アルファ貴公子のあまく意地悪な求婚

伽野せり

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甘い治療 4*

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 自分の反応と声が信じられなくて、けれどとめることもできなくて、陽斗は欲情に流されるまま、幼い子供のように駄々をこねてしまっていた。
「も、も、ヤだ、やだよぅ」

 ボトボトとこぼれる体液が、高梨の服を汚す。情けなくてまた涙がこぼれた。
 陽斗が滴らせた液体は、相手のシャツからボトムまで線を描いて染みを作っている。雫の終りは、高梨のちょうど股間を濡らしていた。

「…………」
 ハァハァと喘ぎながら、男の股を見る。するとそこはゆるく持ちあがり、服地の下に重量のある雄が首をもたげているのがわかった。 
 じっと見つめていると、高梨が頭を撫でてくる。

「よく頑張ったね」
「……服が」
「ああ、気にしなくていいよ」
「ちが、服の下が」
「うん?」
 陽斗は俯いたままたずねた。

「高梨さんも、したいの?」
 自分が喘いでるところを見て、この人も兆したのか。
「いや。僕はいいよ」
「……どうして」

 高梨が陽斗の髪にキスをする。
「これは君のための治療だから」
「……」
 ああ、そうなのか、と少しガッカリする思いでその言葉をきいた。
 
 陽斗が発情していないから。だからしたくなるほどの興奮は得られていないのだ。
 彼はまだ理性が働いているから踏みとどまれている。発情していない陽斗にさほどオメガの魅力を感じていないとも考えられる。

 どちらにせよ、我を忘れて襲いかかるほどの欲望は生じていないのだ。
 こっちは死ぬほど喘がされたってのに。  

「大丈夫?」
 まだ硬い陽斗の茎を、そっとさすりながらきいてくる。
「……ん」
 陽斗は無理に口元をあげた。

「俺のモノ、丈夫だから」
 強がりな冗談で、暗くなりそうな気分を流す。
「ならまだできるかな」
「うん。できるし」

 正気に戻ったら、軽口も言えるようになる。ちょっと挑発するような言葉までさらりと出る。快楽に我慢強いたちではなかったが、意地っ張りな性格ではあった。 
    
「そうか。君は男らしいね」
 高梨は微笑んで陽斗をほめた。 
「じゃあ、もう少し強く刺激してみよう」 
 
 そうしてその夜も、前日と同じく容赦なく責め立てられた。前からも後ろからも刺激を与えられて、陽斗はもだえ苦しみながら快感の嵐に振り回された。何度も達して、雫が透明になるまで吐精させられて、最後は泣きながらもう許してと訴えた。

 意識が朦朧としたころにやっと解放されて、シーツに横たえられる。声も嗄れはてて喉が痛かった。
「……高梨さん」
「うん」

 陽斗の濡れた身体を拭って、上がけをかけながら高梨が答える。
「俺、フェロ、モン、……出てた?」
 高梨は陽斗の頬をそっと撫でた。

「いや」
「…………そか」
 何でなんだろう。あんなにたくさん感じて、達ったのに。

 疲れと悔しさで気持ちが沈む。
 唇を噛みしめた陽斗に、高梨が口の端もゆるゆるとさする。
 優しい仕草に、失望を抱えたまま、落ちるように眠りに入っていった。
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