お飾りドールのあぶない日常 〜神の力と仲間は最強です〜

ケイソウ

文字の大きさ
15 / 38

14話 ジャストモーメント

しおりを挟む

 あの後、腕を負傷した私を気遣って、來斗が車を運転すると言い張ったが、当然、特殊な車なので私以外は動かせない。なので來斗を助手席に乗せる事で了承してくれた。
 
 そういえばと、試しに触った事のないボタンを押してみた。すると何と言う事でしょう、自動運転に切り替わった。凄いと思いながらテンション高めでデッドに感謝する。
 横で來斗は驚きながらも、不安そうにハンドルから目を離さない。今度は誰もいない空き地で謎のボタンを制覇しようと思う。
 というか、始めから教えろメカニック野郎。

 車を無事に駐車場に停めて部屋に入る。ソファに座ると、救急箱を手に來斗が私の前にしゃがんだ。手当てをしながら擦り傷で済んで良かったと、來斗はポツリと言う。

「良し、終わりだ。ハァァ……」

 來斗が深い溜め息を吐きながら、私の膝に手を置いて顔を伏せた。

「お前が心配……ハグ、してもいいか?」
 
「ハグ? ええっと、いま必要?」
 
「うん、凄く必要」

 凄くと言われたら否定はできない。

「……あっそ、ならどうぞ」

 來斗は膝を着いたまま、私を引き寄せハグをする。しばし肩と肩を寄せる。

「なぁキーナ、特別なハグしてもいい?」

 私の返事を待たずに、來斗は私の頭の後ろに手を添えて、身体をギュッと密着させ強く抱きしめた。
 全身で來斗を感じる、鼓動が高まる――

「嫌じゃない? 苦しくない?」
 
「うん、嫌じゃない、い、いちいち聞くな」

 來斗の鼓動が伝わる。急にどうしたのか、腕の力を緩めない。

「來斗? どうした?」
 
「どうしよう、離したくない」
 
「うん、別にいいけど……」

 でもちょっとキツいなぁ、この体制――

「ずっと、永遠にだ」
 
「えっ? いや、さすがにそれは……」
 
「キーナ、結婚しよう。俺で手を打って欲しい」
 
「…………」
「…………?」
「…………ちょっと待て!」

 ジャストモーメント、異常事態発生だ。
 頭がパニックを起こす。こいつ今何つった?
 確か結婚とかって言ったよね?
 まさかの恋人すっ飛ばして夫婦って?
 何、スピード婚とか流行ってんの?

 何だよこれ、違う世界へ飛ばされた気分だ。しかしながら、私にも考える権利くらいあるよね?

「ど、どうした? 血迷ったか? ドッキリ?」
 
「血迷ってない、ドッキリって何?」

 意外と冷静な來斗、なんかムカつく。
 ドッキリは昔流行ったゲームみたいなものだ。今ネットで盛り上がってるとか。
 それはともかく、先ずは基本から――

「あ、あのさあ、私を女って、知ってる?」
 
「うん。初めて会った時に気づいた」

 あ、そういえばそうだった、私のバカ……。

「キーナから友達の提案をもらったとき、チャンスだと思った」
 
「えっと、チャンスって?」
 
「初めて恋に落ちたんだ。これは本物だって、逃したくないって思った。こんなに誰かを好きになることなんてなかったから、元々女性が苦手なんだよ」

 そうか、固まる理由は私が女性だからか。モテると色々あるんだろうなあ。
 それよりも、すっ飛ばした理由だ――

「あのさ、先ずはお試しで恋人からってのは?」
 
「ダメだ。キーナの気が変わるかもしれない、誰かに奪われるかもしれない、そんなの耐えられない」

 なるほど、結婚という最終兵器を私に搭載しようって魂胆か。ならば説得を――

「ほら、他に好きな人ができたりとかさ、私と別れたくなったとかさ、結婚したら言いたいことも言えなくなると思うんだよね?」
 
「俺はキーナに一目惚れしたんだ、一生涯、他の女性を好きになることは絶対にない。俺がキーナに別れるとか殺されても言わない」

 どんだけハイスペックな応え出してくるんだよ。
 しかも兄弟揃って怖いことを抜け抜けとまあ。
 頑固で一途だとは聞いたけど、ここまでとは。
 しからば――

「じゃあさ、私が遊び呆けて家にも帰らず仕事でフラフラと居なくなったら?」
 
「んー、それは困るなあ……疑いたくはないが」

 そこは否定しないのかよ。

「本当に私で良いの? 本当に好き? 得体の知れない奴なんだよ?」
 
「婆ちゃんに聞いた、でも俺には関係ない。今のキーナが好きなんだ、誰にも文句は言わせない」

 桜ちゃんが話したってことは、來斗を信じているからなんだろう。なら、私を受け入れてくれる來斗を信じたい、來斗の前では素直でいたい、私も來斗が好きだ、離れたくない。

「後悔しない?」
 
「キーナを選ばなかったことのほうがきっと後悔するね。俺を信じて付いて来てくれないか?」
 
「私も來斗が好き。よろしくお願いします」
 
「ホント? ああ凄く嬉しい! キーナありがとう、お前は俺が守る、大切な俺の嫁さん」

 やっと來斗の腕の力が抜けた。とはいえ、お互い無理な姿勢が祟ってか、あちこち痛くて動けない。
 來斗が膝を摩りながらぎこちなくソファに座る。

「イタタッ……ふぅ。キーナ、おいで」

 そう言って私の肩を抱く。そして私の顔を引き寄せる。

「俺から離れるな……キスしてもいい?」
 
「だ、だから聞くな……」
 
「キーナ、大好きだよ」

 來斗がそっと私の唇に唇を重ねた。柔らかい、温かい、素敵な感触、ずっと触れていたい。
 きっと來斗は初めてじゃないんだろう、そう思うとなんか悔しい。來斗にではなく、來斗の唇に触れた相手がだ。
 これが嫉妬心というものなのか、どことなく闇がありそうで少し怖い。
 
 しかしも、どんな場面であれ來斗の腹の虫はお邪魔虫でいたいらしい。

「グゥ~ッ、あ、ごめん……」

「アハハ! じゃあご飯にしよう」
 
「ああ、まずは腹ごしらえだ」

 ムードも色気もないふたりだけど、それが逆に居心地が良い、私は幸せ者だ。
 しかし、こんなにもスムーズに結ばれると何か起こりそうで、少し不安だ。

 気を取り直して私達はキッチンへ移動。カレーを作って皿にご飯を盛り、スプーンはコップの水の中。見事な連携プレー、未だ底レベルだけど。でもふたりで作る料理は格別だ。

 私が後片付けをして、來斗は風呂へ入った。疲れたのか、來斗はさっさと寝てしまった。
 私はベランダに出てタバコを吸う――

 自分の事ばかりではいられない。事件の謎解きをおさらいしよう。
 多分だが、私が桜ちゃんの恋人と勘違いをした奴がいる。そこでマザーが私を優遇するのではないかと考え私に狙いを定めた、とあの時は思ったんだが、いま冷静に考えてみると、私は随分と的外れな発想をしていたのかもしれない。
 
 奴らは私をジョーカーと知って襲ってきた、ならマザーが請負人に依頼したこと知っている、でもこの事を知るのは來斗と直斗だけだ。
 それに標的は來斗ではなく私だ、だとすると、他に理由があると考えるべきか――
 
 私はこれ以上ひとりで考えても答えは出ないと、風呂へ入って寝ることにした。
 
 さて寝るかと來斗の部屋の前で止まると、隣りの部屋のドアが少し開いているのに気づいた。
 覗いて見ると、部屋の中は綺麗に片付けられていて、新しいと思われるベッドが置かれていた。
 私の部屋かと思い、なら今日からこの部屋で寝ようと勝手に決めた。これで來斗も安心してゆっくり眠れる、そう思った。おやすみっと呟いて、ひとりで眠りに就いた。

 夜が明けて、私はいつものように早く起きた。ベランダへ出てイマイチの空気とタバコを吸う。
 そうだ、後で西側の資料を見せてもらおうと思っていると、來斗が「おはよう」と言いながら、私を後ろから優しく包む。

「キーナ、何であっちの部屋で寝たんだ」
 
「えっ? あれは私の部屋じゃないの?」
 
「そうだけど、結婚したんだから一緒に……寝る……のがだな、常識ってもんだろ」

 なんだよ、あれだけ一緒に寝るのを否定しておいて、今さら常識とかいわれてもねえ――

「ふ~ん。あっ、西側の資料を……
「そうだキーナ、今からステーションに行こう!」
 
 だから私の話しを最後まで聞きなさいよ。この朝からテンション高いのはこれからもずっと?

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

お姫様は死に、魔女様は目覚めた

悠十
恋愛
 とある大国に、小さいけれど豊かな国の姫君が側妃として嫁いだ。  しかし、離宮に案内されるも、離宮には侍女も衛兵も居ない。ベルを鳴らしても、人を呼んでも誰も来ず、姫君は長旅の疲れから眠り込んでしまう。  そして、深夜、姫君は目覚め、体の不調を感じた。そのまま気を失い、三度目覚め、三度気を失い、そして…… 「あ、あれ? えっ、なんで私、前の体に戻ってるわけ?」  姫君だった少女は、前世の魔女の体に魂が戻ってきていた。 「えっ、まさか、あのまま死んだ⁉」  魔女は慌てて遠見の水晶を覗き込む。自分の――姫君の体は、嫁いだ大国はいったいどうなっているのか知るために……

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】私が愛されるのを見ていなさい

芹澤紗凪
恋愛
虐げられた少女の、最も残酷で最も華麗な復讐劇。(全6話の予定) 公爵家で、天使の仮面を被った義理の妹、ララフィーナに全てを奪われたディディアラ。 絶望の淵で、彼女は一族に伝わる「血縁者の姿と入れ替わる」という特殊能力に目覚める。 ディディアラは、憎き義妹と入れ替わることを決意。 完璧な令嬢として振る舞いながら、自分を陥れた者たちを内側から崩壊させていく。  立場と顔が入れ替わった二人の少女が織りなす、壮絶なダークファンタジー。

処理中です...