お飾りドールのあぶない日常 〜神の力と仲間は最強です〜

ケイソウ

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34話 原初たる大地の母

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 私達は神と話しを終えて、車に乗り家へと向かった。來斗がしきりにピアスを気にしている、本来の仕事に支障が出ないといいが――
 
 家の前に着いて車を降りた來斗は、気もそぞろで建物の中へ入って行った。
 私は空き地に車を駐めると、リーフが誰かと話しをしている。誰だ?

「どうしたリーフ?」

 近寄ると、細身の男がペコリと頭を下げた。
 あの人は確か田中不動産の、そうだ、空き地の件を聞くんだったか……。

「キーナさん、おかえりなさい」

 田中は汗を拭きながら話しだした――

「これは東御様。あのですね、実はビルの隣りの空き地なんですが、活用方法はお決まりになりましたでしょうか?」

「えっ? どういう意味? 私が買ったのはこのビルだけだよ? 隣りの空き地って?」

「あー、ええっと、デッド様からお聴きでない? 買われたのは隣りの空き地も含めてなんです」

 下見に来た時はそんな話し聞いていなかったと思うが、なるほど、デッドの奴、そうとう無茶を言ったようだ。請求が億単位だったのもこれで納得がいく。私はお得感満載物件を手に入れたわけだ。とはいえ、今すぐに返答はさすがに無理。

「悪いが今すぐ返事はちょっとね。多分、アパートを建てる予定ではいる、それでどうかな?」

「左様ですか、決まりましたらまたご連絡下さい、お待ちしてます。では」

 デッド、いい加減に自己完結はやめろ。
 
 課題ばかりで考えが追い付かない。來斗は自分の事で精一杯だろう、リーフにルートも今は家政婦みたいな真似事をさせてしまっている。
 近いうちに私の仕事も教えなければならない、そう考えるとひとりは楽だった。
 
 私は気怠けだるさを引きずって部屋へと戻った。

「あ、キーナさんおかえり。買い物行くけど、何か欲しい物ありますか?」

「ルートは料理が好きなんだな、ちょっと意外。欲しいものはタバコくらいかな、悪いけど疲れたからちょっと休むね、あ、來斗のご飯よろしく~」

 いま私のできることは精一杯の笑顔だった。寝室へ入ってベッドへ寝転ぶ。ああ、異様に眠い……。
 私はぐっすりと眠りに落ちていった――

 
 ――――――
 
 
 瞼を開けると満天の星が夜空を飾る。ここは夢の中か、そういえばあまり夢を見ることはない。
 こんなにリアルだったか、手を伸ばせば星が掴めそうだ。私が壊した星もあんなに輝いていたのだろうか、今更だな、ごめんよ……。

「そう悲観しなくても良い、私の可愛いキーナよ。さあ、こちらへおいで」

「誰だ、また神か? もう今日は勘弁してよ」

「私はお前の母、大地の女神だ」

「母? 私を作った神か、そうかあなたが……」

「お前は信じる事を覚えた。なら、甘える事も覚える時よ。さあ、おいでキーナ……」

 私は自ら母と名乗るその神の手を取った。暖かい、そして膝枕をしてくれた。
 これは夢なんだ、ならば今は甘えてみよう。妻ではなく、子供として――

「ねえキーナ、天王の願いを叶えようとしなくてもいいのよ。あれは願いではなく希望なのだから」

「でも私にアガペーをって……」

「天王は自身が生きを吹き込んだ人間に戸惑っているの、だから自由を与えた」

「神なら従わせることも容易いだろう? なぜ私を頼るんだか、変な話しだよな」

「フフッ。でもね、私はお前を神々の為に造ったの。天王はキーナを人類のために放った」

「えっ? 私は神の為に造られたのか? 何の意味があるっていうんだ、神だぞ」

 神の為に創られたって、そんなこと信じる方がおかしい、神は全知全能だ、そのくらい私だって知っている。この母は何を目的として私を創くったと言うのか、私には理解できない。
 
「あのねキーナ、神とて全てが万能ではない、それゆえの神々なの。そのことでお前に伝えたいことがある」

「伝えたいこと? まだ何かあるのか?」

「闇について。キーナは既に《闇黒エレボス》を使った、キーナにとって闇は怖い存在?」

 闇、幾度となく呑まれそうになった、もちろん怖いのは私だけじゃない、きっと全ての人がそうだ。

「うん、やっぱり怖いかな、自分に降りかかって初めて知ったよ。嫉妬や妬み、色々と学んだ」

「なら、暗闇くらやみはどうかしら、やっぱり怖い? 夜も暗闇よね?」

「まあ、そう言われるとそんな気も……」

「人は昼に行動し、夜は静寂を求め眠りに就く」

 確かに、昔から昼間は働き、夜は疲れを癒すために眠る。そのサイクルが根付いている。

「静と動、光と影、昼と夜。どれもお互い無ければ成らない存在。闇は人間が作り上げた比喩だ、心の状態を表している。闇は自身が創り出す悪なのだよ。逃げ道と言った方が分かり易いかしら」

「逃げ道……」

「私が言いたいのは、暗闇を恐れるなと言うこと、闇とは別物よ」

「そうか、嫌だと心か感じる逃げ道が闇……」

「そうよ。天王の言った暗闇の解放とは、暗黒あんこくの神を意味するの。だから何も恐れることはないのよ。ただそれとは別に、お前には死の神が力を与えている、というよりも、許可を得た、のほうが正しいかしら。おそらく天王が助力を求めた、破壊、消滅、奈落はあらゆる物の死を示す。そうなる事を見越しての判断でしょう」

 破壊は私の始まり、なら私の仕事や奈落を操れるのは、死の神が関わっているからなのか……。

「……それらに意味はあったのかな……?」

「もちろんよ。破壊や消滅があるから再生がある。死の神は魂の管理者、彼にとって利であり得である、お前が悲観することではない」

 悲観するなって、結構な衝撃的事実なんですけど……まあ、天王ならやりそうだけどね。
 
「キーナは愛の女神を知ってるわね?」

「ああ、來斗に治癒と愛のオーラとかを授けた女神か、私にはちょっと厄介な神かな」

「フフッ、キーナにとってはそうね、でも來斗なら大丈夫よ。その來斗なんだけど、彼は自ら望んで不死となった、そして能力を授かった、お前とは違う。託された者と、授かった者の違いを來斗はまだ把握していない。授かるとは、責任と義務が生じる行為、つまり、責務だ」

「私は自由で來斗は責務って、随分と勝手だな」

「勝手? 望みを叶えたのに? 不死、いわゆる神と同等、もう人間として暮らしてはいけない、お前がそうしてきたようにね。そこで提案なんだけど、仕事の依頼を広げ、この世界を観て周るっていうのはどうかしら、もちろん來斗も一緒にね」

 そうだ、私は顔を隠しながらやり過ごしてきたけど、來斗は大勢の人達に認知されている。
 この地を離れれば、少しは誤魔化せるかもしれない、それでもいつかは正体を明かす時はくる、でも今じゃない。

「そうだね、まだ能力を使っていない今なら……あ、でも來斗にはポリスの仕事があるけど?」

「そうね、でも來斗はトップの地位を求めていない、キーナと同じ方向性ベクトルを必要としているのよ。お前も感じていたはずよ?」

 そういえば、私が來斗のトップ就任と言った時、來斗は随分と嫌そうな顔をしていたっけ……。

「ねえキーナ、お前は全てを手に入れたも同然、だから今回は來斗のサポートに回ってほしいの」

「サポート?」

「來斗の能力を黙って見守る、お前には辛い思いをさせてしまうだろうけど、きっと良き仲間が支えてくれる」

「仲間……?」

「ふたりだけではまだまだ危うい、そうだ、お前の最大なる味方に相談しなさい」

「味方って、あ……」

「そう、ゴッドマザーにね。さあ、そろそろ目覚める時よ、キーナ、また逢えることを願って……」

 ああ、視界がボヤける……母よ、温もりをありがとう、きっとまた……。


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