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19.地雷
しおりを挟むあっという間に昼になり、皆が昼食の為に薬師部屋を出て行く中、マルガリーテはまだ部屋に滞在していた。
いつもなら真っ先に部屋を出て行く筈なのにと、リンネは不思議に思ったが、朝とは違い香水を纏い、髪が整えられていた。
(リースハルト様を待っているのかしら…困ったなぁ…)
今までは、きりりとした薬師長が急に女を前面に出してきていることに、リンネは驚いていた。
(きっと私なんかよりいい女だと言いたいのでしょうね。まぁ、普通の男性から見たら、薬師長の方が女性らしくて好ましい筈だもの。)
リンネは、自分が知るリースハルトの為人を考えると、厄介なことが起こりそうな気がしていた。
コン、コン、コン
(リースハルト様だ!)
「はーい!」
嬉々と対応したのはマルガリーテで、リースハルトが明白に嫌な顔をした気がして、リンネは二人の真反対な態度にハラハラしていた。
「リンネ嬢、行くぞ。」
「はい!薬師長、お先に失礼いたします。」
鞄を持ってマルガリーテの横をすり抜けた時、リンネは腕を掴まれた。
「リンネ、お待ちなさい。一体、何の用事で早帰りするの?自白剤は完成したのよね?今日は何なの?上司の私が知らない仕事をするのは、どうなのかしら!?」
リースハルトに完全に無視されたマルガリーテは、リンネに当たり散らすという悪手に出た。
そして、リースハルトの逆鱗に触れた。
ぴきっと顳顬に血管が浮いたリースハルトは、リンネの腕を掴んだマルガリーテの手を振り払った。
「ほう、極秘任務をこの場で明かせというような者が皇宮の薬師長だと?
誰が聞いているかも分からないのに!?
薬師長という立場は、この近衛騎士団長をも超えるのか。
面白い!この後、陛下と皇子殿下にも確認しよう。
リンネ嬢はいつも山程の洗い物をしていようだが、そなたは自分の首を洗って待っていろ。」
「いえ、私はそんなつもりでは!こう度々リンネと男性が連れ立って行動していることが、リンネの評判を下げないかが心配で!!」
「なるほど…」
「ですから!極秘任務とあらば私に!!」
マルガリーテはリースハルトに堂々と言った。
リンネの評判を気遣い、自分の方が有能であると言わんばかりに。
しかし、それも地雷だった。
「そなたは、私がリンネ嬢の評判を貶す者だと言いたいのだな。私からすると、人の命を救う者が、香水を纏ってちゃらちゃらし、薬の調合が出来るのかと思うが?
自分だけでなく、部下の作業に影響を及ぼすことが想定出来ぬらしいな。
そなたの方が余程評判を貶すと思うぞ?
そんな者が薬師長だなどと、片腹痛いな。」
「んなっ!?香水位当たり前の…身嗜みで…」
「もうよい。そなたとは根本的な考え方が違うようだ。時間もないので失礼する。
さあ、リンネ嬢、行こう。」
リースハルトはリンネの腕を取り、薬師部屋を出た。
ばたんと閉まったドアの前で、マルガリーテはへなへなと座り込むが、その目は怒りに燃えていた。
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