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舞踏会の裏側
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「選ばせてやると言ってるんだ。さっさと答えろ」
ルーカスは転がったハワードの腹部に足を振り下ろす。
ハワードは、今度は身体をくの字に折り曲げた。
だが、呼吸もままならず、小刻みに全身を震わせている。
ハワードの沈黙を、同意と受け取ったルーカスは再び足を蹴り下ろした。
ハワードはぴくぴくと体を痙攣させるのみで、動けない。
その胸ぐらを掴み、上体を引き起こす。
オリヴィエがほっとしたのも束の間だ。
ルーカスの様子が、ただ事ではない。
「答えないなら本当に殺すぞ。このケダモノが」
「レヴァン!」
オリヴィエの制止も届かない。
ルーカスはハワードの胸ぐらを掴んだまま、振りかぶった拳で殴りつける。
鈍い音が響く。ハワードは鼻血を吹いて、ぐったりと項垂れた。
「レヴァン! もういいでしょう」
慌てて駆け寄って、背を叩くが反応がない。
続けて振りかぶる拳に、オリヴィエは飛びついた。
「レヴァンシエル!」
両腕で、体ごとルーカスの拳を抱きしめる。
すらりとした体躯からは想像もできない怪力だった。が、離すまいと力を籠める。
「もう、やめて! 私は無事です!」
今度は耳元で叫ぶと、ようやくルーカスはオリヴィエを見た。
ぎらつく双眸に、戦慄が走る。
(こんな形相のルーカスを見るのは初めて)
冷たい以上に狂気を秘めた目に、オリヴィエは息を呑んだ。
けれど、怯んでいられない。
「それ以上やったら、本当に死んでしまいます。もう、充分です」
「あ……」
ルーカスの眼が、焦点を失ったかのように一瞬揺らいだ。
「大丈夫よ、レヴァン。助けてくれて、ありがとう」
ルーカスが何かを見失っている気がして、オリヴィエは強調して名前を呼んだ。
「……レイ。だが、こいつは、お前を」
ふっと、ルーカスの肩から力が抜けるのを見て取って、オリヴィエはルーカスの胸に飛び込む。
少し、気恥ずかしい。
だが、今はルーカスの注意をハワードから逸らさねば。
「怖かったわ、レヴァン。だから、お願い。私を抱きしめて……!」
思い切って、顔を胸に押し付けた。
ハワードにされてぞっとした時とは違う。
ルーカスの胸は温かくて、長らくこうしていたくなるから不思議だ。
「レイ……」
ルーカスは呟くと、ふっとハワードのシャツから手を離した。
握り絞めていた拳もゆっくりと下ろす。
どさっ、とハワードが地に転がった。
ルーカスは、空になった手で……。
オリヴィエを抱き締めてくれた。
「気付くのが遅くて、すまなかった」
「いえ……私も、油断していました。ごめんなさい……」
オリヴィエは自分から胸に飛び込んでおいて、不謹慎だと自覚した。
蕩けるような心地よさに、目を瞑りそうになる。
もう、何年もずっと、こうしてルーカスに甘えてみたかった。
今、このひと時だけ。レティーとしてでもいい。
もう少しだけ、このままでいさせて欲しい。
ルーカスは転がったハワードの腹部に足を振り下ろす。
ハワードは、今度は身体をくの字に折り曲げた。
だが、呼吸もままならず、小刻みに全身を震わせている。
ハワードの沈黙を、同意と受け取ったルーカスは再び足を蹴り下ろした。
ハワードはぴくぴくと体を痙攣させるのみで、動けない。
その胸ぐらを掴み、上体を引き起こす。
オリヴィエがほっとしたのも束の間だ。
ルーカスの様子が、ただ事ではない。
「答えないなら本当に殺すぞ。このケダモノが」
「レヴァン!」
オリヴィエの制止も届かない。
ルーカスはハワードの胸ぐらを掴んだまま、振りかぶった拳で殴りつける。
鈍い音が響く。ハワードは鼻血を吹いて、ぐったりと項垂れた。
「レヴァン! もういいでしょう」
慌てて駆け寄って、背を叩くが反応がない。
続けて振りかぶる拳に、オリヴィエは飛びついた。
「レヴァンシエル!」
両腕で、体ごとルーカスの拳を抱きしめる。
すらりとした体躯からは想像もできない怪力だった。が、離すまいと力を籠める。
「もう、やめて! 私は無事です!」
今度は耳元で叫ぶと、ようやくルーカスはオリヴィエを見た。
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けれど、怯んでいられない。
「それ以上やったら、本当に死んでしまいます。もう、充分です」
「あ……」
ルーカスの眼が、焦点を失ったかのように一瞬揺らいだ。
「大丈夫よ、レヴァン。助けてくれて、ありがとう」
ルーカスが何かを見失っている気がして、オリヴィエは強調して名前を呼んだ。
「……レイ。だが、こいつは、お前を」
ふっと、ルーカスの肩から力が抜けるのを見て取って、オリヴィエはルーカスの胸に飛び込む。
少し、気恥ずかしい。
だが、今はルーカスの注意をハワードから逸らさねば。
「怖かったわ、レヴァン。だから、お願い。私を抱きしめて……!」
思い切って、顔を胸に押し付けた。
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ルーカスの胸は温かくて、長らくこうしていたくなるから不思議だ。
「レイ……」
ルーカスは呟くと、ふっとハワードのシャツから手を離した。
握り絞めていた拳もゆっくりと下ろす。
どさっ、とハワードが地に転がった。
ルーカスは、空になった手で……。
オリヴィエを抱き締めてくれた。
「気付くのが遅くて、すまなかった」
「いえ……私も、油断していました。ごめんなさい……」
オリヴィエは自分から胸に飛び込んでおいて、不謹慎だと自覚した。
蕩けるような心地よさに、目を瞑りそうになる。
もう、何年もずっと、こうしてルーカスに甘えてみたかった。
今、このひと時だけ。レティーとしてでもいい。
もう少しだけ、このままでいさせて欲しい。
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