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8、敗北
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男に何か注射されている間は、底知れない気持ち悪さと、つかみどころのない恐怖と、かすかにヒリヒリとした痛みがあるだけだった。一体何を打たれたのか分からないが、この男がウジ虫並の外道だということは間違いない。自分の体に何が起きるのか、想像もつかない。
「おまえにはもう一本くれてやる」
男が二本目のアンプルを取り出して、注射器で吸い、同じ腕に注射した。男が触れている箇所が気持ち悪い。肌が腐っていくかと思うくらいに。
エリシアは反撃の機会をうかがっていた。猿ぐつわさえ外れれば、魔法を詠唱して逆転できる。対抗呪文は予想外だったが、この男は一つミスを犯している。はがれた対抗呪文の張り直しをしていないことだ。先ほどと同じ呪文であれば、対抗呪文を張り直さない限り二度目は通じるということに気づいていないようだ。
そのためには片腕が自由になれば充分だ。自分をベッドに縛り付けている縄を何とかして解き、この無礼な侵入者二人を捕まえる――あるいは相応しい罰を与えるつもりでいた。
だが、謎の注射の効果はすでに出始めていた。どこか体の奥にぼうっとした熱が生まれていたのだ。燃え上がる炎のような勢いはないが、じわじわと体の表層へ全体へと伝わっていく。風邪を引いたときのような気だるさと、火照り。汗ばんだ肌にネグリジェがくっつく感触。熱い。体が熱い。何が起こっているのか?
エリシアは身をよじろうとしたが、ベッドに磔にされたような状態ではほとんど動けなかった。
嫌悪すべき男がそばにいて、いやらしい目つきで体を眺めている。絶対にこの男には罰を与えてやる、とエリシアは心に誓い、男をにらんだ。その口元に小さく笑みが浮かんだ。
「分かるだろう? 体の変化が」
認めたくはないが、体の熱と疼きは無視できないくらいになっている。エリシアはもう一度体をよじろうとした。それを見て男が、ニヤニヤするのが不快だった。
「人間用だがエルフにも効果があることは実証済みだ。これから楽しくなるぞ」
エリシアは今の言葉で、このひと月ほどに起きた若い女の不可解な失踪事件と、この男が何か関係していると直感した。ならばこの男は殺すわけにはいかない。生きたまま捕まえて、全て吐かせなければならない。その上で、仲間のために鉄槌を下さねばならない。一族の王女として。
エリシアは右腕とベッドの隅の柱とを結ぶ縄の結び目が少しだけ緩くなっていることに気づいていた。この男は恐らく気づいてはいない。勝利を確信しているがゆえの、おごり。二つ目のミス。何度かうまく引っ張ったり動かしたりすることで、ほどけやすくできるはずだ。男という生き物は女の前ではすべからくマヌケなようだ。
と……。いきなり体が跳ねた。その一瞬だけ思考が途切れて、自分がどこにいるのかも分からなかった。一体何が起きたのか。
「わけが分からないって顔してるな?」
男が見下ろしている。
もう一度、体が跳ねた。意思とは無関係に自分の体が動いたのだ。今度は何をされたか分かった。男が自分の素肌に直接触れたのだ。腹の辺りにただ触れられただけなのに、体がこんなに敏感に反応するなんて、エリシアにとっては未知だった。
(なんなの、これ。この男、私に何を打ったの?)
体の熱と疼きが一層増している。体がおかしい。自分の体なのに男の指の動きに答えてしまう。男が内ももの辺りに触れた。それだけでエリシアは体を波打たせた。男は面白がって下腹部をなで、揉んだ。そのたびにエリシアの体の中で耐え難い熱の暴走が起こり、思考は中断され、びくんびくんと体を浮き上がらせた。男の手は執拗に胸の周辺や足の付け根あたりをまさぐり揉んだが、乳首や秘所には決して触れない。そうされているうちに散らばっていた熱がまだ触られていない一番敏感な場所に集まっていくような感じがした。事実、エリシアはだんだんと男の手の気持ち悪さと刺激とには慣れていったが、男が避け続けている特別な部分だけが強烈に焼けるようになってきた。
(こんな男に触られたって、気色悪いだけなのに……! 体が……言うことをきかない……)
エリシアは集合していく疼きから必死に意識をそらそうとするが、うまくいかない。今や二つの乳首と秘所とがジンジンしてたまらなくて、身をよじらせることで、下着の布がわずかにこすれるときの何とも言えない感覚によって、その疼きをごまかしていた。
(やめろ……おかしくなる……。もうやめろ……この外道が……)
「んんっ! ん!」
エリシアは男を罵倒したが、言葉にはならない。
「なんだ? どうした?」
酷薄な笑みを浮かべて、男が尋ねる。と、男の顔が視界から消えた。次の瞬間、生暖かくてざらっとしたものが肌を撫でた。
「んあっ!!」
今まで以上に不快な感触に、エリシアは今までで一番鋭く体を跳ねさせてしまう。
(今の声、私の……?)
「信じられないって顔してるな?」
男の顔が股の間からこちらを見ていた。それで理解した。
舌だ。肌をなめ、吸い付く。より生々しい感触がエリシアの理性をさらに搔き乱す。男はネグリジェを破り捨てた。さらに胸を覆っていた布も剥ぎ取った。豊かなお椀の天辺で桃色の乳首がぴんと天井を指している。男はわざと水音を立てながら、丘の間を通って鎖骨のあたりまで来た。頭を押さえつけて首筋をなめまわす。ぞくぞくする感覚が体の内外を這い回り、気持ち悪さと歓喜とがごちゃ混ぜに襲ってくる。距離が近づいたせいで水音がよりはっきりとリアルに耳に届く。耳を直接なめられたときには、ぞっとして全身が鳥肌立つと同時に、脳みそに手を突っ込んで掻き混ぜられているのではないかと思った。男の攻めから逃げようと身をよじらせても無駄だった。だが分かっていても体はヘビのようにうねり、波打ち、絶え間ない快と不快とか脳を焼いた。痙攣が止まらない。
(頭が……! おかしくなる……!)
エリシアは目を見開いたまま、声にならない声でうなり続けた。男が体から離れても、エリシアの太ももはぴくぴくと小刻みに痙攣を繰り返し、頬には涙が伝っていた。
男が、エリシアの体を覆う最後の布――秘所を覆う薄い一枚に手をかけた。その濡れて貼り付いた布が秘所から離れる瞬間にさえ、エリシアはびくんと反応してしまった。
「見ろ」
男が見せたそれは、ひどく濡れてべたべたになっていた。エリシアは直視し続けるのがあまりに屈辱的で、目を背けた。体はとっくにおかしくなっている。他人に見せたことも、ましてや触らせたこともない大事な部分が、今やどうなっているのかは直接見れなくても分かっている。自分で触ったことは数えるほどしかないが、こんなに熱いものがあふれたことなんてなかった。
男は今や何の役にも立たなくなった薄布をわざとエリシアの顔の横に置き、続いて股ぐらに顔を近づけて、エリシアが最も見られたくない部分を左右に押し開き、凝視した。
「おい、ひくひくしているぞ。このヘンタイめ」
これまで味わったことのない屈辱。だが今は耐えるしかない。
(……殺す。この男、絶対に殺してやる!)
「ノーラ、来い」男が呼ぶと、ダークエルフの少女が寄ってきた。「こいつのここがどうなっているか、見えるようにしてやれ」
「ふい」と少女は言い、詠唱を始めた。空間変化の初歩的な魔法だと、エリシアにはすぐに分かった。ただ、自分ならほんの一息、一秒かからずに詠唱できるそれを、この少女は時間をかけて丁寧に詠み上げている。こんな馬鹿正直で間抜けな詠唱をするエルフはいない。
遅すぎる詠唱が完成し、エリシアの顔の上の空間がゆらゆらと揺らいだ。揺らぎがおさまると、空間に大きく広げた両脚と股が映し出されていた。
「よく見ろよ。おまえの下品な穴がどうなっているかを」
それは紛れもなく自分の下半身だった。自分では絶対に見ることのできないアングルで、くっきりと蜜穴の入り口が映っている。しかもその穴は湯気が立ち上ってきそうなほど火照っていて、小刻みにぴくぴくと動き、透明な液体をしたたらせているではないか。
「エルフの姫ってのはとんでもないヘンタイだな」
(違う! これは男が使った薬のせいだ……)
「ノーラ、姫様を少しだけ気持ちよくしてやれ。だけどいいところだけは絶対に触るなよ」
「ふい。わたし、きょうりょく」
ダークエルフの少女が腕を伸ばしてきた。乳房をマッサージするように揉み始めた。先ほどの男の手とは打って変わって、少女らしい優しい手のひらだ。その優しさが体に微弱な電撃を起こすようで、妙に物足りないような切なさを抱かせる。二つの丘の上に直立した乳首は痛いぐらいに勃起している。
「そのまま続けていろ」
男はそう指示して、割れ目にふぅっと息を吹きかけた。またしてもエリシアはびくんと体を脈打たせた。
「綺麗な色してやがる。しかもノーラに揉まれてさらに感じてるな?」
蜜穴がカッポリと口を開き、どろりと愛蜜が垂れていく。
(やめろ……! 見るな)
「こっちはどうだ?」
男の指は蜜穴の少し上に移動した。男が指でひだを開くと、充血してぷっくらと膨らんだ肉豆が顔を出した。外気にさらされることで、今まで以上に感覚が鋭敏になったのか、疼きとヒリヒリが一層強まった。
「こんなに腫れてたら、触ってほしくてたまらないだろう? なあ?」
男の問いかけを無視する。男の狙いは分かっている。懇願させることだ。絶対に思い通りになどしてやるものか。
「少し触ってやる」
男は小さな刷毛(はけ)のようなものを取り出した。精密な機械の掃除にでも使いそうなものだ。
(まさか……!? やめろっ!)
エリシアは唸ったが、それで男がやめるはずもなかった。その刷毛の毛先で、腫れ上がった肉豆を撫でたのだった。
「んふぅううううっ!?」
エリシアの腰が浮き上がった。そよ風が撫でていったかのような優しすぎる愛撫。男が腹の上に跨って、エリシアの動きを封じる。刷毛を使って立て続けに肉豆を撫で上げる。
「んんんんっ!? んぅううう!? んぅううううううっ!?」
エリシアは激しく暴れたが何の抵抗にもなっていない。胸と一番敏感なところを同時に攻め立てられて、頭が真っ白になりそうなのに、ほんのひと押しが足りなくて、完全な白にまで上り詰めることができない。正気と狂気の境界で踊らされ、いっそ意識が飛んでしまえば楽だと思った。
どれほどの時間、それが続いたのか、エリシアには分からなかった。まともに意識を取り戻したとき、目には涙があふれて、ベッドのシーツが濡れていた。視界には自分の右腕と、結ばれた縄と、それが繋がっているベッドの柱があって、その結び目がほつれていた。男と少女が自分の足のほうにいて、痙攣の止まない下半身を面白がって眺めているのが気配で分かった。
猿ぐつわを外して魔法さえ詠唱できれば、勝負は一瞬で着く。それに、これ以上体を弄ばれたら本当に気が狂ってしまう。エリシアはわずかに頭を動かして、敵の様子を盗み見た。男の自信と余裕の笑み……。
(男なんてバカばかり。その油断が命取りなのよ……!)
エリシアは渾身の力で右手を引いた。案の定、ベッドに結ばれていた縄がするりと解けた。男の驚いた顔。エリシアはそれを見て勝利を確信した。素早く猿ぐつわと頬の間に指を差し込んで空間を作り、風の神秘を操る必殺の魔法を唱えた。男は対抗呪文を張り直していないはずだ。
暴風が男たちを吹き飛ばして壁に叩きつける、はずだったのに。……何も起こらない。空気は動かない。そよ風すら吹かない。部屋は静かなままだった。
気を失っている間に張り直したか!? ならばもう一度と、詠唱した。……だが何も起こらない。なぜ? 手当たり次第に他の魔法も詠唱するが、何一つとして発動しない。
(魔法が、発動しない……? なぜだ!?)
「どうした? 得意の魔法は使わないのか?」
男は小馬鹿にしたように笑っている。エリシアはこの男がさらに何か仕組んでいたのだと悟った。
「いい顔だ。魔法が使えないのが相当ショックだと見える」
「何をした」
「おまえに打った薬には、魔術神経を麻痺させる効能もあるってだけだ」男が腕をつかんでのしかかるように顔を近づけてきた。鼻と鼻が触れ合いそうな距離で、地獄の底から響くような囁き。「無駄だぞ。泣いて叫んで許しを乞いてもな」
「卑怯者」
男がニヤリと唇を歪めた。エリシアはまだ毅然とした声と態度を保ってはいたが、背筋を氷の手が撫でられたかのように感じ、体が震えるのを止められなかった。体術では男に圧倒的な分がある。魔法なしでは、自力で脱出するのは不可能だ……。
「おまえにはもう一本くれてやる」
男が二本目のアンプルを取り出して、注射器で吸い、同じ腕に注射した。男が触れている箇所が気持ち悪い。肌が腐っていくかと思うくらいに。
エリシアは反撃の機会をうかがっていた。猿ぐつわさえ外れれば、魔法を詠唱して逆転できる。対抗呪文は予想外だったが、この男は一つミスを犯している。はがれた対抗呪文の張り直しをしていないことだ。先ほどと同じ呪文であれば、対抗呪文を張り直さない限り二度目は通じるということに気づいていないようだ。
そのためには片腕が自由になれば充分だ。自分をベッドに縛り付けている縄を何とかして解き、この無礼な侵入者二人を捕まえる――あるいは相応しい罰を与えるつもりでいた。
だが、謎の注射の効果はすでに出始めていた。どこか体の奥にぼうっとした熱が生まれていたのだ。燃え上がる炎のような勢いはないが、じわじわと体の表層へ全体へと伝わっていく。風邪を引いたときのような気だるさと、火照り。汗ばんだ肌にネグリジェがくっつく感触。熱い。体が熱い。何が起こっているのか?
エリシアは身をよじろうとしたが、ベッドに磔にされたような状態ではほとんど動けなかった。
嫌悪すべき男がそばにいて、いやらしい目つきで体を眺めている。絶対にこの男には罰を与えてやる、とエリシアは心に誓い、男をにらんだ。その口元に小さく笑みが浮かんだ。
「分かるだろう? 体の変化が」
認めたくはないが、体の熱と疼きは無視できないくらいになっている。エリシアはもう一度体をよじろうとした。それを見て男が、ニヤニヤするのが不快だった。
「人間用だがエルフにも効果があることは実証済みだ。これから楽しくなるぞ」
エリシアは今の言葉で、このひと月ほどに起きた若い女の不可解な失踪事件と、この男が何か関係していると直感した。ならばこの男は殺すわけにはいかない。生きたまま捕まえて、全て吐かせなければならない。その上で、仲間のために鉄槌を下さねばならない。一族の王女として。
エリシアは右腕とベッドの隅の柱とを結ぶ縄の結び目が少しだけ緩くなっていることに気づいていた。この男は恐らく気づいてはいない。勝利を確信しているがゆえの、おごり。二つ目のミス。何度かうまく引っ張ったり動かしたりすることで、ほどけやすくできるはずだ。男という生き物は女の前ではすべからくマヌケなようだ。
と……。いきなり体が跳ねた。その一瞬だけ思考が途切れて、自分がどこにいるのかも分からなかった。一体何が起きたのか。
「わけが分からないって顔してるな?」
男が見下ろしている。
もう一度、体が跳ねた。意思とは無関係に自分の体が動いたのだ。今度は何をされたか分かった。男が自分の素肌に直接触れたのだ。腹の辺りにただ触れられただけなのに、体がこんなに敏感に反応するなんて、エリシアにとっては未知だった。
(なんなの、これ。この男、私に何を打ったの?)
体の熱と疼きが一層増している。体がおかしい。自分の体なのに男の指の動きに答えてしまう。男が内ももの辺りに触れた。それだけでエリシアは体を波打たせた。男は面白がって下腹部をなで、揉んだ。そのたびにエリシアの体の中で耐え難い熱の暴走が起こり、思考は中断され、びくんびくんと体を浮き上がらせた。男の手は執拗に胸の周辺や足の付け根あたりをまさぐり揉んだが、乳首や秘所には決して触れない。そうされているうちに散らばっていた熱がまだ触られていない一番敏感な場所に集まっていくような感じがした。事実、エリシアはだんだんと男の手の気持ち悪さと刺激とには慣れていったが、男が避け続けている特別な部分だけが強烈に焼けるようになってきた。
(こんな男に触られたって、気色悪いだけなのに……! 体が……言うことをきかない……)
エリシアは集合していく疼きから必死に意識をそらそうとするが、うまくいかない。今や二つの乳首と秘所とがジンジンしてたまらなくて、身をよじらせることで、下着の布がわずかにこすれるときの何とも言えない感覚によって、その疼きをごまかしていた。
(やめろ……おかしくなる……。もうやめろ……この外道が……)
「んんっ! ん!」
エリシアは男を罵倒したが、言葉にはならない。
「なんだ? どうした?」
酷薄な笑みを浮かべて、男が尋ねる。と、男の顔が視界から消えた。次の瞬間、生暖かくてざらっとしたものが肌を撫でた。
「んあっ!!」
今まで以上に不快な感触に、エリシアは今までで一番鋭く体を跳ねさせてしまう。
(今の声、私の……?)
「信じられないって顔してるな?」
男の顔が股の間からこちらを見ていた。それで理解した。
舌だ。肌をなめ、吸い付く。より生々しい感触がエリシアの理性をさらに搔き乱す。男はネグリジェを破り捨てた。さらに胸を覆っていた布も剥ぎ取った。豊かなお椀の天辺で桃色の乳首がぴんと天井を指している。男はわざと水音を立てながら、丘の間を通って鎖骨のあたりまで来た。頭を押さえつけて首筋をなめまわす。ぞくぞくする感覚が体の内外を這い回り、気持ち悪さと歓喜とがごちゃ混ぜに襲ってくる。距離が近づいたせいで水音がよりはっきりとリアルに耳に届く。耳を直接なめられたときには、ぞっとして全身が鳥肌立つと同時に、脳みそに手を突っ込んで掻き混ぜられているのではないかと思った。男の攻めから逃げようと身をよじらせても無駄だった。だが分かっていても体はヘビのようにうねり、波打ち、絶え間ない快と不快とか脳を焼いた。痙攣が止まらない。
(頭が……! おかしくなる……!)
エリシアは目を見開いたまま、声にならない声でうなり続けた。男が体から離れても、エリシアの太ももはぴくぴくと小刻みに痙攣を繰り返し、頬には涙が伝っていた。
男が、エリシアの体を覆う最後の布――秘所を覆う薄い一枚に手をかけた。その濡れて貼り付いた布が秘所から離れる瞬間にさえ、エリシアはびくんと反応してしまった。
「見ろ」
男が見せたそれは、ひどく濡れてべたべたになっていた。エリシアは直視し続けるのがあまりに屈辱的で、目を背けた。体はとっくにおかしくなっている。他人に見せたことも、ましてや触らせたこともない大事な部分が、今やどうなっているのかは直接見れなくても分かっている。自分で触ったことは数えるほどしかないが、こんなに熱いものがあふれたことなんてなかった。
男は今や何の役にも立たなくなった薄布をわざとエリシアの顔の横に置き、続いて股ぐらに顔を近づけて、エリシアが最も見られたくない部分を左右に押し開き、凝視した。
「おい、ひくひくしているぞ。このヘンタイめ」
これまで味わったことのない屈辱。だが今は耐えるしかない。
(……殺す。この男、絶対に殺してやる!)
「ノーラ、来い」男が呼ぶと、ダークエルフの少女が寄ってきた。「こいつのここがどうなっているか、見えるようにしてやれ」
「ふい」と少女は言い、詠唱を始めた。空間変化の初歩的な魔法だと、エリシアにはすぐに分かった。ただ、自分ならほんの一息、一秒かからずに詠唱できるそれを、この少女は時間をかけて丁寧に詠み上げている。こんな馬鹿正直で間抜けな詠唱をするエルフはいない。
遅すぎる詠唱が完成し、エリシアの顔の上の空間がゆらゆらと揺らいだ。揺らぎがおさまると、空間に大きく広げた両脚と股が映し出されていた。
「よく見ろよ。おまえの下品な穴がどうなっているかを」
それは紛れもなく自分の下半身だった。自分では絶対に見ることのできないアングルで、くっきりと蜜穴の入り口が映っている。しかもその穴は湯気が立ち上ってきそうなほど火照っていて、小刻みにぴくぴくと動き、透明な液体をしたたらせているではないか。
「エルフの姫ってのはとんでもないヘンタイだな」
(違う! これは男が使った薬のせいだ……)
「ノーラ、姫様を少しだけ気持ちよくしてやれ。だけどいいところだけは絶対に触るなよ」
「ふい。わたし、きょうりょく」
ダークエルフの少女が腕を伸ばしてきた。乳房をマッサージするように揉み始めた。先ほどの男の手とは打って変わって、少女らしい優しい手のひらだ。その優しさが体に微弱な電撃を起こすようで、妙に物足りないような切なさを抱かせる。二つの丘の上に直立した乳首は痛いぐらいに勃起している。
「そのまま続けていろ」
男はそう指示して、割れ目にふぅっと息を吹きかけた。またしてもエリシアはびくんと体を脈打たせた。
「綺麗な色してやがる。しかもノーラに揉まれてさらに感じてるな?」
蜜穴がカッポリと口を開き、どろりと愛蜜が垂れていく。
(やめろ……! 見るな)
「こっちはどうだ?」
男の指は蜜穴の少し上に移動した。男が指でひだを開くと、充血してぷっくらと膨らんだ肉豆が顔を出した。外気にさらされることで、今まで以上に感覚が鋭敏になったのか、疼きとヒリヒリが一層強まった。
「こんなに腫れてたら、触ってほしくてたまらないだろう? なあ?」
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「んふぅううううっ!?」
エリシアの腰が浮き上がった。そよ風が撫でていったかのような優しすぎる愛撫。男が腹の上に跨って、エリシアの動きを封じる。刷毛を使って立て続けに肉豆を撫で上げる。
「んんんんっ!? んぅううう!? んぅううううううっ!?」
エリシアは激しく暴れたが何の抵抗にもなっていない。胸と一番敏感なところを同時に攻め立てられて、頭が真っ白になりそうなのに、ほんのひと押しが足りなくて、完全な白にまで上り詰めることができない。正気と狂気の境界で踊らされ、いっそ意識が飛んでしまえば楽だと思った。
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猿ぐつわを外して魔法さえ詠唱できれば、勝負は一瞬で着く。それに、これ以上体を弄ばれたら本当に気が狂ってしまう。エリシアはわずかに頭を動かして、敵の様子を盗み見た。男の自信と余裕の笑み……。
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暴風が男たちを吹き飛ばして壁に叩きつける、はずだったのに。……何も起こらない。空気は動かない。そよ風すら吹かない。部屋は静かなままだった。
気を失っている間に張り直したか!? ならばもう一度と、詠唱した。……だが何も起こらない。なぜ? 手当たり次第に他の魔法も詠唱するが、何一つとして発動しない。
(魔法が、発動しない……? なぜだ!?)
「どうした? 得意の魔法は使わないのか?」
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