惚れたのは貴方じゃありません!!貴方のお父様ですっっ!!!

カイナルミ

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11 夢の中のお姫様(2) (???視点)

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子供の成長は早く副団長が団長へ昇格する頃には、心も容姿も美しい姫君に成長した。
団長になると流石にお姫様の護衛をする事が難しいと再び外されてしまう。団長となった男はお姫様の護衛が出来なくなるならば団長の席は要らないと再三言っていたにも関わらず、団長に任命されてしまった。


そして、お姫様の護衛最後の日が来てしまう。

 「姫様・・・。本日が最後の護衛任務にございます。ーーよろしくお願いします。」

部屋で紅茶を召し上がっていたお姫様は顔を上げると、団長となった男の顔を見上げた。

 「今までご苦労でした。それから団長就任おめでとう。貴方が団長に推薦されているにも関わらず蹴っていた様でしたからわたくしの護衛を外しましたの。これでわたくしも他の殿方ともっと遊べますわ。ーー貴方口煩いんだもの。貴方は家臣よ嫉妬ばかりして醜いったら無かったわ。」

 「ーー姫様どうなさったのですか?何故その様な嘘を・・・。」

 「嘘じゃないわよ。魔術師団のアンドレやオーラムとの噂聞いた事あるんでは無くて?あの噂は本当。たまに相手して貰っているのよ。」

お姫様には最近良くない噂があり、『魔術師団員と逢瀬を重ねている』と言ったものだった。しかし、長年恋人としても護衛としても付き添っていた男は全く噂を信じていなかった。お姫様の真意が何か分からず護衛任務に身が入らず何度も自分を戒める。
最後の護衛だったのにも関わらず気もそぞろになってしまい、任務を終えた後は後悔しか残らなかった。

そして団長の席に着いて1年経った頃、お姫様は何も告げずに隣国に嫁いで行った。


男は心の中の大切な部分を抉られ失った様な喪失感に苦悶の日々をその日から過ごす事になる。

 「団長~いつまでしょぼくれてるんですかぁ?そりゃ育ての親みたいな立ち位置でしたけど、娘はいつか嫁に行くんですよ~?全く。陛下や王妃が喜んで送り出したのに他人の団長が落ち込むっておかしいですよ。さっさといつもの団長に戻って下さいね。」

 「ーーは?貴様に何が分かるというんだ。(姫様を幼い時から寂しい思いをさせていた国王夫妻は愛情のカケラも持っていないのだから、利益の為に喜んで娘であろうと差し出すだろう。)」

射殺す様な目で見られた部下は慌てて執務室を出ていった。

 「(姫様はどんな思いでこの国を立ったのだろう・・・。もしも憂いがあったのならば私に相談して欲しかったが……護衛を外された後、何度面会の打診をしても拒否されてしまった私には難しかったか・・・。私もよくよく諦めが悪いな。)」

男は以前までの優しさが無くなると冷淡になり、仕事は前団長の倍の仕事量をこなしていった。国王からの信頼は厚くなる一方で周りから人がどんどんと離れていった。

数年後、隣国は内乱の戦火に呑まれた。
国王は隣国に加勢しても利益が薄かった為、援軍を出さなかった。
男はお姫様を戦火から救い出す為に遠征に志願するつもりであったのに、国に裏切られたと感じた。

それからすぐ、男の愛したお姫様は亡くなった。
隣国の王族が全員亡くなった為、王妃になったお姫様の亡骸を自国で引き取る事になり男は亡骸になったお姫様を迎えに行く役目を願い出た。お姫様で間違い無いか確認を行うとお姫様は綺麗なドレスで今にも目を開きそうな、綺麗な顔であった。


男が確認をしたのを見届けた隣国の騎士が話しかけてきた。

 「これは貴方のハンカチでは無いですか?」
 
隣国の騎士が懐から布に包んだハンカチを取り出した。それはお姫様と秘密の恋人になった時に、お姫様の刺繍が入ったハンカチと入れ替わりに無くなった男のハンカチであった。

 「やはり貴方でしたか・・・。王妃様は背中を斬られて亡くなったのですが、守る様にこのハンカチ握りしめていました。王妃様に城が危険だから逃げる様にお伝えしたのですが、『この国に嫁いだ以上それは出来ない』と。そしてこうも言いました。『私は逃げないが心は逃げる事を許して欲しい。私が死んだ時は私が愛する者の元に帰りたい』と。その時は貴国の事を指しているのだとばかり思っていましたが、王妃様の手に強く握られたハンカチを見て貴国に心を預けた人がいるのだと分かりました。このハンカチは着替えさせる際に侍女が抜き取った物です。貴方の手で棺に入れて差し上げて下さい。」

騎士から受け取ったハンカチは血や埃で汚れていた。
ずっと男の事を想っていてくれた事、お姫様は変わらず自分の事を気遣ってくれた優しいお姫様であった事が嬉しくて、もう笑いかけてくれない事が悲しくて、話したい事が山ほどあったのにそれが永遠にできない事が虚しくて男はハンカチを握りしめお姫様の亡骸に縋りつき咽び泣いた。


男はお姫様の葬儀に参列したのち、お姫様を見殺しにした国にそのまま仕える気にはなれず近衛騎士団の職を辞した。

男は王都から出て旅に出た。お姫様が隣国に嫁いで行っても貰ったリボンやハンカチを処分する事が出来ず、今まで大切に保管していた。それを持ってお姫様に見せたかった場所を巡って行く。




男は一度お姫様のお墓に花を添える為に帰国した後、二度と母国に戻ることは無かった。



♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎




 「ーーっっ!!」

ギルベルトはまた目覚めが悪く、頭はぐらぐらする。吐き気もして気分が悪く、汗で濡れ気持ち悪いのに起きる気力も出ない。
ベッドの上で気持ちを整える為にそのまま目を閉じた。なんとか起きれるまで回復したギルベルトは顔を手で覆うと、そこで初めて自分が涙を流していた事に気が付いた。


 「・・・置いていかない。1人にしない。寂しい思いも、悲しい思いもさせない。」

ギルベルトが呟いた言葉は静かな部屋には大きく聞こえた。






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