19 / 39
兄弟2
しおりを挟む
ムナクソ注意報
-------------------------------
「んぁ、あっ…ひ――そこ、や、やだ…イク…っ…けい、だめ――そこ」
「だって、ここ…兄貴、ほら……っくぅ」
「ぁ、んっ、あぁぁっ」
義弟の慧と共に絶頂を迎える。昨日は嫌悪した行為が、今日は歓びに変わっていた。
裡奥を灼熱に蕩かされる余韻さえ味わうように、和馬の後蕾は慧を咥えたまま強く収縮する。下腹の奥もまだビク、ビクッと微かに震えていた。
「ん……ぅ、ン…」
小さく微笑む慧の口付け。
「放してくれないと、出てあげないよ?」
気持ちいい。誰かとセックスするって。誰かと気持ちよくなるって。
「大好きだよ兄貴」
誰かに愛されるって。
「兄貴」
「………けい」
吐息が引き出す想いは、見上げる瞳と同じく艶を纏って情欲に濡れていた。
聡い慧ならばそれで分かってくれると思った。
もう無理矢理奪わなくてもいい。お前が欲しいと言うならば、いくらでも応えてやる。
「…気持ちよかった?」
「……ん」
まだ動けないほど悦かった。身体中で慧を感じた。
側臥したまま抱き寄せられて、迷うことなく背中に腕を回す。
皮膚を通して直に感じる慧の鼓動が気持ちいい。薄皮で触れ合う内腿の体温も。まだ少し芯を持つ、中心の熱も。
「もう一回、シてもいい…?」
だが、これには言うことがあった。
「お前っ、アソコばっか狙うの、やめろよ」
覚えがあるのか、「ナカ?」と即答するのが秀才らしい。
「そう!」
言われた方が恥ずかしくて目の前の肩口に顔を伏せる。
「だって。アソコ攻めると、兄貴全部で俺をきゅう!…って抱き締めてくれる感じするんだもん」
解答まで具体的だ。
だからといって言われた内容は全く理解できないが。
「んだよ、それ。ぜ、ぜんぶって」
「なんていうか――イク時と違って、兄貴に縋られてるみたいで嬉しくなれるんだ。俺が気持ちいいっていうか、兄貴が気持ちよさそうで嬉しいっていうか…満たされる?っていうのかも」
「な…っ…気持ち…っ」
ゆるみきった表情で惚気るように言われても、譲る気はない。気持ちいいでしょ?と図星を突かれたとしてもだ。
「あんな、ずっと、狙って擦られたら――イきすぎて、疲れる」
言われて初めて気付いたとでもいうように狼狽された。
「ご、ごめん!そうだよね。苦しいよね。…兄貴ずっとイキっぱなしだったかも……ごめんね兄貴?」
抱き締めて繰り返す、心からのごめんね。
――誰かに大切にされるって、気持ちいい。
目を閉じてまるで最中みたいに早くなった鼓動を頬に感じながら、和馬は覚えず微笑んでいた。
「ずっとは無理だけど」
「え?」
「お前が…イきたくなって、俺に余裕があったら………ぎゅ、ってしてヤル。から」
慧に見えない場所で赤面しながら年上らしい口調で言い切る和馬だが、慧の胸にも伝わる鼓動で精一杯の提言だと分かってくれるだろう。
兄貴。
耳朶から脳内に直接促されて仰向く。
大好きだよ。
微笑みの次は慧に教え込まれたお気に入りの口付け。早く欲しくて目を閉じる。
その時幸福に満たされた無防備な空間に、チャイムの音が鳴り響いた。
ハッと目を開ける。夜の静寂に動きを止めていた家の中に、立て続けにボタンを押されるチャイムがけたたましく響き渡った。
「――雪人」
反射的にそう思った。
「いいよ、放っといて」
起き上がる身体を引き戻されて、乗り上げてくる慧の身体を受け止める。
「んっ…んぅ」
唇を合わされ、自から慧を求めて舌を寄り添わせる。和馬の変化に気付いた慧は角度を変えて深く濃密に和馬を求めた。
――ドンッ!
叩かれたのは窓の外のシャッターだ。次いでガシャガシャと揺すられる。
形相を変えて起き上がる慧を「俺のダチだから」と引き留めて、和馬はベッドサイドに置いた携帯の電源を入れた。
「兄貴は俺のものだ」
「――ん」
年下の男に言われて胸が高鳴る。たとえそれが妄執じみた異常性を孕む、呪いのような言葉でも。
自身が生きる世界に存在理由などなく、時に生きる意味すら不明になる和馬は慧の執着が嬉しかった。
押し付けられる想いが異性に向ける愛情と同質のものなのか、家族に求める情愛なのかなんて分からない。
そんなもの、どちらでも何でもかまわない。
雪人の番号に電話を入れると、シャッターの向こうが静かになる。
『和馬!?』
「ん」
『今どこにいるっ?』
「家」
『ここか!?』
シャッターを叩かれる。雪人の声は切迫していた。そうだと答えると開けろ、と叫ぶ。
『俺んちに来い!』
砂原が戯れに洩らした言葉はまだ頭を離れない。
「――行かねぇ」
『何で!?何があった!』
「ごめん。もう大丈夫だから……帰って、くれ」
『アイツに何かされたのかっ?アイツもいるのか!』
雪人の好意が、「一度くらい寝てやったのか」と言った砂原の声に掻き消される。
「義弟は関係ねぇよ。もう、ほんとに――」
「いるよ」
スマホを取り上げた慧が二人の会話を遮る。
『テメェ、和馬に何かしたら殺すぞ!!』
「何言ってんの?こんな時間に不法侵入して。警察呼ぶよ」
『鍵を開けろ、和馬を連れて行く!』
「兄貴は俺のものだ」
『ふざけんなよクソガキ!テメーのものなわけねぇだろっ!!』
「――兄貴は俺のものだよね?」
向けられた視線に、思わず笑ってしまった。
「どっちが」
「え…?」
「捨て犬の目」
和馬からのキスに驚いて、落とされたスマホを耳に当てる。
「ユキ、悪ぃ。えーと、今なんかイイ感じだからさ。切るよ。明日タクシー代請求してくれよ」
もう親友だった男にどう思われようとかまわなかった。
『和馬!ソイツに何言われたんだよ!』
「色々巻き込んでごめんな」
『和馬!!諦めるな!!』
雪人の叫びは悲壮感に満ちていた。昨日までの自分の胸になら響いていたかもしれない。
でも今はもう違う。
「何も諦めてねーよ?俺、神経太いの知ってるだろ――んっ」
唇を突き出す慧に電話も手も取り上げられた。
『和馬!出て来いよっ、俺が連れて行く!俺が守る!』
女の子ならば痺れるほどの甘い誘惑。なのに。
「いいよね?兄貴。まだいれてくれるよね?」
『テメーっ!!』
それよりも目の前で捨て犬の上目遣いで誘惑する義弟の方が気になる。切れ長の涼しげな眼差しはあざとい。和馬の答えを分かっていて聞くのだ。
「いいよ――慧」
「俯せでする?」
「んぁ……いいよ、このまま……っんぅ。お前のイキ顔、見るから」
「ふっ。じゃあ、俺より先にイかないでね?」
身体を開かれて秘所に触れる慧のもの。雪人の焦燥や和馬の懊悩など知らぬげに雄々しく怒張する姿に、和馬は細い吐息を漏らした。
もう一度、それに貫かれて得られる狂おしいほどの快感を想って。
「はぁ…っあぁ、んんん―――っ!!」
「ぅあ…兄貴、すっごい、感じやすくなってるよ。…分かる?」
分かる。挿入だけで腹部が痙攣を起こし、二人の間で首を擡げた和馬のものは先端から卑しい蜜を溢れさせているのだから。
「女の子みたいに敏感だよね……兄貴」
BGMもない部屋に、二人の荒い息を凌ぐほどの卑猥な水音が、慧の律動に合わせて上がった。和馬が耳を覆いたくなるほどの羞恥と情欲を掻き立てる音に慧は微笑う。
「すごい、オト……ね。聞こえる?俺のでいっぱい、だね。兄貴のナカ」
「はっ、はぁ…くるし……ナカ…うぁ、あっ、あっ」
仰向けの和馬が声を抑えきれないほど激しい抽挿が、考えることを止めさせる。
慧が放つ新たな欲望で満たされる頃、ベッドの下に落とされたスマートフォンのことも、雪人のことも頭の中から消えていた。
--------------------------
兄弟と打ち バカップルと ルビを振る
-------------------------------
「んぁ、あっ…ひ――そこ、や、やだ…イク…っ…けい、だめ――そこ」
「だって、ここ…兄貴、ほら……っくぅ」
「ぁ、んっ、あぁぁっ」
義弟の慧と共に絶頂を迎える。昨日は嫌悪した行為が、今日は歓びに変わっていた。
裡奥を灼熱に蕩かされる余韻さえ味わうように、和馬の後蕾は慧を咥えたまま強く収縮する。下腹の奥もまだビク、ビクッと微かに震えていた。
「ん……ぅ、ン…」
小さく微笑む慧の口付け。
「放してくれないと、出てあげないよ?」
気持ちいい。誰かとセックスするって。誰かと気持ちよくなるって。
「大好きだよ兄貴」
誰かに愛されるって。
「兄貴」
「………けい」
吐息が引き出す想いは、見上げる瞳と同じく艶を纏って情欲に濡れていた。
聡い慧ならばそれで分かってくれると思った。
もう無理矢理奪わなくてもいい。お前が欲しいと言うならば、いくらでも応えてやる。
「…気持ちよかった?」
「……ん」
まだ動けないほど悦かった。身体中で慧を感じた。
側臥したまま抱き寄せられて、迷うことなく背中に腕を回す。
皮膚を通して直に感じる慧の鼓動が気持ちいい。薄皮で触れ合う内腿の体温も。まだ少し芯を持つ、中心の熱も。
「もう一回、シてもいい…?」
だが、これには言うことがあった。
「お前っ、アソコばっか狙うの、やめろよ」
覚えがあるのか、「ナカ?」と即答するのが秀才らしい。
「そう!」
言われた方が恥ずかしくて目の前の肩口に顔を伏せる。
「だって。アソコ攻めると、兄貴全部で俺をきゅう!…って抱き締めてくれる感じするんだもん」
解答まで具体的だ。
だからといって言われた内容は全く理解できないが。
「んだよ、それ。ぜ、ぜんぶって」
「なんていうか――イク時と違って、兄貴に縋られてるみたいで嬉しくなれるんだ。俺が気持ちいいっていうか、兄貴が気持ちよさそうで嬉しいっていうか…満たされる?っていうのかも」
「な…っ…気持ち…っ」
ゆるみきった表情で惚気るように言われても、譲る気はない。気持ちいいでしょ?と図星を突かれたとしてもだ。
「あんな、ずっと、狙って擦られたら――イきすぎて、疲れる」
言われて初めて気付いたとでもいうように狼狽された。
「ご、ごめん!そうだよね。苦しいよね。…兄貴ずっとイキっぱなしだったかも……ごめんね兄貴?」
抱き締めて繰り返す、心からのごめんね。
――誰かに大切にされるって、気持ちいい。
目を閉じてまるで最中みたいに早くなった鼓動を頬に感じながら、和馬は覚えず微笑んでいた。
「ずっとは無理だけど」
「え?」
「お前が…イきたくなって、俺に余裕があったら………ぎゅ、ってしてヤル。から」
慧に見えない場所で赤面しながら年上らしい口調で言い切る和馬だが、慧の胸にも伝わる鼓動で精一杯の提言だと分かってくれるだろう。
兄貴。
耳朶から脳内に直接促されて仰向く。
大好きだよ。
微笑みの次は慧に教え込まれたお気に入りの口付け。早く欲しくて目を閉じる。
その時幸福に満たされた無防備な空間に、チャイムの音が鳴り響いた。
ハッと目を開ける。夜の静寂に動きを止めていた家の中に、立て続けにボタンを押されるチャイムがけたたましく響き渡った。
「――雪人」
反射的にそう思った。
「いいよ、放っといて」
起き上がる身体を引き戻されて、乗り上げてくる慧の身体を受け止める。
「んっ…んぅ」
唇を合わされ、自から慧を求めて舌を寄り添わせる。和馬の変化に気付いた慧は角度を変えて深く濃密に和馬を求めた。
――ドンッ!
叩かれたのは窓の外のシャッターだ。次いでガシャガシャと揺すられる。
形相を変えて起き上がる慧を「俺のダチだから」と引き留めて、和馬はベッドサイドに置いた携帯の電源を入れた。
「兄貴は俺のものだ」
「――ん」
年下の男に言われて胸が高鳴る。たとえそれが妄執じみた異常性を孕む、呪いのような言葉でも。
自身が生きる世界に存在理由などなく、時に生きる意味すら不明になる和馬は慧の執着が嬉しかった。
押し付けられる想いが異性に向ける愛情と同質のものなのか、家族に求める情愛なのかなんて分からない。
そんなもの、どちらでも何でもかまわない。
雪人の番号に電話を入れると、シャッターの向こうが静かになる。
『和馬!?』
「ん」
『今どこにいるっ?』
「家」
『ここか!?』
シャッターを叩かれる。雪人の声は切迫していた。そうだと答えると開けろ、と叫ぶ。
『俺んちに来い!』
砂原が戯れに洩らした言葉はまだ頭を離れない。
「――行かねぇ」
『何で!?何があった!』
「ごめん。もう大丈夫だから……帰って、くれ」
『アイツに何かされたのかっ?アイツもいるのか!』
雪人の好意が、「一度くらい寝てやったのか」と言った砂原の声に掻き消される。
「義弟は関係ねぇよ。もう、ほんとに――」
「いるよ」
スマホを取り上げた慧が二人の会話を遮る。
『テメェ、和馬に何かしたら殺すぞ!!』
「何言ってんの?こんな時間に不法侵入して。警察呼ぶよ」
『鍵を開けろ、和馬を連れて行く!』
「兄貴は俺のものだ」
『ふざけんなよクソガキ!テメーのものなわけねぇだろっ!!』
「――兄貴は俺のものだよね?」
向けられた視線に、思わず笑ってしまった。
「どっちが」
「え…?」
「捨て犬の目」
和馬からのキスに驚いて、落とされたスマホを耳に当てる。
「ユキ、悪ぃ。えーと、今なんかイイ感じだからさ。切るよ。明日タクシー代請求してくれよ」
もう親友だった男にどう思われようとかまわなかった。
『和馬!ソイツに何言われたんだよ!』
「色々巻き込んでごめんな」
『和馬!!諦めるな!!』
雪人の叫びは悲壮感に満ちていた。昨日までの自分の胸になら響いていたかもしれない。
でも今はもう違う。
「何も諦めてねーよ?俺、神経太いの知ってるだろ――んっ」
唇を突き出す慧に電話も手も取り上げられた。
『和馬!出て来いよっ、俺が連れて行く!俺が守る!』
女の子ならば痺れるほどの甘い誘惑。なのに。
「いいよね?兄貴。まだいれてくれるよね?」
『テメーっ!!』
それよりも目の前で捨て犬の上目遣いで誘惑する義弟の方が気になる。切れ長の涼しげな眼差しはあざとい。和馬の答えを分かっていて聞くのだ。
「いいよ――慧」
「俯せでする?」
「んぁ……いいよ、このまま……っんぅ。お前のイキ顔、見るから」
「ふっ。じゃあ、俺より先にイかないでね?」
身体を開かれて秘所に触れる慧のもの。雪人の焦燥や和馬の懊悩など知らぬげに雄々しく怒張する姿に、和馬は細い吐息を漏らした。
もう一度、それに貫かれて得られる狂おしいほどの快感を想って。
「はぁ…っあぁ、んんん―――っ!!」
「ぅあ…兄貴、すっごい、感じやすくなってるよ。…分かる?」
分かる。挿入だけで腹部が痙攣を起こし、二人の間で首を擡げた和馬のものは先端から卑しい蜜を溢れさせているのだから。
「女の子みたいに敏感だよね……兄貴」
BGMもない部屋に、二人の荒い息を凌ぐほどの卑猥な水音が、慧の律動に合わせて上がった。和馬が耳を覆いたくなるほどの羞恥と情欲を掻き立てる音に慧は微笑う。
「すごい、オト……ね。聞こえる?俺のでいっぱい、だね。兄貴のナカ」
「はっ、はぁ…くるし……ナカ…うぁ、あっ、あっ」
仰向けの和馬が声を抑えきれないほど激しい抽挿が、考えることを止めさせる。
慧が放つ新たな欲望で満たされる頃、ベッドの下に落とされたスマートフォンのことも、雪人のことも頭の中から消えていた。
--------------------------
兄弟と打ち バカップルと ルビを振る
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
129
1 / 4
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる