妹に婚約者を奪われて婚約破棄された上に、竜の生贄として捧げられることになりました。でも何故か守護竜に大切にされているようです

アトハ

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4. 人化した守護竜はとても凛々しいお姿でした

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「守護竜様。その格好では、イリスちゃんが怯えるのも無理ないですよ」

 執事服の男が守護竜に話しかける様子は、どこまでも気安いものでした。

「イリス嬢に怖がられるなんて、世界の終わりだ……。我はどうすれば良いのだ?」
「いや、だから早く人化してくださいよ」

「それだけは嫌だ。あんな弱々しい姿」
「だだっこですか!」


「ふふっ」

 そんなやり取りを見て、私は思わず笑ってしまいました。
 生贄として、ここで殺されると思っていたのです。
 そんな緊張の糸が解けて、思わず笑いが出てきたしまったのは自然なことでした。

「ご、ごめんなさい……。どうかお許しを――」

 直後、自分がなにをしてしまったのか気付き私は慌てて跪きます。

 あろうことか守護竜を笑ってしまうなんて。
 気が緩んでいたからといって、とても許されることではありません。

「別に怒ってはいない」
「でも――」

「くどい」

 ぶっきらぼうな言い方。
 私と守護竜様の間に、気まずい沈黙が訪れます。

「そんな恰好してるからですよ、守護竜様?」

 そんな状況を見て呆れたような声をかけるのは、やっぱり執事服の男でした。
 どうしてこうも怒りを恐れず、ずけずけと物を言うのでしょうか。

「その、イリス嬢。我のこの姿は、人間にとっては怖いものなのだろうか?」
「その……。はい、ごめんなさい」

 引きつった顔で首を振っても、なんの説得力もないでしょう。
 私はこくこくと頷きました。


「ほら!」

 一方、執事服の男は得意げな顔。
 守護竜は彼をひとにらみすると、何やら魔法を唱えました。
 瞬く間に竜の巨体を光が覆いつくし、気が付けば守護竜の居た場所には1人の男性が立っていました。

 凛々しい顔立ちのひょろっと背の高い長身の男――それが私の第一印象でした。
 燃えるような真紅の瞳で、じっとこちらを覗き込みました。
 かなりの美形で、社交界に出ればたちまち人気者になることでしょう。

 これが守護竜の人間としての姿なのかと、息をのむ私の前で、

「こんな弱々しい姿でイリス嬢の前に出ることになるとは……」

 守護竜は、がっくりとうなだれました。

「守護竜様、人間の姿も恰好良いですよ?」
「励ましはいらないよ。こんな軟弱な姿を見せて、イリス嬢もガッカリしてるよ」

「いいえ、そんなことありません。すごく恰好良いです!」

 思わず出てきた言葉でした。
 あっと思わず口を抑えるものの時すでに遅し。

 守護竜は不思議そうにこちらを見ていました。
 それから少しずつ頬を緩ませると、

「そうなのか。この姿は恰好良いのか。人間の価値観はよく分からぬものだな」

 などと口にして、見惚れるような笑みを浮かべました。
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