【完結】 仮面で隠していた傷痕を撫でたら愛が溢れてきた大公様 〜普通じゃなかったらしい私の中の普通〜

紬あおい

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46.家族

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あれから、テオドリクスの記憶は、まだ全てが戻ったわけではない。
ふとした瞬間に、これは前にもあったかな?と感じることがある程度だ。
それでも、私と想い合ったあの時を、全て切り取られたかのように忘れてしまうよりは、全然良い。

前からの想い出は、全て私の記憶の中に大切に存在していて、これから創る想い出は、2人で共有していけばいい。
失くしたものより、これから増やしていく幸せの方が大切だと考えるようになった。
そして、数にすれば、あっという間に過去を追い越すだろうと思える程に、毎日が充実している。

テオドリクスは、前から優しかったし、ちょっと溺愛っぷりが目に余ることがあったけど、その部分は健在だ。
新たに私に恋をして、夢中になっている姿を使用人達に隠しもせず、ただ可愛い夫になった。

私は、テオドリクスの本質はそのままに、忘れている想い出が少しある、みたいに思えるようになった。
こうして、毎日を積み重ねて、テオドリクスと私は家族になっていくんだなと思う。

随分と心配を掛けた筈の両親は、ただ見守っていてくれた。
襲撃事件の場をの当たりにして、私を引き摺って公爵邸に帰ってもおかしくない状況だったのに、私を信じ、テオドリクスの傍に居ることを許してくれた。
テオドリクスをただの娘婿ではなく、息子のように思っていたことも大きな要因だろう。

一部記憶が戻り、『また夫婦としてやっていける』と書いた手紙の返事は、『君達なら大丈夫だと思っていた。セシリアもテオドリクスもうちの子だからな。時間が取れたら、また公爵邸に遊びに来なさい。』と書いてあった。

手紙を読んだテオドリクスは「義父上と義母上には、一生頭が上がらない」と泣いていた。
テオドリクスにとっても、父と母は家族なのだ。

多くの家族は、時間と想い出を当たり前のように共有している筈だ。
しかし、
父は覚えているけど、母は忘れてた。
兄は忘れてるけど、妹は根に持っている。
血の繋がった家族でさえ、共有する想い出の中にも、完璧に覚えていないことがたくさんある。

テオドリクスと私も、そんな感じなんだろうと思うと、今一緒に居られることこそが重要であることに気付かされる。

大事なものは案外近くにあって、それを愛し、敬い、行動する。
日々、それの繰り返しだ。
そうして大切にしてきた想いがお互いに重なると、大きな喜びや自信となり、愛する人を守れる力となる。

これからも、そんなふうに過ごして、テオドリクスと幸せになりたい。
傷痕だけでなく、寂しさも隠していた仮面の下が、いつも笑顔で居られるように、私は日々精一杯、私なりの普通を貫き、生きていく。
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