42 / 78
甘い治療 4*
しおりを挟む
自分の反応と声が信じられなくて、けれどとめることもできなくて、陽斗は欲情に流されるまま、幼い子供のように駄々をこねてしまっていた。
「も、も、ヤだ、やだよぅ」
ボトボトとこぼれる体液が、高梨の服を汚す。情けなくてまた涙がこぼれた。
陽斗が滴らせた液体は、相手のシャツからボトムまで線を描いて染みを作っている。雫の終りは、高梨のちょうど股間を濡らしていた。
「…………」
ハァハァと喘ぎながら、男の股を見る。するとそこはゆるく持ちあがり、服地の下に重量のある雄が首をもたげているのがわかった。
じっと見つめていると、高梨が頭を撫でてくる。
「よく頑張ったね」
「……服が」
「ああ、気にしなくていいよ」
「ちが、服の下が」
「うん?」
陽斗は俯いたままたずねた。
「高梨さんも、したいの?」
自分が喘いでるところを見て、この人も兆したのか。
「いや。僕はいいよ」
「……どうして」
高梨が陽斗の髪にキスをする。
「これは君のための治療だから」
「……」
ああ、そうなのか、と少しガッカリする思いでその言葉をきいた。
陽斗が発情していないから。だからしたくなるほどの興奮は得られていないのだ。
彼はまだ理性が働いているから踏みとどまれている。発情していない陽斗にさほどオメガの魅力を感じていないとも考えられる。
どちらにせよ、我を忘れて襲いかかるほどの欲望は生じていないのだ。
こっちは死ぬほど喘がされたってのに。
「大丈夫?」
まだ硬い陽斗の茎を、そっとさすりながらきいてくる。
「……ん」
陽斗は無理に口元をあげた。
「俺のモノ、丈夫だから」
強がりな冗談で、暗くなりそうな気分を流す。
「ならまだできるかな」
「うん。できるし」
正気に戻ったら、軽口も言えるようになる。ちょっと挑発するような言葉までさらりと出る。快楽に我慢強いたちではなかったが、意地っ張りな性格ではあった。
「そうか。君は男らしいね」
高梨は微笑んで陽斗をほめた。
「じゃあ、もう少し強く刺激してみよう」
そうしてその夜も、前日と同じく容赦なく責め立てられた。前からも後ろからも刺激を与えられて、陽斗はもだえ苦しみながら快感の嵐に振り回された。何度も達して、雫が透明になるまで吐精させられて、最後は泣きながらもう許してと訴えた。
意識が朦朧としたころにやっと解放されて、シーツに横たえられる。声も嗄れはてて喉が痛かった。
「……高梨さん」
「うん」
陽斗の濡れた身体を拭って、上がけをかけながら高梨が答える。
「俺、フェロ、モン、……出てた?」
高梨は陽斗の頬をそっと撫でた。
「いや」
「…………そか」
何でなんだろう。あんなにたくさん感じて、達ったのに。
疲れと悔しさで気持ちが沈む。
唇を噛みしめた陽斗に、高梨が口の端もゆるゆるとさする。
優しい仕草に、失望を抱えたまま、落ちるように眠りに入っていった。
「も、も、ヤだ、やだよぅ」
ボトボトとこぼれる体液が、高梨の服を汚す。情けなくてまた涙がこぼれた。
陽斗が滴らせた液体は、相手のシャツからボトムまで線を描いて染みを作っている。雫の終りは、高梨のちょうど股間を濡らしていた。
「…………」
ハァハァと喘ぎながら、男の股を見る。するとそこはゆるく持ちあがり、服地の下に重量のある雄が首をもたげているのがわかった。
じっと見つめていると、高梨が頭を撫でてくる。
「よく頑張ったね」
「……服が」
「ああ、気にしなくていいよ」
「ちが、服の下が」
「うん?」
陽斗は俯いたままたずねた。
「高梨さんも、したいの?」
自分が喘いでるところを見て、この人も兆したのか。
「いや。僕はいいよ」
「……どうして」
高梨が陽斗の髪にキスをする。
「これは君のための治療だから」
「……」
ああ、そうなのか、と少しガッカリする思いでその言葉をきいた。
陽斗が発情していないから。だからしたくなるほどの興奮は得られていないのだ。
彼はまだ理性が働いているから踏みとどまれている。発情していない陽斗にさほどオメガの魅力を感じていないとも考えられる。
どちらにせよ、我を忘れて襲いかかるほどの欲望は生じていないのだ。
こっちは死ぬほど喘がされたってのに。
「大丈夫?」
まだ硬い陽斗の茎を、そっとさすりながらきいてくる。
「……ん」
陽斗は無理に口元をあげた。
「俺のモノ、丈夫だから」
強がりな冗談で、暗くなりそうな気分を流す。
「ならまだできるかな」
「うん。できるし」
正気に戻ったら、軽口も言えるようになる。ちょっと挑発するような言葉までさらりと出る。快楽に我慢強いたちではなかったが、意地っ張りな性格ではあった。
「そうか。君は男らしいね」
高梨は微笑んで陽斗をほめた。
「じゃあ、もう少し強く刺激してみよう」
そうしてその夜も、前日と同じく容赦なく責め立てられた。前からも後ろからも刺激を与えられて、陽斗はもだえ苦しみながら快感の嵐に振り回された。何度も達して、雫が透明になるまで吐精させられて、最後は泣きながらもう許してと訴えた。
意識が朦朧としたころにやっと解放されて、シーツに横たえられる。声も嗄れはてて喉が痛かった。
「……高梨さん」
「うん」
陽斗の濡れた身体を拭って、上がけをかけながら高梨が答える。
「俺、フェロ、モン、……出てた?」
高梨は陽斗の頬をそっと撫でた。
「いや」
「…………そか」
何でなんだろう。あんなにたくさん感じて、達ったのに。
疲れと悔しさで気持ちが沈む。
唇を噛みしめた陽斗に、高梨が口の端もゆるゆるとさする。
優しい仕草に、失望を抱えたまま、落ちるように眠りに入っていった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
獣人王と番の寵妃
沖田弥子
BL
オメガの天は舞手として、獣人王の後宮に参内する。だがそれは妃になるためではなく、幼い頃に翡翠の欠片を授けてくれた獣人を捜すためだった。宴で粗相をした天を、エドと名乗るアルファの獣人が庇ってくれた。彼に不埒な真似をされて戸惑うが、後日川辺でふたりは再会を果たす。以来、王以外の獣人と会うことは罪と知りながらも逢瀬を重ねる。エドに灯籠流しの夜に会おうと告げられ、それを最後にしようと決めるが、逢引きが告発されてしまう。天は懲罰として刑務庭送りになり――
メビウスの輪を超えて 【カフェのマスター・アルファ×全てを失った少年・オメガ。 君の心を、私は温めてあげられるんだろうか】
大波小波
BL
梅ヶ谷 早紀(うめがや さき)は、18歳のオメガ少年だ。
愛らしい抜群のルックスに加え、素直で朗らか。
大人に背伸びしたがる、ちょっぴり生意気な一面も持っている。
裕福な家庭に生まれ、なに不自由なく育った彼は、学園の人気者だった。
ある日、早紀は友人たちと気まぐれに入った『カフェ・メビウス』で、マスターの弓月 衛(ゆづき まもる)と出会う。
32歳と、早紀より一回り以上も年上の衛は、落ち着いた雰囲気を持つ大人のアルファ男性だ。
どこかミステリアスな彼をもっと知りたい早紀は、それから毎日のようにメビウスに通うようになった。
ところが早紀の父・紀明(のりあき)が、重役たちの背信により取締役の座から降ろされてしまう。
高額の借金まで背負わされた父は、借金取りの手から早紀を隠すため、彼を衛に託した。
『私は、早紀を信頼のおける人間に、預けたいのです。隠しておきたいのです』
『再びお会いした時には、早紀くんの淹れたコーヒーが出せるようにしておきます』
あの笑顔を、失くしたくない。
伸びやかなあの心を、壊したくない。
衛は、その一心で覚悟を決めたのだ。
ひとつ屋根の下に住むことになった、アルファの衛とオメガの早紀。
波乱含みの同棲生活が、有無を言わさず始まった……!
宵の月
古紫汐桜
BL
Ωとして生を受けた鵜森月夜は、村で代々伝わるしきたりにより、幼いうちに相楽家へ召し取られ、相楽家の次期当主であり、αの相楽恭弥と番になる事を決められていた。
愛の無い関係に絶望していた頃、兄弟校から交換学生の日浦太陽に出会う。
日浦太陽は、月夜に「自分が運命の番だ」と猛アタックして来て……。
2人の間で揺れる月夜が出す答えは一体……
変異型Ωは鉄壁の貞操
田中 乃那加
BL
変異型――それは初めての性行為相手によってバースが決まってしまう突然変異種のこと。
男子大学生の金城 奏汰(かなしろ かなた)は変異型。
もしαに抱かれたら【Ω】に、βやΩを抱けば【β】に定着する。
奏汰はαが大嫌い、そして絶対にΩにはなりたくない。夢はもちろん、βの可愛いカノジョをつくり幸せな家庭を築くこと。
だから護身術を身につけ、さらに防犯グッズを持ち歩いていた。
ある日の歓楽街にて、β女性にからんでいたタチの悪い酔っ払いを次から次へとやっつける。
それを見た高校生、名張 龍也(なばり たつや)に一目惚れされることに。
当然突っぱねる奏汰と引かない龍也。
抱かれたくない男は貞操を守りきり、βのカノジョが出来るのか!?
オメガの香り
みこと
BL
高校の同級生だったベータの樹里とアルファ慎一郎は友人として過ごしていた。
ところがある日、樹里の体に異変が起きて…。
オメガバースです。
ある事件がきっかけで離れ離れになってしまった二人がもう一度出会い、結ばれるまでの話です。
大きなハプニングはありません。
短編です。
視点は章によって樹里と慎一郎とで変わりますが、読めば分かると思いますで記載しません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる