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47.三つ子、はしゃぐ
「父上、馬車って速いのですね!」
「馬って目が綺麗です!」
「あっ!川が見えました!」
リュカは速度、ロイドは馬、レオンは景色と、初めて馬車に乗る三つ子は、それぞれの視点で燥いでいる。
まだ三歳の三つ子は、親バカかもしれないが、成長が早く、なかなか賢い。
「山道は馬車が揺れるから、眠くなったら寝てしまえ。
酔うと始めに眠くなるんだ。我慢すると本格的に気持ちが悪くなるから、眠い時は寝るのだぞ?」
「「「 はーい!!!」」」
三つ子はヴェルシスの言葉にしっかりと頷いた後、大きな窓硝子から外を夢中で眺めている。
「ねぇ、ヴェルシス、この馬車とても豪華だけど、いつ準備したの!?
シートはシルクやベルベットだし、もしかしてシートの下を引っ張ると、夜はベッドになる?」
にやりと笑ったヴェルシスは、馬車についての説明を始めた。
「この馬車はな、長距離移動でドルムーズというんだ。
リルアと三つ子の為に、辺境伯邸の内装を担当した業者に、この馬車も造らせたんだ。
イメージは移動する寝室だ!」
ヴェルシスのドヤ顔に、私は笑いを堪えられない。
「もう、本当にあなたって人は!」
「良い夫で父だろう?何せ、我が家の後ろは、正真正銘お宝の山だからな。クククッ!」
はっきりと言葉にはしないが、どうやらドルムーズの購入費用は、ダイヤモンド鉱山らしい。
ヴェルシスも私も、特に華美な装飾品は好まないので、ここぞという時に利用していたのだ。
「遣り繰り上手で、素敵な旦那様だわ。」
「妻と子の為なら何でもするさ。」
「いつもありがとう。大好き!」
ヴェルシスの頬に口付けると、外を眺めていた三つ子から苦情が来る。
「「「 父上だけズルいっ!!!」」」
「はいはい、一人ずつほっぺを!」
ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ!
ちゅっ!?
「「「 ちちうえっっっ!!!」」」
四人目はヴェルシスだった。
我が家は四つ子だったのだろうか。
「あはははっ、三つ子の顔っ!」
「ヴェルシス!大人げないわっ!!」
「いいじゃないか、俺の妻なんだから。
さあ、おやつにしよう。」
「「「 はーい!」」」
私を取り合い、三つ子が拗ねると絶妙なタイミングで焼き菓子を取り出すヴェルシス。
だからと言って、拗ねる度におやつで誤魔化している訳でもない。
時にはおやつ、時には体術や剣術。
使い分けの上手い父のヴェルシスである。
「ヴェルシスって、子どもの扱いが上手なのね。」
「そうか?騎士団の奴らもこんな感じだぞ?」
「三つ子と騎士達…?」
「まあ、男なんて幾つになっても子どもっぽいという話だ。」
「なるほど!」
三つ子とヴェルシスを見ていると、妙に納得してしまう。
父としての強さや優しさだけでなく、悪戯心も持ち合わせたヴェルシスに、私はまた新たな発見をする。
「父上、喉が渇きました。」
「僕も!」
「僕もーっ!」
焼き菓子で口の中の水分を奪われたレオン。
すっと差し出された瓶入りのレモン水を堪能し、リュカやロイドと回し飲みしている。
(この後は寝てしまうでしょうね。ふふっ!)
案の定、うとうとし始めた三つ子にふわふわなクッションを当てるヴェルシスを見ながら、私はこの旅行で、もっともっとヴェルシスの新たな一面を発見する気がした。
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