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14.新しい門出

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メリッサさんの家を出て足早にある場所へ向かう。
離婚届を握りしめて無言で歩き続ける私に、エーリク様は何も言わずに付いてきてくださった。

私がその足で向かったのは教会だ。
離婚届を提出して早くカルロとの関係を決別したい。
本来なら夫婦で出すべきものだが、カルロの名前が記入してあるので離婚は成立するはずだ。

神父様に用紙を渡すと、神父様は斜め後ろに立つエーリク様を怪訝な目で見てから内容を確認した。
きっとエーリク様を離婚する夫だと勘違いしているのだろう…。
何だか申し訳無いが、聞かれてもいないのにわざわざ否定するのもおかしな気がして神父様が確認を終えるのを静かに待った。

「確かに確認した。本当に良いのか?」

「はい。お願い致します」

「良かろう。この決断をした二人に神の御加護があらん事を…」

神父様にそう言われて離婚は成立した。
これで晴れて自由の身となったのだ。


これでまた、1からスタートを切ろう。
そう思い晴れ晴れとした気持ちで帰路につくのだった。




エーリク様は店まで送り届けてくださった。

歩き続け、CLOSEの看板が掛けてある自分の店の扉をおもむろに開け店に入る。
店の扉が閉まった途端。
張り詰めていた緊張の糸が解けたのか、足がふらついてしまう。

よろけて転びそうになった私をすかさずエーリク様が両腕で受け止める。

「あっ…すみません…」
急いで離れようとエーリク様の胸を両手で押し返すがビクともしない。
むしろ私を抱き締める力が強くなる。

「色々と…大変でしたね。お疲れ様でした。頑張り…ましたね。とても格好良かったです。あ、女性に格好良いは失礼ですか…」

きっと、私の事を慰めようとしてくださっているのだろう。
夫が私を裏切っていたと知った時も涙が出なかったのに、エーリク様の優しさに涙腺が緩む。
悲しいのか、やるせない気持ちなのか、怒りなのか自分の涙の意味が分からないまま、少しの間、エーリク様の胸を借りて涙を流したのだった。

そしてしばらく涙を流した後。
エーリク様から少し離れる。

「エーリク様、情けない姿をお見せしてしまい申し訳ございません…。そして、今日は一緒に来て下さりありがとうございました。本当に心強く、また助かりました」

改めて礼を言う。
一人で行っていれば、あれ程強気ではいる事ができなかっただろう。


「いえ、少しでも役に立てたのなら良かったです。これからも元夫が何かをしてくるかもしれません。いつでも頼ってください」


「ありがとうございます。エーリク様…今日のお礼をさせて頂きたいのですが…その…」

王家御用達の護衛騎士様に護衛して貰ったのだ。
どれくらいの対価を支払えば良いのか見当もつかない。

「お礼なんて良いですよ。私から言い出した事ですので」

「そんな!そのようなわけにはいきません!」

「そうですか…?では……」

……と自分で言ったものの、こちらで用意できるだけの額か物か…。
少しだけ心配になり固唾を飲む。


「その…フルールさん!私と…!」

私と…!?

「友人になってくれませんかっ!?」


「へっ??」

何を要求されるのかと身構えていたが、エーリク様からの返答は実に意外なもので思わず気の抜けた返答をしてしまったのだった。



















∴次回、エーリク、他視点です。




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