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舞踏会

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 だけど……違うかもしれない。

「どうした、もうぼーっとしてるなら先に部屋に戻れ」

「だ、大丈夫です!」

 オリヴィエは慌てて、否定した。

 やっぱり、もしかしたら、以前のルーカスも、少しは残っているのかも。

 だって、今、笑った……とても優しい笑顔だった。

 すぐに仏頂面に戻ってしまったけれど、オリヴィエはとても嬉しかった。

「オリヴィエとは最終の打ち合わせがあるんでしょう? 私たちは先に失礼してもよろしいですか?」

 セルゲイの台詞に、えっ? とオリヴィエはルーカスに目を移した。

 無駄を嫌うルーカスなら、明日、馬車の中で打ち合わせれば充分だとでも言いそうだ。

 ルーカスは一瞬、息を呑んだように見えたが、慌てたように頷いた。

「そうだな、各自準備を済ませたら、あとは自由時間だ。お前たちも充分に休んで明日に備えろ」

「じゃあ俺たちはこれで。団長、お疲れ様です」

 ルーカスの言葉を引き取って、セルゲイは団員達に解散を告げた。

 ぞろぞろと6人が部屋を出ると、しん、と部屋は静まり返った。

「あの、打ち合わせとは、何でしょうか」

 オリヴィエは、おずおずとルーカスに問いかけた。

「どうした、随分緊張しているな」

 改めて目が合い、どきんと胸が跳ねる。

 朝見ても、夜見ても、まだ、慣れない。

 この世にこんなに完璧な姿形の男性がいるだろうか。

 オリヴィエは、ルーカスの端正な顔に圧倒された。

 整った眉に、切れ長の眼は少し意地悪そうに、目尻に向かい上がっている。

 すっと通った鼻筋に、意思の強そうな口元。

 どこを取っても美しくて、ため息が出そうだ。

 というか、どこまで行ってもオリヴィエの好み過ぎて、どんなに忘れようとしてもときめいてしまう。

 王子様らしくない、と感じたクールな態度も、時と共にオリヴィエの〝好み”に書き換えられた。

 こんなに疲れていても、どきどきと胸が高鳴るのだから重症だ。

「緊張しているつもりは……ないのですが」

 オリヴィエはルーカスから目を外して、俯いた。

「具合でも悪いのか?」

 心配そうな声が降ってくる。

(本当に、どうしてしまったのだろう)

「そうか……2人きりだからと心配するな。何もしない」

「!」

 オリヴィエは、弾かれたように顔を上げた。

(まさか、これは何かの罠?)

 どこか、いつもの棘がない。

 心を見透かされて、揶揄われているような気がする。

「な……何もってなんですか? 私そんなに子供じゃありませんから。お気遣いなく」

(あれ? 気を遣わないでって、何かして良いって意味に取られる?)

 オリヴィエは自分で言って、自分に疑問を投げかけた。

「いえ、違うんです! そう言う意味ではなくて……」

「そういう意味、とはどういう意味だ?」

 言葉尻を捕まえられ、オリヴィエはしまったと口を手で塞いだ。

 ルーカスは、意地悪をしている風でもない。

 本当に分からないようで、キョトンとした表情でこちらを見ている。

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