リースス・レーニス

乱心

執務室に銃声が響き渡った。
「フハハハハ！ざまぁみろ！貴様のような外道にはもったいねぇほど楽な死に方だな！この俺に感謝しろ！」
グレスは甲高く大きな笑い声をあげた。しばらくすると、グレスを罵倒する少年の低い声がどこからか聞こえてきた。
「おい豚。大声で騒いでんじゃねぇよ。お前神経だけじゃなくて頭もおかしくなったのか？」
「あぁ！？この俺を豚呼ばわりする無礼な野郎はどこだ！？この俺がぶっ殺してやる！」
グレスは乱心しているようで、俺様気質の本性が露呈している。
「ここだ馬鹿。目も見えねぇなんて、豚は大変だな。」
ハッと人を小馬鹿にするように鼻で笑う少年は、グレスの右横に腕を組んで立っていた。
「てめぇか！？俺を馬鹿にする小僧は！？俺をナメてると痛い目に会うってこと教えてやるよ！」
そう言ってグレスは少年に銃を向けようとするが、肝心の銃が視線の先にない。
「…あ？っ！？ぐわぁあぁぁ！？でぇぇぇ！あああああぁぁぁ！」
先程まで乱心だったグレスだが、ある事実を目の当たりにしてようやく自分の置かれている状態を理解した。
「ギャーギャーうるせぇな…気づくの遅ぇし。こんなんがボスとか…構成員が可哀想で仕方ねぇよ。」
少年は人差し指を耳につっこみながら、汚物を見るような眼差しをグレスに向けていた。
「うでがぁあぁぁあ！？」
そう、グレスの肘は絶対に曲がらない方向に曲がっていたのだ。腕はプランと肘から力なく垂れ下がり、握っていたはずの銃は地面に転がっていた。
右肘を庇うように立っているグレスは涙目になっていた。
「はぁっ…これぇ…お前がやったのか…？」
「馬鹿か？そうに決まってんだろ。」
少年は眉をひそめて不快感を顕にしていた。
「そうかぁ…！き、きみ…俺の仲間にならないか…？君みたいな優秀な人材は…すぐに昇進させてあげるよ！」
グレスはヒラリと手のひら返しをし、少年に命乞いをした。それが少年の癪に触ったらしく、少年はグレスの腹に膝蹴りをした。
「俺がお前みたいな弱いやつの部下になる訳ないだろ。身の程をわきまえろ、豚が。」
グレスは蹴られた衝撃で、無様に口から吐瀉物を吐き出した。
「まぁまぁその辺にしなさい、フィエルくん。」
フィエルが声の聞こえる方向を見ると、白髪の老人がニコニコと微笑んでいた。