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童貞は動揺する
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「やめろ小田島。段取り下手くそにも程があるぞ」
「…はぇ?」
「ちょ、一回退け」
「あ、はい」
言われるがまま身体を離すと、寝そべっていた青島もムクリと身体を起こした。乱れた髪をかき上げ横に流すその仕草が、妙に様になっているのは気のせいか。いつもの青島からはとても考えられない。
……つーか、誰!?
この人誰!?え!?今、何て言った!?
「はあ、これだから童貞は」
「は!?」
「いや、今まで食ってきた童貞の中でもトップクラスかな。残念な方で」
「…っ!?」
言葉が喉の奥に詰まったままパクパクと口だけ動かせば、そんな俺を見て青島が笑った。めちゃくそに笑った。
誰だ、これは。
目の前にいる女の豹変ぶりに、頭がついていかない。
動揺を隠しきれずに固まる俺を見て、青島がさらに笑みを深める。そこにいつものオドオドキョドキョドしたものは一切見受けられない。むしろ反対に、自信?のようなものが窺える。満ち溢れている。
もう一度言わせてくれ。
お前は、誰だ!?君の名は!?
「段取りもムード作りもテクも、下手くそすぎて話にならんぞ小田島よ」
「な、なにいって」
「あーあ、自粛ムードのせいでここ最近全然相手見つかんなくって、仕っ方なく小田島の誘いに乗ってやったのに。イキッた童貞に丸め込まれちゃう処女演じるのも面白そうだからたまにはいいかも~なんて思ってたら……予想の上を行く下手さ!かつ、気遣いのなさ!残念通り越して、最低だったぞ小田島よ」
「…み、みれい?」
「あーそれ、勝手に名前呼び捨てにしないでもらえます?ゾワゾワするから」
青島が自分の二の腕を抱えて、ゾワゾワを表現する。
「つ、つーかお前!なんだよ、そのキャラ!いつもの青島はどこ行った!?」
「うっさいなあ、近くで大きな声出さないでくれます?そんなのあんたに言わなきゃいけない義理なんてないんですけど~。が、教えてやろう。こっちが素の私だ。あ、もうわかってると思うけど私、処女じゃないよ?目論見外れて残念だったね、童貞くん」
「ど!!!さっ(きからお前言いたいこといいやがっ)て!(俺、童貞)じゃねぇし!!」
「あっはっは!否定しきれてないしウケる~」
ケラケラと腹を抱えて(何なら涙流して)笑い転げる青島。そして、蒸気機関車だったら石炭入れまくってパワー全開絶えず蒸気を噴き出しまくっているだろう俺。この例えで伝わるだろうか、今の俺の心境が。
地味系処女かと思ったらまさかのイケイケ系非処女。いや、さっきの口ぶりからすると超肉食系ヤリマンビッチ女なのかもしれない。目の前にいる青島は。
だとすると今の状況、実にヤバい。完全に立場が逆転してしまっているし、この女、少なくとも(童貞の)俺よりははるかに場慣れしている。
そんな経験豊富な女と、果たして俺はセックスできるのか……?
さっきの時点で青島が過去に相手してきた童貞と比較されてしまった(そして誠に遺憾だが過去最低評価をいただてしまった)というのに、更に先へと行為を進められるのか……?
いや、青島はもう俺とセックスする気はないのでは……イキッた童貞に丸め込まれちゃう処女を演じるのは、もうやめてしまい、今日はこのまま解散なのでは……
青島が顔を青くする俺に向けて、妖艶にほほ笑む。レベル99の淫魔かよ。
だめじゃん、絶対敵わないやつじゃん。レベル違いすぎて戦闘にならんやつじゃん、これ。
終わった。
今日、念願の童貞卒業を果たせないばかりか、もう一生卒業できる気がしない。無理だ。こんな辱めを受けてしまっては、二度と女性と性交しようとなんて思えない。勃つ気もしない。誰だ俺のことを不死身の小田島とか言ったやつは俺か。
肉体活動的には生きていても、社会的精神的生理的に死んだ。
俺は、石橋は叩いて叩いて叩いて叩いて絶対に絶対に絶~対に壊れないって確信してからじゃないと渡れないほどのビビり野郎のくせにプライドだけは人一倍高い男だって言ったろ?取り扱い注意のガラスのハートの持ち主なんだよ小田島は!
青島が俺を見つめたまま、自分の乱れた白シャツに手をかける。
終わった。これで本当に終わりだ。
さようなら今生。こんにちは来世。夢の童貞卒業は来世の俺に託すとしよう。
いっそのこと清々しい気持ちで目蓋を閉じようとした、その時。
俺の目に、信じられない光景が飛び込んできたのだった。
「…はぇ?」
「ちょ、一回退け」
「あ、はい」
言われるがまま身体を離すと、寝そべっていた青島もムクリと身体を起こした。乱れた髪をかき上げ横に流すその仕草が、妙に様になっているのは気のせいか。いつもの青島からはとても考えられない。
……つーか、誰!?
この人誰!?え!?今、何て言った!?
「はあ、これだから童貞は」
「は!?」
「いや、今まで食ってきた童貞の中でもトップクラスかな。残念な方で」
「…っ!?」
言葉が喉の奥に詰まったままパクパクと口だけ動かせば、そんな俺を見て青島が笑った。めちゃくそに笑った。
誰だ、これは。
目の前にいる女の豹変ぶりに、頭がついていかない。
動揺を隠しきれずに固まる俺を見て、青島がさらに笑みを深める。そこにいつものオドオドキョドキョドしたものは一切見受けられない。むしろ反対に、自信?のようなものが窺える。満ち溢れている。
もう一度言わせてくれ。
お前は、誰だ!?君の名は!?
「段取りもムード作りもテクも、下手くそすぎて話にならんぞ小田島よ」
「な、なにいって」
「あーあ、自粛ムードのせいでここ最近全然相手見つかんなくって、仕っ方なく小田島の誘いに乗ってやったのに。イキッた童貞に丸め込まれちゃう処女演じるのも面白そうだからたまにはいいかも~なんて思ってたら……予想の上を行く下手さ!かつ、気遣いのなさ!残念通り越して、最低だったぞ小田島よ」
「…み、みれい?」
「あーそれ、勝手に名前呼び捨てにしないでもらえます?ゾワゾワするから」
青島が自分の二の腕を抱えて、ゾワゾワを表現する。
「つ、つーかお前!なんだよ、そのキャラ!いつもの青島はどこ行った!?」
「うっさいなあ、近くで大きな声出さないでくれます?そんなのあんたに言わなきゃいけない義理なんてないんですけど~。が、教えてやろう。こっちが素の私だ。あ、もうわかってると思うけど私、処女じゃないよ?目論見外れて残念だったね、童貞くん」
「ど!!!さっ(きからお前言いたいこといいやがっ)て!(俺、童貞)じゃねぇし!!」
「あっはっは!否定しきれてないしウケる~」
ケラケラと腹を抱えて(何なら涙流して)笑い転げる青島。そして、蒸気機関車だったら石炭入れまくってパワー全開絶えず蒸気を噴き出しまくっているだろう俺。この例えで伝わるだろうか、今の俺の心境が。
地味系処女かと思ったらまさかのイケイケ系非処女。いや、さっきの口ぶりからすると超肉食系ヤリマンビッチ女なのかもしれない。目の前にいる青島は。
だとすると今の状況、実にヤバい。完全に立場が逆転してしまっているし、この女、少なくとも(童貞の)俺よりははるかに場慣れしている。
そんな経験豊富な女と、果たして俺はセックスできるのか……?
さっきの時点で青島が過去に相手してきた童貞と比較されてしまった(そして誠に遺憾だが過去最低評価をいただてしまった)というのに、更に先へと行為を進められるのか……?
いや、青島はもう俺とセックスする気はないのでは……イキッた童貞に丸め込まれちゃう処女を演じるのは、もうやめてしまい、今日はこのまま解散なのでは……
青島が顔を青くする俺に向けて、妖艶にほほ笑む。レベル99の淫魔かよ。
だめじゃん、絶対敵わないやつじゃん。レベル違いすぎて戦闘にならんやつじゃん、これ。
終わった。
今日、念願の童貞卒業を果たせないばかりか、もう一生卒業できる気がしない。無理だ。こんな辱めを受けてしまっては、二度と女性と性交しようとなんて思えない。勃つ気もしない。誰だ俺のことを不死身の小田島とか言ったやつは俺か。
肉体活動的には生きていても、社会的精神的生理的に死んだ。
俺は、石橋は叩いて叩いて叩いて叩いて絶対に絶対に絶~対に壊れないって確信してからじゃないと渡れないほどのビビり野郎のくせにプライドだけは人一倍高い男だって言ったろ?取り扱い注意のガラスのハートの持ち主なんだよ小田島は!
青島が俺を見つめたまま、自分の乱れた白シャツに手をかける。
終わった。これで本当に終わりだ。
さようなら今生。こんにちは来世。夢の童貞卒業は来世の俺に託すとしよう。
いっそのこと清々しい気持ちで目蓋を閉じようとした、その時。
俺の目に、信じられない光景が飛び込んできたのだった。
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