契約が終わったら静かにお引き取りくださいと言ったのはあなたなのに執着しないでください

紬あおい

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7.思い付きの良策

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牧場から公爵邸に戻ってから、たくさん持ち帰った山羊のチーズを、ファニアは有効活用出来ないかと考えていた。

「独特な香りがするから、人によっては嫌うかもしれないわねぇ…蜂蜜やハーブと合わせたら気にならないかしら…?」

厨房の調理台に並べた山羊のチーズを目の前に、ぶつぶつ独り言を言っていたファニアに、執事のマーラーと侍女長のターニャが不思議に思い、話し掛けてきた。

「ファニア奥様、どうされましたか?」

「チーズに問題でもありましたでしょうか?」

「ううん、違うわ。もっと美味しくいただく方法を考えていたの。」

「そうでございましたか。実は、私はその匂いが少し苦手で…」

ターニャが申し訳なさそうに話すと、ファニアは早速蜂蜜を持ってきた。

「これならどう?」

薄切りにして蜂蜜をかけたチーズをパンに乗せて、ターニャに差し出す。

「蜂蜜でチーズの匂いは気になりませんね。」

ぱくりと口に運ぶと、蜂蜜と山羊のチーズの酸味や塩味がマッチしていた。

「んっ!?美味しいです。元々コクがあるので口当たりが良いし、鼻から抜ける香りが蜂蜜のおかげで凄くいい香りです!!これならたくさん食べられそうです。」

「マーラーも食べてみて?」

ファニアがにっこり笑って差し出すと、マーラーも躊躇わず食べる。

「おっ!そのままでも私は好きでしたが、蜂蜜が合いますね!!」

「良かった!匂いが気になるなら、蜂蜜だけでなくハーブを混ぜたり、いろいろ加えたら山羊のチーズが、もっと売れるかもしれませんね。」

ファニアは、公爵邸を出たら牧場で働かせてもらう為にいろいろ考えていた。
体の小さな自分が、力仕事ではなく牧場で働ける方法は、山羊のミルクやチーズを加工品として製造し、売り上げることが一番だと思ったからだ。

「ターニャ、しばらくの間、山羊のチーズをお食事のメニューに入れてくださらない?いろいろ試したいの。」

「承知しました。料理長に伝えましょう。チーズ自体も、柔らかいままの物や燻製にした硬めの物などを準備しましょうか。」

「燻製!!匂いが気にならない人には、ワインのおつまみに良さそうね。一層の事、薄切りにしてカリカリなチーズも美味しいかも!」

次々とアイデアを出すファニアに、マーラーやターニャは感心しながらも、一緒に楽しんでいた。

「ファニア奥様、製品化出来るようにいろいろ試してみましょう。クライス様だけでなく、公爵様達もお喜びになられますよ。」

「そうなるといいのだけど。私もこちらを出て行く時、牧場で雇っていただけるように、今から頑張るわ!」

ファニアはやる気に満ちた笑顔をマーラーとターニャに向けた。

「「えっ…?」」

やる気満々で乾燥ハーブの瓶を見つめているファニアには、マーラーとターニャの声は聞こえていなかったようだが、二人はファニアの決意に酷く動揺していた。

(ここを出て行く…?)

(お坊ちゃま、まさか…?)

マーラーとターニャは、公爵夫妻にいろいろ調査する許可を貰えるよう手を打たなければと、お互いの目を見つめ頷き合った。


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