妹に婚約者を奪われて婚約破棄された上に、竜の生贄として捧げられることになりました。でも何故か守護竜に大切にされているようです

アトハ

文字の大きさ
3 / 16

3. なぜだか守護竜に歓迎されているみたいです

しおりを挟む
 教会の神託によると、ダメーナ子爵家の姉妹には聖女の素養があるとのことでした。
 両親はティアナこそが聖女に違いないと喜び、強引にそれを認めさせました。
 
 もっとも妹は、そんな役割くだらないと祈りをサボることも日常でした。
 どれだけ私が聖女の役目を果たすよう忠告しても、聞く耳も持つことはなかったのです。
 それでいて信用は厚かったので、バレぬよう巧妙に振舞っていました。

 どれほどの間、妹は聖女の役目――竜への祈りを絶やしているのでしょう?


「守護竜の怒り――それも当然のことです」

 せめてもの償いになればと、先代の聖女に教えを乞うて、代わりに私が祈りを捧げていたのですが……。
 そんな申し訳程度の祈りで、守護竜が満足するはずがありませんよね。

 そう分かっていても、私はいつものように祈りを捧げます。

「はん、聖女の真似事かい?」
「私に出来ることは、これぐらいですから」

 本物の聖女の祈りには及ばないかもしれない。
 それでも少しでも怒りを収めてくれれば良い、そんな願いを込めて。
 私は祈ることを止められませんでした。

 そうして馬車は、竜神の洞窟に到着しました。



◆◇◆◇◆

 竜は洞窟の最深部に居るそうです。
 御者は竜を恐れて、それ以上進もうとはしませんでした。

「見届けないで良いんですかね? 逃げる気なんてありませんけど……」

 もっとも逃げたとしても行く宛なんてありません。
 私は洞窟の奥に進んでいきます。

 身代わりとして生贄。
 生贄というのは何をさせられるのでしょう?
 痛いのは嫌いです。出来ればひと思いにパクリとやって欲しいものです。


 ついに洞窟の最奥部に到着しました。
 そこで私を迎えたのは、想像よりも遥かに巨大な竜でした。
 鱗一枚が私の手よりも大きく、その爪に引き裂かれれば、どんなモンスターでも一撃でしょう。

 一目見て、人間との各の違いを思い知ります。
 この神にも等しい竜が、あらゆる災厄から国を守っていたのだということを理解させられます。


「お怒りは分かります。私はどうなっても構いませんから――どうか怒りを鎮めください」
「来たか、人間の聖女よ。この時をずっと待っていた」

 竜の声は、私の心に直接入り込んでくるようでした。
 同時に竜の感情の一部が、私の心に入り込んできます。

 ――それは歓喜でしょうか?


 どうやら私が聖女であると、勘違いしているようです。
 てっきり激しい怒りを向けられるものだと思っていました。
 にもかかわらず向けられたのは、出会いを祝福するような「喜」の感情。 

「竜神様、これまでの非礼をお詫び申し上げます。私を殺すことで人間への罰として怒りをお納め頂けないでしょうか?」
「殺す、だと? 何故、我がそのようなことをしなければならないのだ?」

 心底、不思議そうな反応。
 どんな反応を見せられても、私のやることは変わりません。


 そんな状況でしたが、洞窟の更に奥から執事服の男が1人現れました。
 そして恐れ多くも、竜神様に向かってこんなことを言ったのです。

「竜神様? その姿だと、人間にとって威圧感があり過ぎるんですよ」
「な、なに? 我の姿は、イリスから見て怖いものだとでも言うのか?」

 これは頷いて良いのでしょうか?

 小さくこくりと頷いた私を見て、守護竜はズーンと落ち込んでしまいました。
 とても立派な尻尾が、元気を失ったようにしょんぼりと垂れ下がります。


「ごめんね、イリスちゃん。竜神様は今日、イリスちゃんが来るって聞いて、とっても楽しみにしてたんだよ」
「は、はあ……。楽しみですか?」

 彼らはイリスと私を呼びました。
 どうやら私が聖女じゃないの、バレてるみたいですね。


「長年の孤独を癒してくれた心優しき少女。今日という日を待ちわびた」

 こちらを向く竜はいまだに迫力満点。
 それでも不思議と怖さは薄れていきます。
 伝わってくる心が、うそ偽りない本心だと示しているからです。

 ――信じられないことですが。
 どうやら怒りを鎮めるための生贄に捧げられるはずの私は、不思議と歓迎されているようです。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました

饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。 わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。 しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。 末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。 そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。 それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は―― n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。 全15話。 ※カクヨムでも公開しています

わたくしを追い出した王太子殿下が、一年後に謝罪に来ました

柚木ゆず
ファンタジー
 より優秀な力を持つ聖女が現れたことによってお払い箱と言われ、その結果すべてを失ってしまった元聖女アンブル。そんな彼女は古い友人である男爵令息ドファールに救われ隣国で幸せに暮らしていたのですが、ある日突然祖国の王太子ザルースが――アンブルを邪険にした人間のひとりが、アンブルの目の前に現れたのでした。 「アンブル、あの時は本当にすまなかった。謝罪とお詫びをさせて欲しいんだ」 現在体調の影響でしっかりとしたお礼(お返事)ができないため、最新の投稿作以外の感想欄を一時的に閉じさせていただいております。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

【完結】何でも欲しがる妹?お姉様が飽き性なだけですよね?

水江 蓮
ファンタジー
「あれは…妹が…アンリが欲しがったから…渡すしかなかったんです…。お父様、新しいドレスをお願いします。ドレスも宝石も欲しいと言われたら…姉として渡すしかなくて…」 お姉様は泣きながらお父様に伝えております。 いえ…私1つも欲しいなんて言ってませんよね? 全てはお姉様が要らなくなっただけですよね? 他サイトにも公開中。

義妹が聖女を引き継ぎましたが無理だと思います

成行任世
恋愛
稀少な聖属性を持つ義妹が聖女の役も婚約者も引き継ぐ(奪う)というので聖女の祈りを義妹に託したら王都が壊滅の危機だそうですが、私はもう聖女ではないので知りません。

家族の靴を磨いていた私が、実は【神の加護を磨き上げた聖女】だった件。隣国の冷徹皇帝に「君の献身は世界を救う」と誘拐、24 執着されています

唯崎りいち
恋愛
「お前は一生、靴でも磨いていろ」 家族に虐げられ、靴を磨き続けた私。 実はその靴、磨くたびに『神の加護』が宿る聖具になっていました。 噂を聞きつけた隣国の冷徹皇帝に、出会い頭にさらわれて―― 「君は俺のものだ。24時間、指一本触れさせない」 靴を履かせてもらえず、移動は常に皇帝の腕の中!? 磨き上げた加護のせいで、皇帝の執着が神レベルに育ってしまう溺愛物語。

【完結】濡れ衣聖女はもう戻らない 〜ホワイトな宮廷ギルドで努力の成果が実りました

冬月光輝
恋愛
代々魔術師の名家であるローエルシュタイン侯爵家は二人の聖女を輩出した。 一人は幼き頃より神童と呼ばれた天才で、史上最年少で聖女の称号を得たエキドナ。 もう一人はエキドナの姉で、妹に遅れをとること五年目にしてようやく聖女になれた努力家、ルシリア。 ルシリアは魔力の量も生まれつき、妹のエキドナの十分の一以下でローエルシュタインの落ちこぼれだと蔑まれていた。 しかし彼女は努力を惜しまず、魔力不足を補う方法をいくつも生み出し、教会から聖女だと認められるに至ったのである。 エキドナは目立ちたがりで、国に一人しかいなかった聖女に姉がなることを良しとしなかった。 そこで、自らの家宝の杖を壊し、その罪を姉になすりつけ、彼女を実家から追放させた。 「無駄な努力」だと勝ち誇った顔のエキドナに嘲り笑われたルシリアは失意のまま隣国へと足を運ぶ。 エキドナは知らなかった。魔物が増えた昨今、彼女の働きだけでは不足だと教会にみなされて、姉が聖女になったことを。 ルシリアは隣国で偶然再会した王太子、アークハルトにその力を認められ、宮廷ギルド入りを勧められ、宮仕えとしての第二の人生を送ることとなる。 ※旧タイトル『妹が神童だと呼ばれていた聖女、「無駄な努力」だと言われ追放される〜「努力は才能を凌駕する」と隣国の宮廷ギルドで証明したので、もう戻りません』

処理中です...