妹に婚約者を奪われて婚約破棄された上に、竜の生贄として捧げられることになりました。でも何故か守護竜に大切にされているようです

アトハ

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1. 妹に婚約者を奪われました

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「イリス! 貴様との婚約を破棄する!」

 それは突然のことでした。
 婚約者に呼び出された私を迎えたのは、婚約者によるそんな宣告でした。
 私の婚約者の腕の中には妹のティアナが収まり、勝ち誇ったように私を見てきます。

 そういうことですか。
 その光景を見て、私は一瞬で何が起きたのかを悟ります。

 ティアナは昔から何をやっても要領が良く、両親からの大切に育てられてきました。
 小動物のような可愛さで、異性の庇護欲をそそるふわふわした雰囲気。
 婚約者から「愛想がない」と言われ続けた私とは大違いです。


「どうして、いきなりそのようなことを?」
「黙れ! 貴様は妹が『聖女』に選ばれたことに嫉妬して、家では人目を盗んで苛め抜いたらしいな。そのような卑怯者は、俺の婚約者には相応しくない!」

 ティアナはおろおろと、私と婚約者との間で視線を彷徨わせていました。
 まるで事態に付いていけないと言わんばかりの表情ですが、私にはそれが演技だと分かります。
 この子はこれまでも、泣き真似ひとつで周囲の人を望むままに動かしてきましたから。


「誤解です。私はティアナに何もしていません」
「嘘を付くな! 顔を合わせれば嫌みを言うのは当たり前。夕食の席では召使いの真似事をさせられたと、涙ながらに訴えてきたぞ? 血のつながった妹に、よくもそんな惨いことが出来たもんだ。恥を知れ!」

 事実無根の作り話です。
 それでも私の言うことは、何ひとつ受け入れられる事がないのでしょう。

「心優しい聖女であるティアナこそ俺に相応しい。俺はティアナと婚約する!」
「そうですか。どうかお幸せに」

 心は冷え切っていました。
 もともと両親に決められた政略結婚です。
 一方的に物事を断じる元・婚約者には、もはや何の未練もありません。


「お世話になりました」

 そう言って私は、婚約者のもとを後にするのでした。
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