親子そろって悪役令嬢!?

マヌァ

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白魔法の文献編

184話『新たなる称号入手!』

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検問所を出発してから数時間、ナナリーを乗せたコンラート様の馬を先頭に、

私達は整備され、雪避けのされた道を西へ進む。

そろそろお昼時だという時間で問題は発生した。



ナナリーの馬酔いが酷くなった。

検問所を出発してからもう3回目だ。

ナナリーの胃の中身はカラッポだろうね。



最寄の村は後どのくらい先だろうか。



「この辺りで休憩を取ろう」



リーテ様の提案で馬を止める。

野営に長けているリーテ様はお昼休憩を提案し、

テキパキと指示を飛ばしていた。





「兄上はこの先の村までどれくらいかかるか見てきて欲しい。

 ベリアル王子は、野営地を作ってくれ。

 私は近くにある川にナナリー様と向かう。

 飲料水も確保できるだろう。

 マリク殿、火を焚いて昼食の準備を。

 エミリア様はマッピング後、マリク殿の昼食の準備手伝ってくれ」



リーテ様の指示に皆頷く。

「分かった」



「「分かりました」」



馬からナナリーを下ろして、

コンラート様はこの先に村がないか見に行った。



ベリアル様も頷いて、野営場所を作り出した。

魔法で雪を溶かして広場を作ってくれる。

そこに空気調和機能じどうおんどかんりつきのシートを敷く。

このシートはそこまで大きくはない。

せいぜい、大人一人が横になれる大きさだ。

ナナリーを休ませる用に使う。


マリク君は広場が出来上がったら、馬に積んである薪を使って

火を起していた。



私も地図を広げる。

どれくらい進んだか丁寧にマッピングするのだ。

現在、私達がいる場所から森に入った場所に確かに小川があった。

耳を済ませると川のせせらぎも聞こえてくる。



リーテ様は、ナナリーを支えて森に入っていくようだ。

リーテ様はカンテラの魔道具を取り出してそれを掲げる。

2人の周りだけ雪が避ける仕組みの魔道具だ。



雪避けのカンテラ。

カンテラの周囲だけ雪が避けるというもの。

通ったあとは雪は元に戻る。なんというか、本当に雪が避けるのだ。

分かりやすく言えば、雪の壁を通りぬけたあとは雪が元通りになる。

カンテラの周囲だけが避ける。雪が無くなる。

通り過ぎた後は元に戻る。

つまり、穴とかできたりしない。本当に不思議な魔道具だった。

「ナナリー様、もう少しの辛抱です」



「うぅ……わかったわ」



ナナリーの事はリーテ様に任せよう。



マッピングあと、マリク君と簡単なスープを作る。

野営用の折りたたみ式の鍋に水を入れる。

沸騰したら、乾燥スープの素のようなものを入れる。



この世界の野営用の食料は、基本的に水気の少ない携帯食のような物だ。

栄養分の多いスティック状のクッキー、カロリー○イトみたいなものや

お湯に溶かすとスープになる物、ドライスープみないなものもある。

だけどあちらの世界との違いも、もちろんある。

それは基本的に味が濃いということだった。



乾燥スープの素を、1リットル以上のたっぷりの熱湯で1つの素を溶かす。

鍋いっぱいの熱湯が、コンソメスープの様な色になり、

乾燥された野菜も一緒にふやけてちょうどいいやわらかさになる。

ここで隠し味に酔いに効くといわれる生姜を削っていれる。

これで少しはナナリーも楽になるかな。

生姜には体を温める作用もあるし、私達にも丁度いいね。

鍋をかき混ぜている間に、隣でマリク君が硬パンを楕円形に切って

スープ皿に入れていく。

渡されたスープ皿にスープを注いで出来上がりだ。



お昼ごはんが出来上がった頃に、リーテ様とナナリーが戻ってきた。

リーテ様は両手に水の入った皮袋を。

ナナリーがカンテラを持っている。



ナナリーの顔色は大分よくなっていたが……リーテ様が微妙な顔だ。

リーテ様と視線が合ったけど、微妙な笑顔を向けられた。

どうしたんだろう?



「ナナリーさん、気分は大丈夫ですか?」



マリク君が声をかけるとナナリーはフワっと微笑んでこちらに向かう。

おおぅ。 ナナリーの微笑みも破壊力あるなぁ。

今更だけど、この砦に行くパーティって美男美女が多すぎるよね。



「ええ、もう大丈夫よ。

 リーテさんに、酔いに効く方法を教えてもらったの。

 それとエミリア、今朝は……あ、ありがとう。」



ナナリーはこちらを向いて、恥ずかしそうにお礼を言った。

「どういたしまして」



最近のナナリーは本当に素直だ。

たまに素がでることもあるけれどね。



酔いに効く方法がどんな方法なのか教えてもらったら、

歌を歌うというものだった。

川で歌を歌ったら、スッキリしてなんだか治ったそうだ。



馬に乗っている状態で歌っても効果があるみたいで、

次の村に着くまで歌うことにしたそうだ。



だけど、リーテ様の表情がしょっぱい。

なんか嫌な予感がした。



しばらくしてコンラート様が戻ってきた。

結構先を見てきたけれど、村は見当たらなかったそうだ。



このあと皆でご飯を食べて休憩を挟んで出発した……が。





「まちうけ~る~わ~!♪

 白い~乙女の祈りを~!♪」


しばらくして、雪原に不快音が響き渡った。



ナナリーがコンラート様の馬の上で歌い出だした。



馬から気を失ったコンラート様が落馬した。



行進が中断し、私達は困惑する。



私はリーテ様を見つめた。

しょっぱい顔のリーテ様は目を逸らす。



なんてことを教えてしまったんだリーテ様!!


ベリアル様は眉間にシワを寄せている。



そして私とマリク君はナナリーを悲しい目で見つめた。





オロオロするナナリーは何がなんだか分かっていない。





ナナリーは、音痴の称号を入手したのだった。





ちなみにナナリーが歌っていたのは、

『聖霊の白乙女』のオープニングだったよ。


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