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33話 同類
しおりを挟む天王の言う「そうとも」とは、力だけで無敵状態ではなかったということなのか。
『神々が分け与えた劦。お前はその劦によって護られておる、それを不死身と勘違いしておるのだ』
私は力だけで生き永らえてきたわけじゃないってことか。それぞれ異なった神の能力で護られていた。
『皆、生まれてくるのには意味がある、お前も然り。ガイア、我々の原初が備えとして残した偶像、宴の席とは言え、嘲笑の対象にした覚えはないぞ』
「嘲笑って?」
『笑い者と言う意味だ。力を分け与える物に、希望も願いも無しに放りだす訳がなかろうて。神々はお前に懇願したのだ、愛を、アガペーを我にと』
結局はそこへ辿り着くのか。私に期待、命令など預かり知らぬと突き返してしまおうか。
『お前は新たな試みと成り得る存在、神や人類への変革をもたらす。なら尋ねる、これまで何を得、何を失い、何を期待し、何を求めた。答えよ』
そんなこと、突然言われても応えに困る、これまで好き勝手に生きてきた、でも今は、何かが変わり始めているのは確かだ。
『お前は無から始まった。惨虐を尽くし、星々を失わせた。友を得て、在り方を得る。友を失くし、期待を求めた、違うか?』
「分かってるなら聞くなよ。私にどうしろっていうんだ。アガペーを差しだせばそれで済むのか!」
この星に降り立って、何かを求め、期待した。善と悪を知り、仕事を始めた。全てを潰す、自身を省みずひたすらに。信用を失い、敵を作り、お尋ね者となった。
善を求め、縋るものを追いかけ、愛を知った。人の暖かみを得、信じる事を知り、期待し、癒しを求めた。これが私の知る限りだ――
『お前は与える事に欠けている。それは、信頼や愛を得る為には必要不可欠。難しく考えるな、ありのままで進め』
「でも、それじゃ神々の願いが……」
『言ったであろう、新たな試みと。お前が自由に成せば良いのだ。人間は寿命があり、生まれ変わる。しかし、運命は変えられぬ、着いて廻る厄介者だ』
「私が創られたのも運命?」
『うむ、現実としてな。我らは不死、全てを背負い世を導く、永遠に知恵との闘いよ。お互いキッツいのう、そう思わんか? ワハハハ!』
なんだよ、最後は笑って済ませるのかよ、豪快にも程がある。
私の劦、自分でも知り得ない程の脅威的な力。やはりちょっと怖いと思う。
"信じる事"を広めろって、まだ漠然としか言いようがない。自由にしろって、大雑把過ぎだよ。
私を送り出した意味、懇願かあ、神も切羽詰まってるんだなぁ、でも私に何ができる?
『キーナよ。もうひとつ質問だ』
「ゲッ、まだ居たの? 今度は何?」
『お前は不死だ。ではその不死を、番と共に生きたいとは思わんか?』
「……私は來斗に同じ哀しみを与えたくない。人間として寿命を全うしてほしい」
『ふむ。お前が番を看取るということか? その悲しみは計り知れないとしてもか?』
「ああそうだ。一時は人間の寿命でとも思ったが、私が先に死んだら、悲しんでくれる者もいるって、今更だけどやっと気付いたんだ」
『だそうだ――來斗よ、お前はどうしたい?』
「えっ?……」
私は思わず後ろを振り返った。來斗がなぜか車のボンネットに腰掛けている。そして手に何やら小瓶を持ち、ユラユラと揺らしながら微笑む。
すると、隼が木の枝へと飛び移った。そして來斗が神に向かって話す。
「神様、黙って聞かせてくれてありがとう。俺も決心が付いたよ、これ、飲めばいいんだろ?」
「えっ、なに、ちょっと待って、あれは何?!」
『あれは神酒、不老不死の媚薬だ』
不老不死だって? 冗談じゃない!
「バ、バカやめろ! 來斗早まるな!」
來斗は迷うことなく、小瓶の媚薬を飲み干してしまった。
「あ、ブドウ酒みたいな味、美味い」
「ああっ! あっあぁぁ……なんてことを……」
私は膝から崩れ落ちた……。
一体いつからいたのか、しかもどうやって来たんだ、歩きか、あり得ない。
なら車か、どうやって潜り込んだ、そうか、トランクの中か。だとしても私以外は開けられないはず、ああ頭が混乱する。まさかデッドが?
作り手とあらば解除も容易い。でもいつだ、私が倒れたときか、車も直されていた、來斗に迫られてやったのか、なんだってそんなことを……。
『來斗よ、後悔はせんのだな?』
「神は黙っててくれよ! 私が、私が聞くんだ!」
「キーナ、俺が神様に懇願したんだ、神様はそれに応えてくれた、俺なんかにね」
「なぜだよ來斗! お前は普通に……クソッ!」
「お前がそう言うのは分かってた、そう思うだろうともね。俺はお前と歩みたい、キーナが存在する限りずっとね。その夢が叶うんだ、迷いはないよ」
神よ、こんな優しい奴を苦しめていいのか?
きっと一時の迷いなんだよ、何とかしてくれよ。
私の命を差し出してもいい。
だからさ、なあ、頼むよ……。
「うぅ、うっ、來斗のバカ……大バカ野郎……」
「キーナ泣かないで。これでお前に少し近付いた、もう化け物なんて言えないぞ、俺と一緒に歩んでくれるかな? 返事を聞かせてくれ、キーナ」
「卑怯者め、もう後の祭りじゃないか……來斗の隣りにいてやる、だからもう無茶はしないって誓え」
「ああ、誓うよ。神様の前だ、噂はない。俺とキーナ、朽ちるまで一緒だ、離さないよ」
『來斗の覚悟は確と儂が受け取った。キーナよ、共に歩め。良き番を見つけたのう、離すでないぞ』
言われなくても離れてやらないさ。番か、自然界の番は本物だ、私もそうなりたい。
來斗とならそうなれる、そう信じる。私が頑張るしかない、嫌われないように。
『來斗よ、お前にも力を与える、確と心に留めよ。怯むな、自惚れるな、溺れるな。それらは自らを滅ぼすであろう。良いな』
『ようやく出番が回って来たわね。私は愛の女神よ、確と受け取りなさい』
「何を与えたんだ? 危険な物?」
『心配しなくても大丈夫、治癒能力とちょっとした愛のオーラを与えただけよ』
「は?」
今なんて? ちょっと待とうよ神の諸君。治癒は良いとして、愛のオーラだって?
いやいや、來斗は既にモテモテなんだよ、そんな人間に愛のオーラとか危険度100%じゃん!
ああ、嫌な予感しかしない……。
「うわっ! なんか耳に違和感が……あ、ピアスだ。
治癒ってことはキーナを助けられる?」
『そうでは無い、邪心を祓う神具よ。來斗なら使い熟せるでしょう、今まで邪心に囚われている者を見てきたであろう? どう使うかはお前次第だ、頑張りなさい』
なるほど、治癒とは身体ではなく心の治癒か、私の立場としては容認し難いんだが、できれば男性限定にして頂きたい。
「それって……男女問わずってことですか?」
『もちろんよ。愛のオーラも忘れずにね』
「はい。怯まず、自惚自れず、溺れません、神に誓います。ありがとうございます!」
人の気も知らないで、良い気なもんだ。これが私に対して"信じる事"の試練ってやつなんだろう。それが永遠に続くのかと思うと、私の心が先に病みそうだ。
來斗が私と同類になった、いや、なってしまった。でも、同じベクトルを持つ者同士、勇気や期待は計り知れないだろう。
愛しい人、朽ちる時が来るまでそう呼ぼう。
愛する人、この身を挺して守り抜く。
我が夫よ、浮気は許しません!
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