親子そろって悪役令嬢!?

マヌァ

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白魔法の文献編

187話『ヒロイン達の苦難 2』

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※ナナリー視点です。



回復したマリク君が隣で倒れている馬に気づいた。

馬は、ここまで私達を運んでくれた子だということが分かる。



「君が、庇ってくれたんですね……」



症状は、シンシアと同じ症状だった。

体は赤黒く染まり、発疹が破裂を繰り返し、新しい傷から鮮血が流れる。

血溜まりがどんどん広がっていく。



荒い息を繰り返し、口からは泡立つ血を流す馬を、

涙を流しながらマリク君はそっと撫でていた。



キイイン!



という音がしてそちらに視線を向けると、

わき腹を押えたリーテさんが私とマリク君を庇うように立っていた。



「馬の治療を!

 ここは私が持ちこたえてみせる!」



リーテさんの指示で、私とマリク君は治癒魔法を馬に使った。

マリク君が炎症を抑える魔法で私が回復を担当する。



リーテさんは、イノシシの気を引くために

ロングソードでチマチマ斬り付けながら走り回っていた。



馬の治療を終えた私とマリク君は、リーテさんの戦闘を見つめる。

良く見ると、リーテさんの左腕はダランと下がり血が滴っている。



荒い息を繰り返しつつも、浅く切りつけては離れてを繰り返すリーテさん。



「ナナリーさん、馬に乗って砦に向かってください。

 僕とリーテさんで魔物を押さえます」



治癒した馬はマリク君の言葉に答えようと

痙攣けいれんする足に力を込めて立ち上がる。


「そ、そんな! ムリよ! 

 この子は治ったばかりだし、私は馬なんて操縦できないもの!」



「大丈夫ですよ。

 この子は、人の言葉を理解していますから」



ブルルルと声を上げた馬は私の手に鼻先をつける。





脳裏にチラつく傷ついたシンシアの姿に涙が止まらない。

もしこのまま2人を残して行ったらシンシアと同じになるかもしれないのに?



「だけど――」 「行ってください!」



私の言葉を遮ってマリク君が声を荒げる。



「ナナリーさんを守りながら戦うのは無理です。

 僕の魔法は加減が効かずに範囲が広い。

 避けきる足を持つ人じゃないと危険です」



涙を流し、首を振る私に、マリク君が優しく微笑む。



「砦に行って兵士と先行した医師を呼んできてください。

 これは、ナナリーさんにしか出来ないことです」



マリク君は私を信じてくれているのだと分かった。


だけど、本当は分かっていた。

ここから砦までは後数時間以上もかかる。

昨日エミリアが教えてくれた。

私が酔わなければ、夕方には着くって。



マリク君は、私だけでも逃がそうとしてくれている――。



「大丈夫。僕達は簡単にはやられません。」



そう言って、マリク君は腰のベルトから短い杖のようなものを取り出した。



「さぁ、行って!!」



袖で涙をふき取り、私は頷く。



「絶対に呼んで……来るから!!」



私の声に頷くマリク君。

リーテさんも、横目で視線を送って微笑んで頷いてくれた。



私を背中に乗せるために屈んでくれた馬を撫でて、

背中にまたがる。

私は、しがみついて手綱を握った。



「行って!!」



私の声に合わせて、馬は駆け出した。


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