リースス・レーニス

ポーカー

「はーい、ロイヤルストレートフラッシュ～。」
シャンスはそう言ってカードを出すと、フフンと鼻を高くして自慢げな表情をした。
「なんでですか…」
ペディはこめかみに手を当てながら眉をひそめて、カードに睨みつけた。
「なんでって…運やけど…」
シャンスは「当たり前やろ？」と言うように、腕を組んでそう言った。
「ロイヤルストレートフラッシュって0.00015％ですよ！そんな簡単に出ませんよ…なにか秘策でもあるんですか…？」
ペディは机をバンッと叩いて立ち上がった。そしてピッと人差し指をシャンスの目の前につきだして、秘策を問いただそうとした。
「秘策も何も…さっきお前が答えを言っとったで。『運で勝つ』って。」
シャンスはキョトンと目を丸くした。そのあと、何かを思い出したようにポンと手を叩き、ペディに質問をした。
「あ～…お前、『シュヴァル』って街知っとるか？」
「はい…カジノなどの娯楽施設を中心としていて…夜の街として有名な場所と…耳にしたことがあります。」
ペディは顎に手を当てて記憶を辿りながら、ポツリポツリと言葉を発した。
「俺はそこの生まれやねん。小さい時から、仲間と一緒にカジノに出入りしとった。始めて賭博をしたのは…7歳…くらいやったかな？大人相手に圧勝して、ぼろ儲けや。そこから頭脳戦や運ゲー…ありとあらゆるゲームをプレイしてきた。」
シャンスは心底つまらなそうな顔をして、そう話した。
「なるほど…強いわけです。ていうかそれ…最初に言ってくださいよ。不利な戦いを挑まれてたって事じゃないですか…」
ペディはハァ…と深いため息をついて、こめかみに手を当てた。
「ええやん。お互いに楽しめたやろ？…ここまで俺の遊びに付き合ってくれてありがとな。」
シャンスはニヤッと微笑んでペディを見つめると、椅子から立ち上がってペディの頭をワシワシと撫でた。そしてそのままゲームを手に取り、棚に片付けようとした。すると…
「質問しないんですか？」
ペディはジッとシャンスを見つめてそう言った。ペディの瞳は、先程までの人を疑うようなドロドロとした色ではなく、少年のように無垢で優しい色をしていた。
ペディの瞳を見て、シャンスは目を見開いたが、その後にフッと微笑み、ペディをジッと見つめた。
「…質問されたいん？」
「そうじゃないですけど…一応ルールは厳守するべきかと…」
ペディは気まずそうに指で手をいじると、シャンスから視線を逸らした。
シャンスはそんなペディの姿を見ると、急いでゲームを棚に片付け、自分の椅子に座った。
「ふぅ～ん。律儀な奴やな。…今まではマーレの4幹部として質問しとったけど、ここからはシャンスとして質問したる。お前はこれから何がしたいん？」
シャンスはペディをジッと見つめた。シャンスの目も、先程までの相手を試すような目ではなく、優しく暖かい目をしていた。
「それは…仲間である彼らの意見を聞かないと…」
ペディは少し戸惑いながら言葉を絞り出した。しかし、シャンスはペディの言葉を遮ってキツい口調でこう言った。
「そんなめんどくさい事を聞いてるんやない。お前が、どうしたいかや。」
シャンスは視線を逸らさず、ジッとペディの目を見つめた。