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3.それはあの人の好み
しおりを挟む最初からジェスティンはマメだった。
会う時は、必ずスイーツを持参してくれた。
他にも、忙しくて直接来られない時は、女性が好きそうな花束や香水が届くことがあった。
多少趣味が合わなくても、婚約者からの贈り物だと思えば嬉しいものだ。
そこに違和感を覚えたのは、ドレスが届いた時だ。
サイズが微妙なのだ。
肩幅やウェストは大きく、丈が長い。
胸周りは小さ過ぎて、私には合わない。
しかも、一緒に出掛けるわけでもないのに、ドレスを贈ってきた。
まるで、誰かに贈って断られた物のように感じた。
女性慣れしているなら、サイズも分からずドレスを贈ることもしないだろう。
その違和感の謎は、伯爵家の密偵の報告で、すぐに判明した。
ジェスティンの元恋人は幼馴染だった。
しかし、その元恋人のアリー・スコット男爵令嬢は、数日前にエカルト・アクストン伯爵と結婚していた。
ドレスは、きっとアリーに贈りたかったのだろう。
そして、今まで届けられた贈り物が、恐らくアリーの好みだと気付く。
(そう言えば、その日何をしたとかは話しても、私の好きな物など聞かれたことがなかったわね…いちいちお礼を言われるのも嫌みたいだったし。)
私は、贈り物を思い浮かべて思った。
ブルーのサイズの合わないドレス。
ブルーの花束。
ブルーローズの香水。
ブルーじゃなかったのはスイーツ位だ。
きっとアリーの好きな色や瞳はブルーなのね。
私は、何をもらっても感動したし、嬉しかった。
ジェスティンが私の為に選んでくれたと思っていたから。
その全てが今は虚しく思える。
(喜んでた自分が馬鹿みたい…)
その夜は一人で泣いた。
悲しいのか、悔しいのか、寂しいのか、分からなかった。
朝起きたら、自分でも笑える位に目が腫れている。
こんな日は一日ベッドで過ごそう。
そう思っている日ほど、ジェスティンは来る。
体調が良くないからと断ったが「明日また来る」と言われたそうだ。
次の日も断ったら、三日目から来なくなった。
何か察したのか、アリーとの逢瀬なのかは分からないが、私はしばらく考える時間が欲しかった。
それでも、やはりジェスティンが来なくなったことは悲しかった。
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