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退魔の輝き
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「一度、死に、この世で、再び生を得たのです。それは、貴女が赤子としてこの世に生まれ落ちた時の定めでした。真の魂を目覚めさせるのに、一度生を終えなければならなかったのでしょう」
オルガノは以前と変わらず、淡々と解説を続けたが、オリヴィエにはまだ、理解できない。
「先ほど伺ったお話しと、今のお嬢さんの占いを結びつけるとそのように解釈できます。つまり魔獣の凶刃によって、お嬢さんは一度命を落としました。そして再度、使命を果たすための生を授かったのです」
「……ということは、つまり」
「貴女の運命の糸は、この先光り輝き、陰るところがない。つまり……」
「つまり、死の運命から解放されたってことですねっっ!??」
ばぁん!
オルガノが言い切る前に、ものすごい勢いで扉が開いた。
大声を上げながら飛び込んで来たのは、兄、クリストファーだ。
「お、お兄様! いきなり、失礼ですよ……」
「いやあ、申し訳ない。ついでに黙って立ち聞きしていた非礼も謝る。だが、私だって心配していたんだ。それが、こんな……こんなに嬉しいことがあるかっ。ああ、オルガノ様、ありがとうございます!!」
クリストファーは大して悪びれない様子で、オリヴィエとオルガノを包むように抱きしめた。
グループハグだ。
「お兄様、あまり乱暴にしては」
「私は大丈夫です。何もしていませんが、お兄様がお喜びになられて、大変結構だ」
ほっほっほ、とオルガノは人の好い笑顔を見せてくれた。
オリヴィエはクリストファーの乱入に、自らが喜ぶタイミングを逸してしまった。
「お兄様、落ち着いて……下にはまだ怪我をした人がたくさんいるはずです」
「ところが、騎士団員には怪我人が出ていないんだ。だから私もこうして様子を見に上がってこれたんだよ。あれだけ長時間に渡って凶悪な魔獣と対峙していたのに、オリヴィエを含め、一人も負傷者を出さなかった。正に奇跡だ!! ねえ、オルガノ様」
「ええ。私共は、宿舎内の怪我人の介抱に勤しんでおりました。ですがこちらの怪我人も軽症者ばかりで、騎士の皆様がお健やかならなによりです」
「オリヴィエも、嬉しいだろう? もう恐れなくていいんだ。そりゃ、いつかは誰にでもその時が訪れる。でも、無暗に、恐れる必要はないんだ。騎士団にこだわらず、……こだわらず、好きな……ことを、するといい」
うぐっ、と声に嗚咽が混じったので、オリヴィエは慌ててクリストファーを見上げた。
「お兄様! どうなさったの。どうして、お兄様が」
「うっ、オリヴィエはどんどん、成長して、美しくなって……い、いったいいつ、いなくなってしまうのか。不安でたまらなかったんだ。それが」
クリストファーは、精悍な眉根を寄せて、ぼたぼたと落涙した。
間を置かずして、くしゃっと顔をゆがませる。
「お兄様……」
「それがこんなに、嬉しい話があるか。私は、オリヴィエ……嬉しいんだ!!」
クリストファーは顔を掌で覆い、天井を仰ぐ。
オルガノは以前と変わらず、淡々と解説を続けたが、オリヴィエにはまだ、理解できない。
「先ほど伺ったお話しと、今のお嬢さんの占いを結びつけるとそのように解釈できます。つまり魔獣の凶刃によって、お嬢さんは一度命を落としました。そして再度、使命を果たすための生を授かったのです」
「……ということは、つまり」
「貴女の運命の糸は、この先光り輝き、陰るところがない。つまり……」
「つまり、死の運命から解放されたってことですねっっ!??」
ばぁん!
オルガノが言い切る前に、ものすごい勢いで扉が開いた。
大声を上げながら飛び込んで来たのは、兄、クリストファーだ。
「お、お兄様! いきなり、失礼ですよ……」
「いやあ、申し訳ない。ついでに黙って立ち聞きしていた非礼も謝る。だが、私だって心配していたんだ。それが、こんな……こんなに嬉しいことがあるかっ。ああ、オルガノ様、ありがとうございます!!」
クリストファーは大して悪びれない様子で、オリヴィエとオルガノを包むように抱きしめた。
グループハグだ。
「お兄様、あまり乱暴にしては」
「私は大丈夫です。何もしていませんが、お兄様がお喜びになられて、大変結構だ」
ほっほっほ、とオルガノは人の好い笑顔を見せてくれた。
オリヴィエはクリストファーの乱入に、自らが喜ぶタイミングを逸してしまった。
「お兄様、落ち着いて……下にはまだ怪我をした人がたくさんいるはずです」
「ところが、騎士団員には怪我人が出ていないんだ。だから私もこうして様子を見に上がってこれたんだよ。あれだけ長時間に渡って凶悪な魔獣と対峙していたのに、オリヴィエを含め、一人も負傷者を出さなかった。正に奇跡だ!! ねえ、オルガノ様」
「ええ。私共は、宿舎内の怪我人の介抱に勤しんでおりました。ですがこちらの怪我人も軽症者ばかりで、騎士の皆様がお健やかならなによりです」
「オリヴィエも、嬉しいだろう? もう恐れなくていいんだ。そりゃ、いつかは誰にでもその時が訪れる。でも、無暗に、恐れる必要はないんだ。騎士団にこだわらず、……こだわらず、好きな……ことを、するといい」
うぐっ、と声に嗚咽が混じったので、オリヴィエは慌ててクリストファーを見上げた。
「お兄様! どうなさったの。どうして、お兄様が」
「うっ、オリヴィエはどんどん、成長して、美しくなって……い、いったいいつ、いなくなってしまうのか。不安でたまらなかったんだ。それが」
クリストファーは、精悍な眉根を寄せて、ぼたぼたと落涙した。
間を置かずして、くしゃっと顔をゆがませる。
「お兄様……」
「それがこんなに、嬉しい話があるか。私は、オリヴィエ……嬉しいんだ!!」
クリストファーは顔を掌で覆い、天井を仰ぐ。
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