お飾りドールのあぶない日常 〜神の力と仲間は最強です〜

ケイソウ

文字の大きさ
12 / 38

11話 ポリス内見ツアー

しおりを挟む

 ステーションに到着。駐車場のそれぞれ空いているスペースに車を停めた。
 私は念のため眼鏡とマスクを着けて、來斗とは少し離れて付いて行く。

 ステーション内はかなり広い。朝から雑務に追われる者や、夜勤明けの者など人の動きが活発に見られる。若いオフィサーが來斗に挨拶をする。

「おはよう御座います。お疲れ様です」
 
「あ、東御あずみ警視おはよう御座います! フフッ」

「ああ、おはよう。お疲れ様」

 挨拶の二重返事は必要なのか? それにあの憧れの眼差しと、好きですアピールで來斗を見る女性オフィサー。警官といえども恋多き乙女、まあ頑張ってくれたまえ。
 
 ここは受付か、女性のオフィサーが多数見られる。訪ねる一般人への配慮か、印象は大分違うだろう。でも女性のオフィサーはかなりのやり手だ、私は何回か駐禁で叱られた。言葉は多少柔らかいが、眼はまったく笑っていない、躊躇ちゅうちょすらしない、ほんと凄い。メンズよ、頑張れ。

 來斗が2階を案内してくれる、いわゆる取調室とか専門機関の階だと言う。
 ならば直斗もこのエリアにいるんだろう。どれどれ、あいつの仕事ぶりでも観てやろうか、何課に配属されたのだろう。

「あっ、キーナだ! どうした、捕まったか?」

 さっそくお出ましだ。スーツ姿がなんとも微妙で、馬子にも衣装とはお世辞でも言えない。

「直斗、キーナに構うな、早く部署に戻れ」

 來斗が直斗を叱咤しったする。随分と弟には厳しい、それでも復職させてやったんだ、厳しくもなるか。

「キーナ、こっちだ。勝手にウロチョロするな」
 
「えっと……ああ、はい……」

 私まで怒られたじゃないか、バカ直斗。

「キーナここだよ、早く入って」

 ドアを開けると中は薄暗い資料室。なるほど、ここから昔を辿るんだな。

 桜ちゃんがトップになったキッカケは何だろう。やはり後を継いだ感は否めない。
 難しい事は分からないが、法とやらも多数決、裁決によって定められてきたはずだ。
 
 桜ちゃんは秩序を護るために、どう可否を決めているのだろう。独断と偏見、それとも昔の規則をそのままか。
 でもハンターが蔓延はびこるのはどうなんだろう、真面まともな商売とは程遠い。私が言えた立場ではないが。
 
 それより内部の権力争いだ。西側と東側だったか、誰と誰の領域だろう。

「なあ來斗、西と東って誰と誰よ」
 
「西側がゴッドファーザー、東側がゴッドマザー」
 
「いや、愛称じゃ分からないって……」
 
「あ、そうか。西側が西鎌琉二にしかたりゅうじ、東側が東御桜子あずみさくらこ、方角の東西ではなく、西鎌の西に、東御の東だ。分かりづらいよな」

 おっしゃる通りで。でも上手いこと東西に分かれたな、簡単明白よりはずっと面白い。

「この国全土を西側と東側に分けて、ポリスを配置しているんだよ。もちろん、オーナーはマザーだ」
 
「なるほど」
 
「分けたのもここ15年位前からの事だ、マザーも年には勝てないってなげいてたしな。ひとりで全土は流石にキツいだろ」
 
「フーン、そうか」

 セグメント。分割は必ずと言っていいほど問題が勃発する。桜ちゃんのことだ、それなりに信用できる相手とタイアップしてきたんだろうが、小ネズミ達が勝手に騒ぎ出したってところだろ。
 
 私は資料に目を通したり、來斗に経緯や内部事情を聞いていた。すると來斗がパタッと資料を閉じて席を立った。
 
「キーナ、下に西鎌の資料が送られてきているかもしれない、取りに行くついでに休憩しよう」
 
「タバコ吸える?」
 
「中庭ならな。ほら行くぞ」

 そう言って私の手を握る。來斗のこの手繋ぎの意図がどうにも理解できない。大の大人が仲良く手繋ぎって、しかもポリス内でだ。來斗の思考はどうなっているのか、落とし穴というよりブラックホールだろ、ほんと謎だよ。

 私達は手を繋いだまま下の階へ降りた。すると、來斗がパッと手を離して受付に入っていく。
 だからさ、見られたくないなら始めから手なんか繋ぐなよ、なんかムカつく。
 
 私はひとり待つ間、遠まきに來斗を観察した。私より背が高く、体格もガッチリ系で端正な顔立ち。
 当然と女性オフィサーが來斗に群がる、もうハーレムじゃん。恋人候補は選り取り見取り、他でも色々やってるんだろうなあ。

「キーナお待たせ。さ、中庭に行こう、ちょっと騒がしいかもしれないがな」

 私達は中庭の隅に備え付けてあるベンチに座った。來斗が近くにある自販機で珈琲を買って戻ってくると、どこからか騒がしい声が聞こえてきた。

「何かやってるのか? 声が聞こえるけど」

「ああ、練習だよ。すぐ隣りのグラウンドに、射撃場や格闘技を教える訓練所があるんだ」
 
「へぇ~、まあ体力勝負だからな」
 
「ほら珈琲。タバコ吸うんだろ?」
 
「ああ、ありがと。ハァ、早く帰りたい……」

 この無駄とも思える作業から早く抜け出したい。資料なんか見たところで、相手の本性が分かるはずもなく、このまったり感がむず痒い。

「どうした、疲れたか?」

 來斗が私の顔を覗いて訊く。

「私のやり方とは違うんでね、退屈なだけだ」
 
「やり方かあ――そうだよな、これはキーナが依頼された仕事で、俺は手助けだからな……」
 
「でも手伝ってくれるんだろ? なら調べ物は來斗に任せるよ、悪いけど先に帰る、後はよろしく」
 
「えっ……ちょっと待てよ、なら気分転換に練習場を見学してみるってのはどうだ?」

 練習場か、これは來斗のアビリティとキャパを見るには丁度いい。護る対象の力量を知れば、こちら側も過度な対処をしなくて済む。
 來斗が練習に加わるいい手段はないか、ちょっと煽ってみるか――

「來斗がお手本を見せてくれるなら行ってもいいけど、でもパソコン漬けで体は鈍って無理か」
 
「言ったなあ、よし、ついて来い」

 あゝなんてチョロい奴。良かった、多少阿保あほで。
 
 タバコを吸い終わると、來斗は私を即して訓練所へと向かった。若いオフィサー達が声を荒げて練習に励む。伝統的な投技、組手の応酬。
 私にはサッパリだが、これで強くなれるのかと少々疑問。何もしないよりはマシなんだろうが、さて、お手並み拝見といきましょうか。

 まず來斗のうんちくから始まった――
 
「体術は派手ではないが、受け身はいざって時に役に立つ、だから訓練する」

「ふ~ん、そうは見えないけど」
 
「見た目で判断するなよ。よーし、見せてやる」

 いいから早くやれよ。

「無理すんなよー」
 
 來斗が上着を脱いで道着をまとった。
 オフィサーに声を掛ける。若いオフィサーが戸惑う中、中堅が名乗りを挙げた。さあ、どうなる?

「警視、手加減はしませんよ、宜しいですね?」
 
「ああ、いいから始めろ」

 試合開始。足払い、投げを來斗は難なくかわす。相手も負けじと投技を連発、そこはスキありと、來斗が背負い投げで一本、試合終了。
 大したもんだ、体は鈍ってなさそう、合格。

「ハァ、どうだ? 俺もまだイケるなあ。さて次はキーナの番だ、退屈なんだろ?」

 しまった、忘れていた、この展開がある事を。しかし良い機会かもしれない、少しは私の強さを來斗にアピールしておこう。
 
 先に準備していた若いオフィサーに向かって、まずはごめなさいの意味で礼をする。

「じゃあ、頑張ってください」

 私がそういうと、相手はニヤリと笑って余裕を見せる。合図と同時に相手が掴み掛かってきた、なので私は相手の頭を押さえて防御する、リーチの差は結構役に立つ。そしてそのまま持ち上げて來斗に訊いた。

「來斗、これは反則か?」
 
「んー、そうだ、とも言えない」

 と、あやふやに返されたので、私は手を離して相手の胸ぐら掴んで片手で投げ飛ばした。相手は壁に激突して昏倒こんとうした。

「ハァ、だから頑張ってって言ったのに……」

 來斗達は呆然と立ちすくむ。マズい、ちょっとやり過ぎたようだ、ここは嘘も方便で逃げる。

「えっと、ちょっと用を思い出したから、悪いけど先に失礼するよ」
 
「えっ……お、おい、聞いてないぞ」
 
「資料は後で見るから、じゃあね」
 
「ちょっとキーナ、まったく……」

 機嫌を損ねたみたいだが、遊びは終わりだ。
 さて、ボディーガードは密着が基本だが、このステーション内なら來斗も安全だろう――

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

お姫様は死に、魔女様は目覚めた

悠十
恋愛
 とある大国に、小さいけれど豊かな国の姫君が側妃として嫁いだ。  しかし、離宮に案内されるも、離宮には侍女も衛兵も居ない。ベルを鳴らしても、人を呼んでも誰も来ず、姫君は長旅の疲れから眠り込んでしまう。  そして、深夜、姫君は目覚め、体の不調を感じた。そのまま気を失い、三度目覚め、三度気を失い、そして…… 「あ、あれ? えっ、なんで私、前の体に戻ってるわけ?」  姫君だった少女は、前世の魔女の体に魂が戻ってきていた。 「えっ、まさか、あのまま死んだ⁉」  魔女は慌てて遠見の水晶を覗き込む。自分の――姫君の体は、嫁いだ大国はいったいどうなっているのか知るために……

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】私が愛されるのを見ていなさい

芹澤紗凪
恋愛
虐げられた少女の、最も残酷で最も華麗な復讐劇。(全6話の予定) 公爵家で、天使の仮面を被った義理の妹、ララフィーナに全てを奪われたディディアラ。 絶望の淵で、彼女は一族に伝わる「血縁者の姿と入れ替わる」という特殊能力に目覚める。 ディディアラは、憎き義妹と入れ替わることを決意。 完璧な令嬢として振る舞いながら、自分を陥れた者たちを内側から崩壊させていく。  立場と顔が入れ替わった二人の少女が織りなす、壮絶なダークファンタジー。

処理中です...