【一章完結】宝箱に転生してしまった!!・・・愛犬が。ーーえ?俺は転移して来たただの一般人です。

カイナルミ

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第2章 魔王と聖女

26 金貨5枚の戦い

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 あ、ヤバいそろそろ関節が・・・。
ずっとマリアを膝に乗せて同じ体勢だったので、流石に身体の関節が固まって痛くなって来た。セイが休憩はまだなのかと思考がループし始めて少し経った頃、やっと幌馬車が停車した。
どうやらどこかに着いたらしいが、良い円座が欲しいと心底思った移動だった・・・。


「みんなお疲れ様。このヴァイ町で今日一泊してから王都にそのまま向かう為の中継地点だ。必要な物があったらここで買っておきなさい」

 ーーーー買い物の話っ!?タイミング来たーーーーー!!!
空気を読む男事、この俺はギルド長自ら金の話をするのを待っていたのだ!!!金貨5枚回収戦の火蓋を切るKILLぅぅぅぅぅぅっっっっっっ!!!


「あのっ、俺この間の変質者との戦闘で金貨5枚使って戦闘に参加した全員に補助魔法使って貰ったんですけど、その時のって経費かなんかで返して貰えたりしませんかね?お恥ずかしい話なんですが俺、今無一文・・・お金食べ物少し買える程度しか持ってないんです」


 無一文と言った瞬間この世界に無い通貨じゃんと気付いてしれっと言い直す。まぁ異世界から来たってバレても良いんだけど、万が一知識を国に提供しろとか言われて馬車馬の如く働かせられるかも知れないしな。用心に越した事はない。


 セイは抱っこしていたマリアに顔を近付け、少し肩を落とし寂しそうにする。

『秘技!!可愛いものを盾にして断り難くする!!』相手も可愛いと思うものでないと無理だが、その点はマリアの可愛さは両方の性を超越している感が否めない程なのでクリアしている!!さぁ!!!俺に金貨5枚を寄越せ!!!貸した訳じゃないけど貸した様なもんだ!!金の貸し借り不和のもとって言うじゃん?
・・・・・・まさか俺の称号も【シロの銭ゲバな飼い主】とかになんない・・・よ、な?



 若干称号の心配はするものの、先立つものは金だと称号の心配は脳の隅に押しやった。なんせ今は金貨5枚を回収する為の戦の最中だ。余計な事を考えていては足をすくわれる・・・奴の銭ゲバ戦闘指数は未知数・・・。しかも相手は商業ギルド長だからな。ミラ以上の守銭奴の可能性は十分あるから隙を見せるわけにはいかない!!隙を少しでも見せた時点で俺の数少ない銅貨や銀貨すら、巻き上げてくる可能性すらある。


「そう言えば、ミラさんの補助魔法はお金を払えば上級魔法に変換できる上に、全員に一気に掛けられるんでしたね?確かに私もあの時恩恵を授かったので助かりました。勿論経費で落とせるでしょう。しかし、王都に着いてからの申請になるのですが・・・それでは遅いですよね。うーん、私も持ち合わせもほとんど無いのでこの町の商業ギルドで私個人のお金を一旦お貸しするという形でどうでしょうか?」

「え?セイさんってごんドラとか魔飛竜とか色々な魔物回収していませんでしたっけ?私、それ売ってお買い物する気満々だったんですけど?」

「あっ!!そう言えばっっ!!ギルド長金貨5枚王都でお願いします!!」

 セイはこの時内心焦っていた。商業ギルド長が金を貸すと言った時点で絶対利子取るんだろ!?と、暴利を貪る高利貸しのイメージを勝手に抱いた為である。
実際にはギルド長は利子など一切考えていなかった。
商業ギルド長は金銭の扱いには厳しいが、必要な経費はきちんと対価を国に申請して、びた一文まける事無く請求する国にとって金に煩い男なのだ。故に石橋を叩き割る慎重さを時折発揮させるセイは全く意味のない戦いを一人でしていた事になる。
彼が長をしている商業ギルド支部はこの世界で珍しいかなりホワイトな職場であった。


「ギルド長も素材いるなら一緒に冒険者ギルド来てくださいね~」
「ミラ、運んだのセイだから均等分けダメだからな?分かってんだろうなぁ?」
「わっ分かってますってぇ~シロちゃん分もセイさんにいれますからぁっ!!」


 信用ないなぁとむくれているが、絶対アクスが言ってくれなかったら均等だっただろう・・・。アクスとギルド長だけなら均等で全く問題なかったが、俺が稼いだ金は殆どミラに流れるだろう予感がするので貰えるもんは1銅貨でも多く貰わなければと思っている。
信頼と安心の為にお金を預けても、その金が戻ってこないのがミラATMなのだ。どちらかと言えば賽銭箱かも知れないな・・・。補助魔法を対価に貰ってはいるけど、それを俺が払ってミラに全員分掛けて貰うって俺だけ損してるよね?んー・・・この件についてはみんなで膝を突き合わせて話し合いたい案件である。


「セイさぁ~んっ♪行きましょう~♪」

 ぎゅむっとミラに腕を掴まれ柔らかい物が押しつけられ、驚いて危うくシロを落としそうになった。ちょっとマジで童貞で無くてもそれはやめろ。いくら銭ゲバ娘でも緊張するんだからな!

「じゃあリーダー俺ら一旦ギルド行ってくるんで」
「うん!じゃあ僕たちは先に宿屋に行って部屋取っておくね~」


 バイバイと手を振る仕草を猫のぬいぐるみカルトでしてみせるマリア。やはり可愛いは正義っていうのは間違いないと思う。シロもマリアも正義級に可愛い。はぁー、これ世界戻っても彼女出来ないだろ。マリアは1番可愛いけどまぁミラもユリアナもかなり顔良いもんな~。けど、マリアは男で性格に難ある感じだし、ミラは守銭奴だし、ユリアナは痴女だしな・・・。まともなアクスも男だし・・・。やっぱ俺女難の相でもあるのか?

 ため息を心の中で深い吐いた後、この町のギルドの場所をカックスギルド長に聞いたら自分も用があると案内してくれた。ギルド長何も言わないけどやっぱ素材欲しいのかな?一緒に戦ったんだから遠慮しなくて良いのに。


 少し歩くとインス町の冒険者ギルドと似通った建物が現れた。


「ここがヴァイ町の冒険者ギルドだ」

 カックスギルド長に案内され中に入ると、ここの町の冒険者ギルドには食堂は無く受付と掲示板に待つためのテーブルと椅子があるだけのシンプルな室内だった。夕方に近い為、既に報告する者などはほとんど残っていない為に残っている依頼を眺めている人達位である。
受付は若い男性職員と女性職員が座っていた。インス町の女性の受付に良い印象が無かったので男の方に行くことにした。


「あの、魔物の売却を行いたいんですけど」
「ん?素材の事だよね?査定するから出して貰って良いかな?それと代表して一人の冒険者カードを提出して下さい」

 役所の真面目な事務員さんの様な雰囲気の受付職員に言われるがまま魔飛竜が5体回収されていたので、それを取り敢えず全部シロから出した。
金ドラは絶滅した魔物という話だったので、王都のギルドで売れるか聞いて売れなかったら国に売ってみようという算段だ。国が買い取ってくれなくても貴族は珍しい物好きだろうから、貴族を当たって売り付けても良いと思っている。金持ち貴族ならインフルエンサーになりたい奴らばかりだろう。この世界は道楽が大して無いしな。しばらくミラの魔法で困らないくらいには金を貯められそうな気がする。


「え・・・あ、ギルド長呼んできますのでお待ちください!!!」

 受付の男性はカウンターに乗り切らず、床を覆い尽くした魔飛竜に顔を青ざめ階段を駆け上がっていった。隣の受付の女性は椅子をそろそろと遠ざけていた。顔色が悪いので魔飛竜が嫌いなのかも知れない。男性の受付にして正解だったな!


 階段を威風堂々と降りてきたのは、ガタイの良いこれぞ冒険者ギルド長といった風貌だ。やはりインス町のギルド長より馴染み感がある。


「・・・確かに魔飛竜だな・・・。これはこの間のインス町のヤツか?」

 え?誰かに聞いてんの独り言なの??まぁ誰かが答えてくれるだろう。

「おい、ガキ聞いてんだろうが。答えろ」

 え?俺なの!?!?俺じゃなくて良くね?俺めちゃくちゃ冒険者新参者なんですけど??なんならこの世界の新参者なんですけど!?!?昨日入った新人アルバイトに本社から視察に来たお偉いさんに職場説明案内させるくらいのレベルやぞ!?
周りに目をやってもみんな目を逸らしやがる。新人いびりかこのヤロー、覚えてろよ!!

「ガキ聞こえてねーのか?」

「何度も言わなくても聞こえていますよ。俺はガキじゃ無くて冒険者のセイと言いますイカついおっさん」

 ちょっとフラストレーション溜まったので発散させておく。シロも怒ってくれている様で銀色になった身体をプルプル震わせている。犬であれば『グルルルーーーーー』と唸っている状態である。


「ガハハハハッッッ!!そうだったな!!名乗って無かったな!!そいつはすまなかったな!!俺はヴァイ町冒険者ギルド長ロドリゲス・ベンツァーだ。セイ宜しくな!!」

 仁王立ちで大きい声で豪快に笑う所を見る限り悪い奴ではない様だ。シロも落ち着いた様で俺の腕の中で大人しくなっていた。間違いなくシロは大変良い子である。
イライラも治ったのでギルド長の話に戻る事にした。

「こちらこそ宜しくお願いします。その魔飛竜は仰った通りインス町で現れた魔飛竜です。出来ればこの5体全部買い取って欲しいんですけど無理そうでしたら、2体位でも大丈夫です。」
「いやいや、全部買い取る。こんだけ良い素材滅多に手に入らんからな。王都に持ってかれる前に買い取るに決まってるだろう?カックス、お前がいるっつー事は・・・ま、そういう事だよなぁ・・・仕方ねぇ。鑑定待ってろ」

「えぇ、是非お願いしますね?」

 ベンツァーギルド長はカックスギルド長に目をやると、小さく舌打ちして魔物を職員と回収して奥の部屋に入って行った。後ろにいたカックスギルド長見るとベンツァーに微笑みを向けていた。優しい微笑みではなく商人の微笑みであった。






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