている。自然と昔の記憶をおもいだしてしまう。買い物に行ったとき、はぐれて迷子になったれみが浮かぶ。迷子センターに行ったときの所在なさげで、さみしそうで、俺を見つけた瞬間泣きだして抱きつきにきた、幼いときの記憶。

 少し早足で追いかける。言葉も心も決まっていない。それでもいてもたってもいられない。なにがあったのかわからないけど、声をかけた。振り向いたときの顔。迷子になったときのれみの顔と一瞬重なった。

「あ、パイセン。駅のバス停留所ってわかります? 私たちのバスそこで待ってくれてるんスよ」
 
 場所がわからなかったらしい。よほど焦っていたのか。残念ながらこことは反対方向だと説明して案内する。駅特有の路線バス用の広めな停留所には一台しかない。女の子的緊急事態であると認められる必要はあったのかどうか。それは今どうでもいい。

「ありがとうございました。おにい、ランドルフさん」
「お、おう」

 まりあちゃんの手前だからか、執拗にランドルフ呼びをする。このまま去ってはいけない。終わらせてはいけない。こちらが帰る意図がないと察しているからか動こうとしない。まりあちゃんは既にバスに乗ってしまったし、ちらちらとバスのほうを見てしきりに髪の毛をさする仕草は、早くしろと急かしているみたいで申し訳ない。けど、また既視感を覚えてしまう。所在なさげな視線を動かしたとき、れみが持っているビニール袋が気になった。コンビニにいたとき買った、あれはたしか薬だったか?

『おにいちゃん、だいじょうぶですか? れみになにかできますか?』

 そうえいば昔風邪ひいたときも、ああやってたっけ。俺を心配して。それだけじゃなくて俺が母親と喧嘩した後も。それだけじゃない。随所に癖をする場面があった。あれは心配しているときの癖なのかもしれない。なんとなくおもったのはいつの頃か。

「あ・・・・・・・・・」

 不意に合点がいって微笑んでしまう。安堵と嬉しさがこみあげてきて、小さい笑い声を我慢できない。不意に体調を崩した友人を叱りながらも心配していたんだろうれみ。それは今でもそうなんだ。バスに乗っているまりあちゃんを気にかけている。幼いときからの癖と、成長したれみの顔のギャップに違和感があったんだ。

「ちょっと?」
「いやぁ、お前は、変わってないな」
「は?」

 一頻り笑って落ち着いたからか、心が落ち着いている。自分が何を伝えるべきかはっきりと定まった。

「なぁ、れみ」
「どういう意味ですか?」

 予想だにしていなかったれみの反応。怒気を含んだ声音。続いてあからさまな憤怒の顔。迫力に呑まれたこともあってえ、と紡ぐはずだった言葉を失ってしまう。

「ふざけないでください!」

 パァン! と勢いよく頬を張り飛ばされる。ヒリヒリとした痛みが遅れてやってくる。え、え、と頭に疑問符が浮かんでいる間にれみは走ってバスに乗ってしまった。そのままバスは一息つく間に豆粒ほどの大きさになって夜の街並みへ。

「なんでだよ」

 決して痛いわけじゃない頬を押さえながら、バスが消えた方向をぽかんと眺めながら独りごちる。バイト先に行く決心をして移動しながら頭を捻る。なんでれみは怒ったのか。俺の馴れ馴れしい態度がいい加減嫌になったのか。結局俺を許していないのか。自己嫌悪で満たされていく。

 謝ることができなかった。そして今後もチャンスは永遠にこない。そんな罪悪感も相まって、生きているのが申し訳なくなってくる。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)

チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。 主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。 ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。 しかし、しばらくして宗利は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。 その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。 「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」 これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

幼馴染みのメッセージに打ち間違い返信したらとんでもないことに

家紋武範
恋愛
 となりに住む、幼馴染みの夕夏のことが好きだが、その思いを伝えられずにいた。  ある日、夕夏のメッセージに返信しようとしたら、間違ってとんでもない言葉を送ってしまったのだった。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。 なんと、彼女は学園のマドンナだった……! こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。 彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。 そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。 そして助けられた少女もまた……。 二人の青春、そして成長物語をご覧ください。 ※中盤から甘々にご注意を。 ※性描写ありは保険です。 他サイトにも掲載しております。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない

みずがめ
恋愛
 宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。  葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。  なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。  その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。  そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。  幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。  ……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

処理中です...