妹に婚約者を奪われて婚約破棄された上に、竜の生贄として捧げられることになりました。でも何故か守護竜に大切にされているようです

アトハ

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2. 竜の供物として生贄にされるみたいです

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 婚約破棄が悔しくないと言えば嘘になります。
 私は誰とも顔を合わせないまま、部屋に直行しました。

 家名に泥は塗るまいと、貴族として恥ずかしくない教養を身に着けてきました。
 それでも結果はこのとおり――妹のように中身のないふわふわした笑みを浮かべられれば、少しは未来も変わったのでしょうか?

 今となっては、なんの意味のない仮定です。
 そんなことを考えていると、侍女のひとりが迎えに来ました。
 なんでもお父さまからの呼び出しだそうです。

「お小言でも言うつもりですかね?」

 婚約破棄は一方的なものですが、私の失態だと嫌みでも言うつもりでしょうか。
 そんなことを想像した私ですが、父の言葉はそんな予想を遥かに下回っていくものでした。



「『身代わり』ですか?」

 思わず聞き返してしまいました。

「ああ、聖女を虐めた悪女だという悪評は社交界に広がり切っている。喜べイリス、そんな役立たずのおまえでも果たせる最後の役割があるのだよ」

 妹の身代わりに、聖女として竜の生贄になれ。
 父は大真面目な顔で、そんなことを言いました。

 私の妹は「聖女」でした。
 聖女の役割は、この国を守護する「守護竜」に祈りを捧げることでした。
 聖女が竜のために祈りを捧げて、竜は聖女の祈りに応えて国を守護する――この国は、そのようにして竜と共に栄えてきたのです。


「最近は竜の加護が薄れていると聞いてな。竜の怒りを示す『竜の息吹』が天に昇ることも多いと聞く。聖女の祈りが不真面目なのが原因だと、根も葉もないウワサが広がっていてな」
「……」

 根も葉もないウワサではなく事実でしょう。
 ここ1ヶ月、妹が竜に祈りを捧げるのを見たことがありません。
 余計なことを言っても怒りを買うだけなので、私からは何も口にしませんけどね。


「ティアナを失う訳にはいかない。だからおまえが生贄となることで、竜の怒りを鎮めるのだ」

 なにが「だから」なのでしょう。
 まったく繋がらない話に、思わず目を白黒させてしまいます。
 それでも父にとっては、それはもう決定事項だったのでしょう。

「セバス。すぐに準備せよ」
「かしこまりました」

 どうやら使用人たちも、私を生贄に捧げることに何の疑問も持たないようです。
 私に味方する使用人は、とっくの昔にクビになっていました。
 この家は妹を中心に回っているということを早々に察した人以外は、早々に辞めさせられましたから。

 そうして私は侍女たちの手で、竜の生贄に相応しい聖女らしい服装に着替えさせられました。
 聖女としての純白のドレスは、どれも妹のために用意されたものです。
 それでも侍女たちは「少し手直しすれば使えなくもないですね」と言い、テキパキと私を飾り付けました。
 召使い扱いだった私にとって、それは少しだけ新鮮な体験でした。


 そうして驚くほどにアッサリと、準備が整いました。

「早く乗れ」

 私を竜の元に連れていく御者が、面倒くさそうに私に声をかけます。
 ぞんざいな見送りを受けて、私を乗せた馬車は出発するのでした。
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