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43.嗤う皇子と護衛騎士
毒薬事件から三日後、リンネの解毒剤のおかげか、ベントレット国王とアンジェリーナ王女は回復し、ザカリー陛下とシルヴェスタ殿下との非公式の会合に臨んだ。
そこにはリースハルトも護衛の為に立ち会い、グレシャム国側の護衛は、以前リースハルトが腕が立ちそうだと認識していた騎士だった。
リースハルトが辺りの気配を伺っていた時、両国の会合が始まった。
「先ずは、昼食会での出来事を詫びねばならないな。警備には慎重を期していた筈だったが、申し訳ない。」
ザカリー陛下が謝罪すると、ベントレット国王は些か不機嫌な面持ちで口を開いた。
「まさか謝罪だけで済ますおつもりか?帝国での毒殺未遂事件ですぞ?
こちらは私だけでなく、次期国王となるアンジェリーナまで被害を被ったのです。
それなりの誠意を見せていただきたい。」
「まだ実行犯が特定されていないのに、一方的にこちらが全て悪いとは言い難い。」
「それは、我が国の者が目論んだとでも?」
「そこまでは特定出来ていない。しかし、帝国の者という証拠もない。」
両者譲らずの会合が平行線を辿りつつある時、アンジェリーナ王女が提案した。
「このままでは、いつになってもお互い平行線のままですわ。妥協案として、グレシャム国と帝国の絆を深める為に婚姻を結ぶのは如何でしょう?私の王配となる者を選定したいのですが?」
「アンジェリーナ、候補は?気に入った男でも居たのか?」
ベントレット国王は下品な笑みを浮かべ、アンジェリーナ王女を見た。
「そこに居る騎士が気に入りましたわ。」
その視線の先にはリースハルトが立っていた。
しかし、リースハルトは、アンジェリーナ王女を全く見ることもせず、ザカリー陛下とシルヴェスタ殿下を見ていた。
「アンジェリーナ王女、あの者には妻が居る。」
「別れたらいいではないですか。国と一個人の婚姻であれば、国が優先されるべきでしょう。」
「いや、あの者は駄目だ。帝国にとって、手放すことは絶対に出来ない者だ。私の息子のような存在でもあるしな。」
「だったら、尚更欲しいですわね。」
譲らない両者に、シルヴェスタ殿下が呆れながら口を開いた。
穏やかなシルヴェスタ殿下が、こういう場で発言するのは珍しいなと、リースハルトは思っていた。
「グレシャム国の内乱に、わが帝国の優秀な騎士を差し出すつもりはない。
隠しているようだが、非嫡出子の王子が居るようですね。しかも、優秀な?」
「あんな者が国王になれる訳はないわ。」
ベントレット国王の顔がぴくりと引き攣り、アンジェリーナ王女は怒りを露わにした。
「国民が望めばなれる可能性もあります。この程度の話でムキになるような者は、次期国王として相応しいのでしょうか?」
「なっ!?その言い方は、あまりにも失礼ではありませんこと?」
シルヴェスタ殿下は、まるで挑発するかのように、不敵に笑って言った。
「自身の足元がぐらついているからと、足場を固めにきた割には、随分とお粗末な毒殺未遂事件を起こしたなと思っただけです。」
「何だと!?自作自演だとでも言いたいのか?」
「我が国の情報網を侮ってもらっては困る。大方、その辺の騎士にでもワインをすり替えさせたのであろう。毒に倒れた陛下や私に解毒剤を差し出して恩でも売ろうと思ったのか?」
ベントレット国王もアンジェリーナ王女も黙り込み、悔しげな表情を浮かべた。
「何故そのようなことを?」
「毒薬の成分を分析したら、グレシャム国にしかない成分が検出されたからな。」
シルヴェスタ殿下は、リースハルトを見ながら笑った。
(リンネ、これは面白くなってきたぞ?)
シルヴェスタ殿下と目が合った瞬間、初めてこの場でリースハルトの顔が緩んだ。
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