お飾りドールのあぶない日常 〜神の力と仲間は最強です〜

ケイソウ

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25話 シナリオの始まり

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 私はいつまでも幸せ気分ではいられないと、単刀直入に聞くことにした。そう、アゲハの件だ。
 桜ちゃんの負担を考えると、早いほうがいいと思った。來斗は何と応えるだろうか。

「來斗、桜ちゃんの依頼は済んだ、でも最悪のシナリオはまだ終わっていない。突然で悪いんだけど、私は決着をつけたい、任せてもらえないだろうか」

 來斗が私を見据えて言う。

「駄目だ。これは家族の問題だ、キーナだけに任せるわけにはいかない、全員で解決する」

「でも……」

「ならこうしよう。シナリオが終わっていないのなら、主導権はまだ婆ちゃんにある、そして家族全員でその依頼に加わる。これなら文句はないだろ?」

「全員が依頼人……」

「お前もだ、キーナ。アゲハを潰したいと思っているのは、俺も直斗も婆ちゃんも同じ気持ちなんだ。だから全員でアゲハを潰す、覚悟を決めろ」

 まさか來斗に私の台詞せりふを言われるとは思ってもみなかった。

「うん、『アンダーテイカー』として承った。なら皆んなと話し合いのセッティングだね」

「ん? アンダーテイカーって?」

「私の仕事の正式名称だよ。壊滅請負人は俗名さ」

「なんだよ、めちゃくちゃカッコイイなあ……」

「あざぁーす!」

 私のふざけた言い方が面白かったのか、來斗はケタケタと笑いながら電話を掛けに屋上へ上がって行った。それでも伝える言葉は厳しいものに違いない、代わってあげられないのがちょっと悔しい。

 さてと、私は私のやるべきことをやろう。
 本来なら3階をリーフとルートの部屋、2階をミーティングルームと私の仕事部屋にと考えていたが、まさかの3階部分が新居になっていたので、2階部分をどうしよかと思いながら部屋へ入ると、奥に部屋が2つと、中央にはまだ何も置かれていないスペースがあった。おそらくこの階がリーフとルートの部屋と思われる。

 1階へ降りると、事務所兼ミーティングルームになっていた。この図案を考えたのはおそらくデッドだろう、お前は魔法使いかエスパーか、と言いたくなるほど未来を予測する。やっぱり人間じゃないな。

 それはさておき、ミーティングルームへ入って、予め設置されていた机と椅子を揃え、段ボールの中からコーヒーカップを机の上に並べた。
 また3階へ上がりコーヒーの用意をしようと部屋へ入ると、既に來斗が珈琲を淹れていた。
 電話連絡は終わったのだろうか。

「なんだ、もう皆んなと連絡は済んだの?」

「ああ、もうすぐ来ると思うよ。いま保温ポットに大量の珈琲を淹れてるとこ。キーナ飲む?」

「ううん、大丈夫。なら私は砂糖とミルクを下に持っていくね。あ、使うのは私だけか?」

 そこへドアをノックする音が聞こえた。あれ、ここはチャイムじゃなかったかな?

「あ、はい、どちらさま?」

「リーフとルートです。直斗さんと1階にいます」

 と言って足音が遠ざかっていった。ふたりも参加するのだろうか、それとも部屋で待機するのか。

「なあ、今リーフとルートが来たんだけど、1階で待ってるって、彼らも参加するのかなあ」

「なんだ心配?」

「んー、彼らはアゲハを嫌っている様には見えなかったからさ、いいのかなって……」

「直斗はふたりに任せるって言ってたよ、最後を見届けたいって思いもあるんじゃないのかな」

「ふ~ん、まあ好きにさせるか」

 砂糖とミルクを持って1階へ降りると、既にリーフとルートに直斗がミーティングルームの奥に座っていた。そこへ來斗が入ってきて、尽かさずポットを皆んなに回した。
 來斗と私は隣り同士で座り、それぞれがカップに珈琲を注ぎながら無言で待つ。
 空気が重い中、私は皆んなに声を掛けた。

「皆んな、引越しの手伝いご苦労様でした。手伝えなくてごめんね」

 直斗が腕組みをして文句を言う。

「本当だよ、有力な若者はケガで使い物にならないし、兄貴は婆ちゃんに付き添いながらで中々作業は進まないし、いちばんの功労者は引越し屋の兄ちゃんとロボ達さ、文句も言わずせっせと働いてたよ。若人よ労働者を見習え、そしてケガが治ったら馬車馬の様に働きたまえ。ワ、ハ、ハ!」

 皆んなが一斉に笑った。直斗は素敵なムードメーカーだ。次に來斗が話す。

「キーナ、俺と直斗でシチュエーションを考えたんだ、まあ見てのお楽しみだ。きっとアゲハは驚くだろうな。進行は俺達がやる、キーナは黙って観ていればいい。最後はお前に任せる、宜しく頼む」

「分かった、依頼はきっちりやり遂げる、任せて」

 横でリーフとルートが憧れの眼差しで私を見る。君達もそのうち私の担い手になってもらうつもりだ、せいぜい頑張ってくれたまえ。ワ、ハ、ハ。

 と、そこへ外からクラクションの音が聞こえた。ようやく主役の登場だ。

 クラクションと共に來斗が席を立ち、桜ちゃん達を迎えに部屋を出た。今のうちにと、そわそわするルートに私は問い掛けた。

「なあ、お前達もこのシチュエーションに参加するのか?」

「はい、もう仕事より緊張しますよ」

「大した台詞せりふなんかないんだから、心配すんなよ」

 直斗はそう言いながらも、カップを持つ手は震えている。誰かを落ち着かせて自分も落ち着こうとしているんだろう。

「直斗も緊張してるんじゃないの? 大丈夫?」

「おいキーナ、オレは今とてつもなく興奮している。どう言えはアゲハにダメージを与えられるかこの芝居に掛かってんだ、そりゃ緊張もするさ」

「えっ、芝居するの? まさか桜ちゃんも?」

「ああ。きっと婆ちゃんはきもわってるから相当リアルだろうなあ。ああ見えて結構キツいこと平気で言うし、期待大だぜ」

 確かに。
 
「ハァ、良かった、私は視聴者で」

「バッカだなあ、あのアゲハがお前をスルーするわけないだろ。アドリブ、頑張れ!」

 こいつ……私まで緊張してきたじゃないか!

 楽屋裏の会話をしている中、ドアが開いて來斗が入ってきた。その後に桜ちゃんとアゲハが続く。
 シラけた喜劇になるか、壮絶バトルの戦闘劇になるか、さあ始まりだ。

 來斗の仕切りから始まった――

「婆ちゃんは俺の前の席へ、アゲハはその隣に座れ。じゃあさっそく始めようか、アゲハ、お前も知っているだろうが、一応紹介しよう。キーナだ」

 アゲハは不思議そうに私を見て眉をひそめる。当然だ、襲わせた相手と知人が同一人物なのだから。

「あなたがキーナ? えっ、どういうこと?」

「キーナは俺の妻だ、知らなかったのか?」

 私はゆっくり眼鏡を外してニッコリ微笑んだ。

「妻って、あなた女だったのね……」

「キーナさんはいつ見ても綺麗だねえ、最高の嫁だよ。アゲハ、あんたも少しは見習いな」

 桜ちゃん、ナイスフォロー。

「今日は集まってくれてありがとう。早速だが、これからの事を話し合おうと思う」

 桜ちゃんが幕を上げた――
 

 
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