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義父2

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「もう一度」
「うんっ、ぁ、あ…きいちろ……輝一朗。あ、あぁ、あぁ、ンぁぁ――っ」

 尾を引くような射精の開放感に痙攣する尻を挟まれて引かれ、秘蕾を義父の眼前に剥き出しにされる和馬はもう、落涙を堪えることなく訴えた。

「……ぅう…赦して、下さい。お願」
「ペナルティが欲しいか?」
「―――ごめ…なさい」

 決意。
 自分の決意は何だったのだろう。

 義父に嬲られて醜い汁を散らし、喉を引き攣らせて思うさま喘ぐ男が慧のそばにいて何の役に立つのだろう。欲望の捌け口になる以外、何ができるというのか。

 血の繋がる親にすら捨てられた自分が、慧を守るだとか支えるだとか、痴がましいにもほどがある。

「悦いんだな?…カズヤ」
「あ、ぁ、あぁっ、――ん」

 義父の指が和馬の秘所を抉り、時折秘奥の性感帯に触れては離れ、ぬちぬちと肛蕾を責め苛む。

「いつも清爽なお前の顔がとろけきっているよ。…私の指が気に入ったのだな」
「んんっ!…はぁ、ぁっ…んむ…!…き…いちろう……んんん」
「ふっ…淫靡で、美しい……お前の吐息は甘露のように甘いな」

 たった二日前、慧に赦した全てを義父に汚されていく。
 相手が誰であろうと覚えたばかりの肉悦に溺れるこんな汚い男は、慧には必要ない。

 慧が必要なのは、慧がいなければもう生きていけないと思っているのは、自分なのだ。

「こんなに泣かなくても後でちゃんとまた、可愛がってやる」

 先端を咥えられてきつく吸われ、何度目か分からない絶頂に震えて秘所に穿たれたままの指を搾る。
 ぐったりと力を失くし、項垂れた口元から唾液も流れた。股間の筋が意志を無視して痙攣を放ち続ける。

「も……ゆるし……」
「気が済んだか?――ではこちらだ」
「ヒ…っ……ひぃ、ぁ」

 抽挿する義父の指が和馬の裡を抉り、まさぐり、体液にまみれたそこがぐちゅぐちゅと猥らに動いて身体の深部からまた、新たな快感を揺り起こす。
 下肢と同じく痙攣を続ける腹部の筋肉が引きつけを起こして止まらない。限界まで曲げた爪先が足の裏に向かって固まり慄えた。

「も……や……んん、いや……イけな…あぁ…く、くるし……んふぅ」

 断片的な哀願は啜り泣きと義父のねっとりとした口付けに掻き消される。

「悦いのか?ここが」
「ひっ、ひぃ、あ…ぁ、あっ……やだ、もぉ」

 嗜虐的な笑みで口付けた狂気の元凶が膝を付き、飽かず和馬のものを口に含む。

「ぁぁあっ!?あぁ、あぅ、んぁ」

 死ぬ。こんなことを続けられたら死ぬ。
 遠くなる意識で思った。
 恐怖と痛みと、快楽にまみれてこのまま死ぬのだ。


――死んでよ!


 叫び続けた女ではなく、今、義父の手で。

「は………は………」

 和馬から生命そのものを搾り取るように執拗な口淫を続けていた輝一朗は離れていた。
 腕と脚とを締め付けていたネクタイが解かれ、ベルトも外される。ビクビクと震えが奔るのはどこなのかもう分からない。倦怠感に押し潰されそうな身体が重くて顔も上げられない。

「おいで、カズヤ」

 呼吸が落ち着かないどころか、まともな思考も視界も戻らない和馬だが、無意識に動いて身体を前に出す。
 拘束されていた左脚はベルトによってできた擦過傷が痛むだけだったが、窮屈に折りたたまれていた右脚が言うことを聞かなかった。

 椅子とベッドの義父との間にくずおれた和馬の目前に、ぬら光る怒張が差し出される。乾きを知らない涙が溢れ、それを拭いもせずに唇を近付けた。

「口じゃない」

 落とされた言葉を理解したくなくて視線だけ上げれば、義父は自身の膝を示し、ここへ乗れと仕草で命じる。

「おいで」

 首を振ると涙が散った。

「きなさい」
「ゆるし――赦して下さい」

 正常な意識が戻り、頼りなく震える上腕を掴む義父の表情は柔らかい。

「ペナルティだな。イエローカードも随分たまった」

 和馬にとっては狂気の笑みだった。
 立ち上がって椅子に崩れ、それでも腕を取り戻して無事な左脚で身体を伸ばし、ドアに飛びついた。
 焦りと怯えで鍵を開けるのに手間取るが、ドアを開けて廊下に転がり出ることに成功する。

 怖い。今、あんなものに貫かれたらどうなってしまうか分からない。
 違う。あれを受け容れたら、義父と一度でも繋がれば、慧は。慧はきっと赦してくれない。
 だから、駄目。あれから逃げなきゃ駄目だ。
 本能で義父の身体から逃れようと、和馬は進んだ。

「鬼ごっこか。可愛い遊びだ」

 追ってくる鬼の足取りはゆるやかだった。和馬を追う気がないわけではなく、逃げられないのを分かっているかのように。

「はっ……はっ……けい……けい」

 闇と同化した廊下を、出た時とは逆にリビングから漏れる光を目指して進むが、脚も身体も思うように動いてくれない。

「う、く……けい…」
「腰が立たないか?」
「ひ――!」

 不気味な声は真後ろで上がった。振り返らない和馬は壁を頼りに膝立ちに身体を起こすが、左右どちらの膝も使い物にならなくて前に進めない。

「チェックメイト。キングに捕食されるポーン、かな?」
「い、やだ。嫌です、けい――慧!」
「ナイトは来ない。それともあれの目の前でするのか?」

 それもいい、と上体を軽々抱き上げられて今度はリビングに引き摺られる。

「い、嫌っ、嫌です、嫌だ。行かない。嫌だ、放してくださ」
「それ以上、無駄な言葉を吐くな」

 義父に顎を掴まれた時、和馬の双眸が映したのは苛立ちを孕む酷薄な瞳ではなかった。

「っ慧―――!!」

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