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3. なぜだか守護竜に歓迎されているみたいです
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教会の神託によると、ダメーナ子爵家の姉妹には聖女の素養があるとのことでした。
両親はティアナこそが聖女に違いないと喜び、強引にそれを認めさせました。
もっとも妹は、そんな役割くだらないと祈りをサボることも日常でした。
どれだけ私が聖女の役目を果たすよう忠告しても、聞く耳も持つことはなかったのです。
それでいて信用は厚かったので、バレぬよう巧妙に振舞っていました。
どれほどの間、妹は聖女の役目――竜への祈りを絶やしているのでしょう?
「守護竜の怒り――それも当然のことです」
せめてもの償いになればと、先代の聖女に教えを乞うて、代わりに私が祈りを捧げていたのですが……。
そんな申し訳程度の祈りで、守護竜が満足するはずがありませんよね。
そう分かっていても、私はいつものように祈りを捧げます。
「はん、聖女の真似事かい?」
「私に出来ることは、これぐらいですから」
本物の聖女の祈りには及ばないかもしれない。
それでも少しでも怒りを収めてくれれば良い、そんな願いを込めて。
私は祈ることを止められませんでした。
そうして馬車は、竜神の洞窟に到着しました。
◆◇◆◇◆
竜は洞窟の最深部に居るそうです。
御者は竜を恐れて、それ以上進もうとはしませんでした。
「見届けないで良いんですかね? 逃げる気なんてありませんけど……」
もっとも逃げたとしても行く宛なんてありません。
私は洞窟の奥に進んでいきます。
身代わりとして生贄。
生贄というのは何をさせられるのでしょう?
痛いのは嫌いです。出来ればひと思いにパクリとやって欲しいものです。
ついに洞窟の最奥部に到着しました。
そこで私を迎えたのは、想像よりも遥かに巨大な竜でした。
鱗一枚が私の手よりも大きく、その爪に引き裂かれれば、どんなモンスターでも一撃でしょう。
一目見て、人間との各の違いを思い知ります。
この神にも等しい竜が、あらゆる災厄から国を守っていたのだということを理解させられます。
「お怒りは分かります。私はどうなっても構いませんから――どうか怒りを鎮めください」
「来たか、人間の聖女よ。この時をずっと待っていた」
竜の声は、私の心に直接入り込んでくるようでした。
同時に竜の感情の一部が、私の心に入り込んできます。
――それは歓喜でしょうか?
どうやら私が聖女であると、勘違いしているようです。
てっきり激しい怒りを向けられるものだと思っていました。
にもかかわらず向けられたのは、出会いを祝福するような「喜」の感情。
「竜神様、これまでの非礼をお詫び申し上げます。私を殺すことで人間への罰として怒りをお納め頂けないでしょうか?」
「殺す、だと? 何故、我がそのようなことをしなければならないのだ?」
心底、不思議そうな反応。
どんな反応を見せられても、私のやることは変わりません。
そんな状況でしたが、洞窟の更に奥から執事服の男が1人現れました。
そして恐れ多くも、竜神様に向かってこんなことを言ったのです。
「竜神様? その姿だと、人間にとって威圧感があり過ぎるんですよ」
「な、なに? 我の姿は、イリスから見て怖いものだとでも言うのか?」
これは頷いて良いのでしょうか?
小さくこくりと頷いた私を見て、守護竜はズーンと落ち込んでしまいました。
とても立派な尻尾が、元気を失ったようにしょんぼりと垂れ下がります。
「ごめんね、イリスちゃん。竜神様は今日、イリスちゃんが来るって聞いて、とっても楽しみにしてたんだよ」
「は、はあ……。楽しみですか?」
彼らはイリスと私を呼びました。
どうやら私が聖女じゃないの、バレてるみたいですね。
「長年の孤独を癒してくれた心優しき少女。今日という日を待ちわびた」
こちらを向く竜はいまだに迫力満点。
それでも不思議と怖さは薄れていきます。
伝わってくる心が、うそ偽りない本心だと示しているからです。
――信じられないことですが。
どうやら怒りを鎮めるための生贄に捧げられるはずの私は、不思議と歓迎されているようです。
両親はティアナこそが聖女に違いないと喜び、強引にそれを認めさせました。
もっとも妹は、そんな役割くだらないと祈りをサボることも日常でした。
どれだけ私が聖女の役目を果たすよう忠告しても、聞く耳も持つことはなかったのです。
それでいて信用は厚かったので、バレぬよう巧妙に振舞っていました。
どれほどの間、妹は聖女の役目――竜への祈りを絶やしているのでしょう?
「守護竜の怒り――それも当然のことです」
せめてもの償いになればと、先代の聖女に教えを乞うて、代わりに私が祈りを捧げていたのですが……。
そんな申し訳程度の祈りで、守護竜が満足するはずがありませんよね。
そう分かっていても、私はいつものように祈りを捧げます。
「はん、聖女の真似事かい?」
「私に出来ることは、これぐらいですから」
本物の聖女の祈りには及ばないかもしれない。
それでも少しでも怒りを収めてくれれば良い、そんな願いを込めて。
私は祈ることを止められませんでした。
そうして馬車は、竜神の洞窟に到着しました。
◆◇◆◇◆
竜は洞窟の最深部に居るそうです。
御者は竜を恐れて、それ以上進もうとはしませんでした。
「見届けないで良いんですかね? 逃げる気なんてありませんけど……」
もっとも逃げたとしても行く宛なんてありません。
私は洞窟の奥に進んでいきます。
身代わりとして生贄。
生贄というのは何をさせられるのでしょう?
痛いのは嫌いです。出来ればひと思いにパクリとやって欲しいものです。
ついに洞窟の最奥部に到着しました。
そこで私を迎えたのは、想像よりも遥かに巨大な竜でした。
鱗一枚が私の手よりも大きく、その爪に引き裂かれれば、どんなモンスターでも一撃でしょう。
一目見て、人間との各の違いを思い知ります。
この神にも等しい竜が、あらゆる災厄から国を守っていたのだということを理解させられます。
「お怒りは分かります。私はどうなっても構いませんから――どうか怒りを鎮めください」
「来たか、人間の聖女よ。この時をずっと待っていた」
竜の声は、私の心に直接入り込んでくるようでした。
同時に竜の感情の一部が、私の心に入り込んできます。
――それは歓喜でしょうか?
どうやら私が聖女であると、勘違いしているようです。
てっきり激しい怒りを向けられるものだと思っていました。
にもかかわらず向けられたのは、出会いを祝福するような「喜」の感情。
「竜神様、これまでの非礼をお詫び申し上げます。私を殺すことで人間への罰として怒りをお納め頂けないでしょうか?」
「殺す、だと? 何故、我がそのようなことをしなければならないのだ?」
心底、不思議そうな反応。
どんな反応を見せられても、私のやることは変わりません。
そんな状況でしたが、洞窟の更に奥から執事服の男が1人現れました。
そして恐れ多くも、竜神様に向かってこんなことを言ったのです。
「竜神様? その姿だと、人間にとって威圧感があり過ぎるんですよ」
「な、なに? 我の姿は、イリスから見て怖いものだとでも言うのか?」
これは頷いて良いのでしょうか?
小さくこくりと頷いた私を見て、守護竜はズーンと落ち込んでしまいました。
とても立派な尻尾が、元気を失ったようにしょんぼりと垂れ下がります。
「ごめんね、イリスちゃん。竜神様は今日、イリスちゃんが来るって聞いて、とっても楽しみにしてたんだよ」
「は、はあ……。楽しみですか?」
彼らはイリスと私を呼びました。
どうやら私が聖女じゃないの、バレてるみたいですね。
「長年の孤独を癒してくれた心優しき少女。今日という日を待ちわびた」
こちらを向く竜はいまだに迫力満点。
それでも不思議と怖さは薄れていきます。
伝わってくる心が、うそ偽りない本心だと示しているからです。
――信じられないことですが。
どうやら怒りを鎮めるための生贄に捧げられるはずの私は、不思議と歓迎されているようです。
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