将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら

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陰謀

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「見て、ここのお店はリボンやレースが可愛い。あ、あの店は髪飾りが多いみたい」

 リリアが指さした先には、確かに色とりどりのリボンやレースが飾られていた。

「本当だわ。可愛いわね」

 リリアはどうやら、シャープな顔立ちの印象と裏腹に、乙女チックなセンスを持っているらしい。

「このお店は、色違いのワンピースも置いてるみたいよ。あ、あっちは靴屋さんね! さっき馬車を降りた時に看板を見てたでしょう? きっと可愛いのがあるわ」

「リリアは可愛いものが大好きなのね。私も、好きだけれど」

「うん! お洋服やお人形の可愛いものを見ると、幸せな気持ちになるよね。オリヴィエさんもそうなんでしょう? ここならきっと、気に入る服が見つかるよ」

「じゃあ、入ってみましょうか」

 リリアは迷いなく店に足を踏み入れた。わくわくしたその表情を見ていると、こちらまで楽しくなってくる。

 オリヴィエも後に続いた。

 店内には、いかにも女の子が好きそうな小物が所せましと並んでいる。

 レースのテーブルクロスや、フリルのついたエプロンに可愛らしい花柄のワンピース。

 至る箇所に少女趣味が散りばめられていたが、それでも他の店とは若干趣向が異なっていた。

 細部まで気を使った繊細な刺繍や生地の縫製、触れた時の滑らかな質感。

 それ故に皺の流れやシルエットがとてもきれいに出ている。

 オリヴィエが今まで身に着けていた衣装の趣とは違うけれど、ここで探すのも一興かと思われた。

 しかしリリアは、脇目もふらずに女性店員さんへ一直線に駆け寄る。

「すみません、このお店で一番可愛いワンピースをください」

 堂々とした物言いに、店員が驚くのも無理はない。オリヴィエは内心、慌てた。

「リリア、その要望は、ちょっと強引よ。抽象的過ぎるわ」

「何言ってるのオリヴィエさん。お店の人が、一番お店の中を良く知っているんだから、聞くのが一番でしょ」

「そ、そうかもしれないけれど」

 間違ってはいない。だが、可愛い、は形容詞だ。

 何を以って可愛いと感じるかは人それぞれで、同じ言葉でも求めているものが違う。

 オリヴィエは、店員とリリアを見比べた。

 店員は動揺を隠しきれていないが、それでも努めて冷静に対応しようとする。

「お嬢様、当店にはご覧の通り、いくつものお品物がございます。それに、バックヤードには陳列されていないデザインも。まずは、お好みから伺ってもよろしいですか? ワンピースをご所望のようですが」

「ええ、そう。このお店で一番可愛いのが欲しいの。この人に、似合うやつ」

 店員はまだ年若い。と言っても、オリヴィエよりは年上のようだ。

 二十歳か、それ未満かの妙齢だが、左手の薬指に指輪を嵌めていない。

 それくらいの年齢で、未婚であることは稀だが、仕事中には着けない主義なのかもしれない。

 店内の装飾とは裏腹に、すっきりとして、艶があるのに控え目な佇まいの女性だった。

 しかし、髪はきれいに整えられて一まとめにされており、耳元には一粒石のラピスラズリのイヤリングが煌めいている。

 ファッションには疎いが、この女性には好感が持てた。
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