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志島くんの白いアレ(1)
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志島くんの顔は怖い。
「先輩、私ちょっとお手洗い行ってきますね」
隣の席の後輩が十分前に行ったにも関わらずまたトイレに行くという。昼に食べたモノが悪かったのかなと思ったけど、その理由はすぐに違うと分かった。
「すいません。ちょっといいですか」
声をかけられ顔を上げると、志島くんが立っていた。
眉間に皺を寄せ眼光をギラリと光らせ、背の高い彼に見下ろされる。
おう、ちょっと顔貸せや。そんな台詞がとてもよく似合う。
「あ、志島くん。どうしたの?」
「川村。悪い、これの書き方が分かんなくて。ちょっと聞いていいか?」
声も低くドスが利いている。
ハスキーなんて可愛いもので、デスボイスと表現して然るべきだ。
「いいよいいよ。ああ、これはね」
志島くんは背が高くて身体つきもゴツゴツしてて、見た感じものすごく怖い。どこぞの組員だと言われたらやっぱりねと納得してしまうほどに怖い。後輩が総務課に近付いてくる志島くんを見て、十分前に入ったにもかかわらずまたトイレに行くと言って逃げ出したのも仕方ないかと許してしまうほどには怖い。
だけど私は彼と同期で何かと接する機会も多かったから、彼が全然怖い人じゃなく普通に真面目な人なんだって知っている。
だから怖くない。見た目は怖いなって思うけど、中身は全然怖くない。
年末調整のややこしい提出物を一つずつチェックして記入不足の所に付箋を貼ってあげると、志島くんは「ありがとう。助かった」と死闘を繰り広げた後かのような神妙な面持ちをして総務課から去って行った。そして入れ替わる様にトイレに行った後輩が帰ってくる。
「先輩すごいですね。あの人と普通に喋れるなんて。怖くないんですか?」
後輩は肩をすぼめてプルプルと震えていたので、安心させる為に「怖くないよ」と言ってあげた。
「大丈夫でしたか?身に覚えのないいちゃもんつけられて訳分かんないクレームとか言われませんでした?詫びのしるしに明日から購買でパン買ってこいとか言われませんでした?」
安心させるどころか余計心配させてしまったらしい。後輩は私の肩をガチリと掴み、怪我はないかとあちこち見てきた。
完全に学校の不良とパシリの関係だと思われている。
私は女子の平均より身長が低いし、よく大人しそうなモブタイプと言われるので、尚更そう見えたのかもしれない。
「大丈夫だよ。私、志島くんと同期だし」
私と志島くんの間に主従関係はないと伝えたくてそう言うと、後輩は目を丸くして驚いた。
「同期って、先輩入社五年目ですよね!?」
そっちか。
志島くんは院卒だから私の二個上だ。つまり29歳。
後輩いわく、うちの係長と同じくらいだと思っていたらしい。
ちなみに係長は来年中学生になる子供がいて、歳相応に身体のラインにたるみが生じ、生え際も後退してきている正真正銘のおじさんだ。
流石にアラフィフの係長と同年代だと思われるのは志島くんが可哀想だ。
彼は見た目が怖いってだけで、禿げてもないし太ってもない。老け顔って訳でもないのにそう見えるのは、彼の威厳に満ちたオーラのせいだろう。
志島くんの年齢と出身大学を教えてあげると、後輩はまた目を丸くして驚いた。
「えっ!あの人高校中退して喧嘩相手を半殺しにして服役したのち遠い親族だっていううちの社長を恐喝して無理くり入社したんじゃないんですか!?」
なんかもう後輩の志島くんに対するイメージが酷すぎて、どこから訂正していいのかわからない。
「先輩、私ちょっとお手洗い行ってきますね」
隣の席の後輩が十分前に行ったにも関わらずまたトイレに行くという。昼に食べたモノが悪かったのかなと思ったけど、その理由はすぐに違うと分かった。
「すいません。ちょっといいですか」
声をかけられ顔を上げると、志島くんが立っていた。
眉間に皺を寄せ眼光をギラリと光らせ、背の高い彼に見下ろされる。
おう、ちょっと顔貸せや。そんな台詞がとてもよく似合う。
「あ、志島くん。どうしたの?」
「川村。悪い、これの書き方が分かんなくて。ちょっと聞いていいか?」
声も低くドスが利いている。
ハスキーなんて可愛いもので、デスボイスと表現して然るべきだ。
「いいよいいよ。ああ、これはね」
志島くんは背が高くて身体つきもゴツゴツしてて、見た感じものすごく怖い。どこぞの組員だと言われたらやっぱりねと納得してしまうほどに怖い。後輩が総務課に近付いてくる志島くんを見て、十分前に入ったにもかかわらずまたトイレに行くと言って逃げ出したのも仕方ないかと許してしまうほどには怖い。
だけど私は彼と同期で何かと接する機会も多かったから、彼が全然怖い人じゃなく普通に真面目な人なんだって知っている。
だから怖くない。見た目は怖いなって思うけど、中身は全然怖くない。
年末調整のややこしい提出物を一つずつチェックして記入不足の所に付箋を貼ってあげると、志島くんは「ありがとう。助かった」と死闘を繰り広げた後かのような神妙な面持ちをして総務課から去って行った。そして入れ替わる様にトイレに行った後輩が帰ってくる。
「先輩すごいですね。あの人と普通に喋れるなんて。怖くないんですか?」
後輩は肩をすぼめてプルプルと震えていたので、安心させる為に「怖くないよ」と言ってあげた。
「大丈夫でしたか?身に覚えのないいちゃもんつけられて訳分かんないクレームとか言われませんでした?詫びのしるしに明日から購買でパン買ってこいとか言われませんでした?」
安心させるどころか余計心配させてしまったらしい。後輩は私の肩をガチリと掴み、怪我はないかとあちこち見てきた。
完全に学校の不良とパシリの関係だと思われている。
私は女子の平均より身長が低いし、よく大人しそうなモブタイプと言われるので、尚更そう見えたのかもしれない。
「大丈夫だよ。私、志島くんと同期だし」
私と志島くんの間に主従関係はないと伝えたくてそう言うと、後輩は目を丸くして驚いた。
「同期って、先輩入社五年目ですよね!?」
そっちか。
志島くんは院卒だから私の二個上だ。つまり29歳。
後輩いわく、うちの係長と同じくらいだと思っていたらしい。
ちなみに係長は来年中学生になる子供がいて、歳相応に身体のラインにたるみが生じ、生え際も後退してきている正真正銘のおじさんだ。
流石にアラフィフの係長と同年代だと思われるのは志島くんが可哀想だ。
彼は見た目が怖いってだけで、禿げてもないし太ってもない。老け顔って訳でもないのにそう見えるのは、彼の威厳に満ちたオーラのせいだろう。
志島くんの年齢と出身大学を教えてあげると、後輩はまた目を丸くして驚いた。
「えっ!あの人高校中退して喧嘩相手を半殺しにして服役したのち遠い親族だっていううちの社長を恐喝して無理くり入社したんじゃないんですか!?」
なんかもう後輩の志島くんに対するイメージが酷すぎて、どこから訂正していいのかわからない。
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