猛焔滅斬の碧刃龍

ガスト

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1章【暗黒討伐編】

第141話・新技開発【爆】

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 長考の末、俺が出した新技の案は50近くにのぼった。
 “流石に多すぎだ”とアインにゲンコツを食らったので、渋々3つに絞ったが⋯⋯。ぶっちゃけ、まだまだ案は出せる。
 とはいえ、考案した技を習得するまでの期間を考えるなら、技の数は3つで及第点だろう。
 それ以上あると、習得は出来ても戦闘で活かせるかが難しくなってくるし。
 どんな技でも、慣れは絶対に必要になる訳だしな。

「──中距離では、“間合いの管理”が重要になってくる。
 コッチの得意が・相手の苦手が殴り合いなら、当然コッチから近付きてぇ。
 逆に、コッチが接近戦に持ち込みたくねぇなら、どうにか相手の間合いに入らない様にしてぇ」
「⋯⋯うーん? それって、あくまで別々のシチュエーションなんじゃないのか?」
「いンや。案外そうでもねぇ。今の2つのパターンには、共通して必要なモンがある。“牽制力”だ」
「牽制力? ⋯⋯あーっ、か!」

 牽制力。
 つまり、“相手の動きを止める技術”が必要なワケだ。
 近付こうにも、相手が身構えていれば懐には入れない。
 距離を取ろうにも、何も細工が無くては単に鬼ごっこになるだけ⋯⋯
 どの道 相手の動き停止させなくては、此方としても動くに動けないという事だな。
 
「身体の方もだが、何より“意識の動き”を止めるのが大切だ。
 つうか、そっちの方が重要だ。距離を詰めたいにしろ 取りたいにしろ、相手が備えてんなら簡単にはいかねぇ。
 ⋯⋯だが、こう──」

 パン! と、アインが手を叩く。
 その直後。彼が突き出した人差し指と中指は、俺の眼球ギリギリまで迫った。
 反射で顔を逸らしたが、それが無意味な行動であった事はすぐに理解した。
 アインが指を止めなければ確実に失明していた事に冷や汗を流しつつ、俺はホッと息を着いた。

「──どうだ、分かったか?」
「あぁ。今の目突き、普段の俺なら簡単に躱せた速度だった。
 だけど、直前の拍手の音に、意識も身体も硬直して⋯⋯」
「そう。俺が言いてぇのはソレだ」
 
 腕を組んだアインは、深く頷いた。
 自身が言った事を、俺に身を持って実感させた訳らしい。
 突発的な出来事には、身体が自動で反応してしまう──。
 そういった“生物としての基礎能力”を利用した、利口とも狡猾(こうかつ)とも云える手段だ。

「──“牽制力”とは、“相手の思考にを作り出す技術”だ。
 その隙間は、驚愕や動揺・混乱や躊躇となって現れる。
 思考に影響を与えて動きを止め、そして思考が回復するまでの間に此方が動く⋯⋯
 それが、中距離内での遣(や)り取りで必要になるポイントだ」
「⋯⋯となると、俺が持ってる案の中なら“アレ”が適任か」

 俺が言う“アレ”とは、さっきのビームの仕組みを応用したモノだ。
 正確には、あのビームは“金属生成の応用によって生まれた炎装”の応用なので、応用の応用の応用という事になるが。

「ぃよっし。やってみるか」

 半身に構え、俺は右手の指を動かす。
 人差し指と中指。2本を揃えた状態で、その先端にて魔力を操作。
 金属生成で最も得意だった槍の創造を模倣し、紅い炎の槍を生み出した。
 金属と炎では性質が違い過ぎるので、30センチ程の槍を3本作るのが精一杯だが⋯⋯

「──!!」

 小さな3つの炎槍が浮遊する指先を、軽く前に振る。
 掛け声すら必要の無い僅かな動作だが、発射した炎槍は恐らく弾丸並の速度だ。
 以前までの金属生成で作っていた銀槍は、ほぼ毎回200本~500本を一斉に魔法の☾操作(フーへ)☽にて飛ばしていた。
 しかし。たった3本の炎槍が対象なら、操作魔法を集中して使用可能。
 という訳で、その分、速度・機動力ともに優秀な技が完成したらしい。指先の動きが、そのまま炎槍の動きとなって現れている様だ。
 
「あァ。悪かぁねえな。後は工夫さえ加えられれば⋯⋯」
「だな。相手が、大きく動揺する感じの──」

 その時。ふと、思い浮かんだ。
 数ヶ月前の王都クローネでの迎撃戦の最中に、ゴスロリ冒険者のアイリスがやった事を。
 上空に放った魔法に向けて手を掲げ、そして握る動作で爆裂させた“あれ”。
 今思えば、“あれ”は魔法の一部ではなく、彼女が追加で付け足した効果なのではないだろうか。
 一定の規則を持った魔力=魔法に干渉し、意図的にその規則を乱す事で暴発させる様な⋯⋯
 
「う~ん⋯⋯」

 指先で魔力を操作し、炎槍に意識を絞る。
 指と炎槍の間にある☾操作(フーへ)☽という魔法。それを通路として、炎槍内の魔力へと干渉した。
 すると、無数の魔力の粒⋯⋯。言うなれば“魔力の最小単位”が、総て一定の方向へ動いているのが分かった。
 ⋯⋯いや、“最小単位”は大袈裟だな。
 魔力の質。つまり魔力の密度は、人や個体によって違う。
 観測可能な“最小単位”も、それぞれ違うだろうからな。
 あくまで、俺が感じ取れる魔力で1番小さいサイズというだけ⋯⋯っと。話が逸れた。
 さて。試しに、炎槍内部の魔力を掻き回してみるとするか。

──バァァァンンッッ!!

 魔力の操作と共に、炎槍が爆発する。
 直径2メートル程の球体の爆炎が発生し、同時に眩い光と派手な破裂音を周囲にバラ撒いた。
 膨れ上がる様に立ち上る黒煙が空へと消えていくのを見届け、俺は自身の指先へと視線を移す。
 炎槍内部の魔力の流れを一捻りした感覚に浸っていると、アインが興味ありげに口を開いた。

「ほ~う? 成程な。そうやって炸裂させたか」
「コレは⋯⋯結構 使えるんじゃないか? 強い光と爆音で意識は削がれるし、ついでに煙幕にもなる。
 相手の顔面付近で爆発させたら、効果は覿面(てきめん)だろうぜ」
「いや。あ~⋯まぁ、それはそうなんだがな? 今のお前は、炸裂する効果を“後付け”しただろ?
 目眩しが目的なら、ハナっから炸裂する効果を付けといた方がいいと思わねぇか?」
「ハナから? それってどうやって⋯⋯」

 俺の質問に、アインは魔力で図を書き出す。
 どうやら、炎槍内部の魔力を僅かに狂わせた状態で撃ち出し、炎槍の加速によってその狂いを増幅させるのだとか。
 つまり、相手に着弾するまでの、“加速によって炸裂する時間”を感覚で理解しなければならないらしい。
 う~む。例えるなら、手榴弾の様な感じだろうか?
 相手に向けて投げても、目の前に落ちて爆発しなければ意味が無い⋯⋯的な。
 相手に最接近し、対処する間も無いドンピシャのタイミングで炸裂する様に調整しなくてはならないらしい。

「──ンまぁ、どの道だ。相手に命中させるのが目的の技でもねぇし、そこまで丁寧に考えなくてもいいだろ。
 ⋯⋯それよりも、“今のやり方”の方が重要だぜ、こりゃあ」
「⋯⋯⋯⋯あぁ。それは、本当に、その通りだと思う」

 ──☾操作フーへ☽を通路として、炎槍へ干渉する。
 何もその魔法である必要は無いだろうが、兎に角この収穫はデカすぎるぜ。
 “通路”があれば魔法や魔力に干渉が出来るのならば、相手が放ってきたソレにも同様の事が出来る筈だ。
 以前までの銀槍の操作は、あくまで“物体の周囲”を魔法の効果で覆っていただけだ。
 だが、今回の技は“既に形となった魔力の内部”にまで干渉する事で完成した代物。
 もし、この“魔力への干渉”を極めたら、どんな魔力攻撃も無効化できるのでは無いのだろうか⋯⋯?

「全くの偶然だが、お前がこの段階で【それ】に気付けたのはかなり大きいぜ。──折角だ、教えておいてやる。
 今、お前が感じたモンは、人間共が【接続】と呼ぶ技術だ。
 どんな形であれ、魔力は魔力。外部からの干渉が可能になれば、解除する事も 封じる事も 逆に利用する事も出来る。
 そんな考えの元に考案された──。⋯⋯まぁ、あんま言いたかねぇが、かなり面白ぇ技術だ」
「あぁ、確かに⋯⋯って、え⋯⋯??」
「グレンデルには黙っとけよ? 一応、魔王サマにもな。
 ⋯⋯ハァ。ぶっちゃけ、人間共の魔力への考え方って、結構興味深ぇんだよなァ~マジで」
「そ、そうなんだな⋯⋯」

 魔族が人間の技術に好意を持つ。
 確かに、グレンデルなら顔を真っ赤にしそうな案件ではあるが⋯⋯
 いやしかし、以外だ。アインの口から、明確に人間への好意的な台詞が出てくるとはなぁ⋯⋯
 彼の様な魔族が増えれば、人と魔族の完全な共存も実現可能なんじゃないのか?
 ゼルだって、『何が何でも人類ぶっ潰してやる!』みたいな奴ではないし⋯⋯
 話せば分かる奴ってのは、やっぱりどんなトコにもいるものなんだな⋯⋯。

「兎に角だ。【接続】っつうのは、誰でも出来る事じゃねえ。
 お前も感覚を掴んだというだけで、他の技への応用が可能になるのはもっと先の話だ。今は、【接続】は置いておけ。
 下手に試みようとすりゃあ、技の習得が遅れるだけだ」
「分かった。今は、今出来る事だけに努力するぜ」
「よし、よく言った。──じゃ、次だ」

 アインは頷き、俺に手を差し出すジェスチャーをする。
 『次の案を出せ』と云う彼の仕草に、俺は頭を捻った。
 広範囲、中距離ときて、次は近距離か超長距離への攻撃手段なのだが⋯⋯
 さて。どちらから試してみようか?
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