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28.妖精との別れ
しおりを挟むディートは、魔獣征伐を無事に終え、山奥で最終確認をしていた。
そこへ、突然ピルクスが現れた。
「おっ、ピルクス、どうした?ここまで来るのは珍しいな!」
「フィリアが危ない!」
ディートが手のひらに乗せると、ピルクスの顔は、見たことがない位に焦っている。
「何だと!?どういうことだ?」
「フィリアが監禁されている。ケガもしている。」
「監禁?ケガ!?今、どこにいるか分かるか?」
「僕と一緒に行こう!案内する!!まずは辺境伯邸に向かって!」
ディートは、ピルクスの話でフィリアの命の危機を感じ、最終確認をアレンに任せて、山を軍馬で急ぎ駆け下りた。
ピルクスは、ディートの上着の胸に潜り込んでいる。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
辺境伯邸に到着すると、ピルクスがひょこっと顔を出す。
「気付かれないように、あっちの草むらの方に行って!奥に小屋があって、フィリアはそこにいる。」
軍馬を静かに厩に戻し、ディートは小屋を目指した。
しばらく走ると、古びた小屋を見つけた。
「こんな所に小屋があったのか…」
小屋の入り口を何度か蹴ると、中に入れた。
そこには、血溜まりの中、意識を失ったフィリアが横たわっていた。
「フィリア!しっかりしろ!!」
肩をそっと揺さぶっても、返答がない。
「フィリア!俺だ!!分かるか??」
声を掛け続けるディートに、ピルクスが言った。
「ディート、僕をフィリアのお腹の上に乗せて!」
「ピルクス、頼むぞ!!」
疑うことなく、ディートは言われた通りにピルクスをお腹に乗せる。
すると、ピルクスの体が金色の光を放ち、フィリアを包み込む。
「ピルクス…これは治癒か?」
「そうだよ。僕がフィリアを助ける!僕の命と引き替えに。」
フィリアの青白かった顔に、ゆっくりと赤みがさしてくる。
「あぁ…フィリア…お願いだ、戻って来てくれ…頼む、ピルクス…フィリア…」
祈るような気持ちで、ディートは見守る。
しばらくすると、ピルクスの体がだんだん透明になってきている。
「ピルクス、お前は大丈夫なのか?」
ピルクスは、穏やかな笑顔で呟いた。
「しばらく…お別れになると思う。でも、絶対に、また会えるから、フィリアには内緒にしておいて?」
ディートは、胸が痛くなる。
思い起こせば、ディートにとってピルクスは唯一と言っていい位、気の置けない友人だった。
「ピルクス、逝ってしまうのか…?」
「今は、フィリアの命が一番大事でしょう?大丈夫、またディートにもフィリアにも必ず会いに来るから。ディート、泣かないで?次に会う時は、嬉し泣きだよ??」
そうして、ピルクスはフィリアのお腹の中にすうっと消えて行った。
「◯◯◯、◯◯◯◯!」
「ピルクスっっっ!!!」
最後の瞬間、ピルクスが小さな声でディートに告げた。
その言葉で、ディートは全てを悟った。
ピルクスに、必ずまた会えるという意味を。
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