お飾りドールのあぶない日常 〜神の力と仲間は最強です〜

ケイソウ

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32話 ピアス

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 翌朝――
 目を覚ますと來斗が心配そうに私の顔を覗いていた。あれからどうなったのか、あの女性オフィサーは捕まったのか、気になるところではある。
 
 それにしても、少々騒しいのは気のせいか?

「キーナ? ああ、良かった! 目覚めなかったらどうしようかって、ハァァ、キーナ、おかえり」

「來斗、ただいま、でいいのかな? 私、帰って来たよね? あまり、覚えてないけど……」

「ああ、俺達の家だよ。どうだ、痛みはない?」

「うん、大丈夫。何か飲みたいな」

 そう言ってしばらくすると、少し大きめな器をトレーに載せて、私の前にトンっと置いた。
 なんと野菜スープ。

 そこへエプロンを着けた小僧が部屋へ入ってきた、今にも泣きそうなリーフとルートだ。

「キーナ、このスープはあのふたりが作ってくれたんだよ、料理の腕は確かだ、熱いから気を付けろ」

「キーナさん、良かった、生きてる……」

「キーナさんこれ。ズボンのポケットに入ってたんだ、大事なもんだと思って、はい」

「ああ、ピアス、ありがとう。あれ、いつ着替えたっけ? まさかお前らが?」

「そんなわけないだろ、俺の嫁さんには指一本触れさせるか、俺が着替えさせたんだよ」

 ですよね、ああ良かった。ふたりにも心配を掛けてしまった、でも彼らが料理をねえ。

「うっ、なにこれ、めっちゃ美味い! ああ、なんかホッとする、ありがとな、元気でた」

「俺がキーナを車から抱えて出てきた時さ、二人とも血相変えて、アレしますコレもってな」

「だって、オレらもそうされたし、でも、まさかこんなことになるとは、オレ、スゲぇ心配でさ……」

「僕らにできることなら何でもしたかったから……」

 突然の出来事で、仲間意識が強まったって感じかな。とはいえ、やっぱりあの後どうなったかの知りたい――

「ねえ來斗、あのさ、あの女性はどうなった?」

「大丈夫、捕まえたよ。いま精神鑑定を受けてる、どう考えても普通じゃないさ」

「一緒に仕事をしてきた仲間なのにな、どこで崩れたんだか……」

「少し調べたんだが、これまで順風満帆で過ごしてきたらしい。欲しい物は全て手に入れてきたが、唯一、恋愛だけは上手くいかなかったようだ」

「そっか、寂しかったのかな、心がさぁ……」

「お前が心配するな。でも直斗が婆ちゃんと警護を連れて来たときはちょっと驚いたなあ」

 直斗が桜ちゃんを……そうか、あのエレベーターの素通りは桜ちゃん達だったんだな、直斗のお陰で私も來斗も助かった、ありがとう直斗。
 
 
 それはそうと、私は気になっていることがある。

「あの、來斗、私ちょっと行く所があるんだ」

「ええっ?! また無茶なことばかり言って!」

「ヘヘッ。すぐ戻るからさ、心配いらないって」

 そう、神に逢いに。あのピアスの事をもっと知りたい。私の至らなさから皆んなに迷惑を掛けた、神の助言がなけれはどうなっていたか、少しは崇めてもいいかなって気分になる。
 
 こうやって少しずつでも神が浸透してくれたら、神々も私なんか世に送らなくても済んだはず。
 第二の私を創らせない為にも、私も早く神に近付かないといけない、きっとそういうことなんだと思う。
 
 私はわがままを言って、來斗に外出の許可をもらった。傷はスッカリ元通り、これはリーフとルートには内緒だ。

 部屋を出て、車のドアを開けると、血が付いていると思っていたシートは、真新しいものに張り替えられていた。多分、デッドだろう。
 しかしながら、彼は私のために結構な労力を使ってくれている気がする。
 まあ、私じゃなくて車のためだろうけど、私もいつか役に立つときがくるだろうか、余計なお世話かな。おっと、またくよくよ考えてるとマスターに怒られそうだ。

 車を出して山へ向かった。頂上近くへ来ると、隼が車と並行して飛ぶ。なんとも胸が高鳴る光景だ。
 頂上に着いて、車を止めて外へ出ると、さっそく隼が私の腕に留まる。

「やあ、元気だったか?」

 隼が私の頬に擦り寄る。隔てのない友、自然は素晴らしいと改めて思う。

「なあ、お前はどうやって神さまと繋がってるんだ? 自然現象?」

『そんなこと、其奴そやつにわかる訳なかろう。キーナよ、回復しているようだの、このバカタレが』

「うっわ! 急に出てくるなってば。あ、昨日はありがと、助かったよ。でも何で怒ってるの?」

『簡単にやられおって。色ボケか、呆れるのう』

「うっ……だよね、ごめんよ……」

 全部お見通しか。浮かれていたのは確かだ、順調すぎて警戒すら怠った。
 でも、今が一番幸せなんだよ。それを味わうと罰を受けるのか、そんなの理不尽だ。

『愛は大事。浮かれるのと、余裕は違う。幸せと不幸は表裏一体、良い事ばかり続きはせん』

「なら、これはその裏返しってこと?」

『人のねたみは千差万別。善と悪、取り違えるのが人間だ。なれど、悪をもまた続く事はない、覚えておるか? 儂が言った言葉を』

「ああ、覚えてるよ、"信じる事"だったか」

「うむ。その言葉を広めよ、この世、全てに。今回のピアスはただの気休めだ、初めての痛みや敗北で気弱になり、己の体をコントロールできんかった。お前はこれまで惨虐を尽くした覚えがあろう?」

 そうなるって思われてるなら、そうしてやるって暴れただけで、好んで傍若無人を尽くしたわけじゃない。でも、それも言い訳だ。
 ならどうすれば良かったんだ、放り出されてそのままかよ。神も結構な無責任野郎だ。

『お前に四の五の言うつもりは無い、暴走は始まりだ。何にせよ、お前の源は膨大、脅威的である、の比ではない』

「比じゃない?」

『お前は暗闇の解放すらできておらん。まだまだ力は半分よ。制御せねばならんな』

「ピアスは気休めかあ。私は不死身だと思ってたからさ、ちょっと期待してたんだけど」

『…………』

 まさかのダンマリ。そんな無茶振りはして無いと思うけど。

『不死身か。機械じゃあるまいし、傷を負えば血も流れ、痛みを伴い悶絶する。神とて同様、人間にも治癒力は備わるが、人が何日も掛かる傷を、我らは一瞬で治す、その違いであって不死身ではない』

「なら私の場合は? 神とは違う?」

『お前は進化の過程で人間寄りになった、力がを寄せ付けなかったと言うべきか、無敵状態。今まで知らずで来た事を良しとしよう』

「う~ん、力に助けられてたってこと?」

『そうとも言える。しかと話さねばならんかの』

 そうともって――難しいなあ……。
 
 
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