妹に婚約者を奪われて婚約破棄された上に、竜の生贄として捧げられることになりました。でも何故か守護竜に大切にされているようです

アトハ

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6.竜人の里へ

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 そうして歩くこと30分。
 私たちは洞窟を抜けました。

 洞窟を抜けた先には――どこかのどかな集落がありました。
 わらぶき屋根の建物が並ぶ、どこか懐かしい気持ちになる場所です。

「ようこそ、竜人の里へ」

 まるでどこかの田舎の集落のようですが、アルペジオは『竜人の里』と言いました。

「ここに居るのは、みんな竜なのですか?」
「ああ、ほとんどは人化した竜だ。中には拾ってきた人間もいるが――みんな我の大切な家族だ」

 アルペジオの表情は、とても柔らかなものでした。
 人間が国を守護するものと崇めていた竜が、こんな人間と同じような暮らしをしているなんて。
 私はあまりの衝撃に、驚きを隠すこともできませんでした。 


「ふふ、イリスちゃん。驚いてるね?」
「はい、とても驚きました……。でも、とても良い場所だと思います」

 それは正直な感想でした。
 遠目に畑を耕している人まで見え、ほんとうに竜が住む集落なのか疑ってしまいます。

「イリスちゃんが落ち着いて暮らせる場所を用意するために、この里を作ったんですよね? ふふ、気に行ってもらえて良かったですね、守護竜様?」
「よ、余計なことを言うな」

 茶化すように言った執事服の男に、嫌そうな顔でアルペジオが答えました。

「そ、そうなのですか……?」
「何か不自由があれば、遠慮なく言うが良い。その男の言う通りだ――この里はイリス嬢のために用意した場所なのだからな」

 私はぽかんと口を開けることしか出来ませんでした。
 アルペジオに案内され、私はそのまま集落の中でも一番大きな家に通されました。
 集落の長の家――そこにアルペジオは住んでいます。



◆◇◆◇◆

 私を歓迎するためだと言って、アルペジオの家では豪華な料理が振る舞われました。
 ここで働いている使用人も、また竜なのでしょうか?


「あの……良いんですか? 竜人の里に案内するばかりか、こうしてご飯まで用意して頂いて?」
「当たり前だ、イリス嬢は大切な客だ。ゆっくりしていくが良い」

 アルペジオは遠慮せず食べるよう私に勧めます。
 私は、ぱくりと料理に手を伸ばします。

「口に合うと良いのだが……」
「とてもおいしいです」

 私は目を輝かせて答えます。

 素材の味を活かした素朴な味付けの料理。
 ついつい手が伸びてしまう魅力的なものでした。

「この国を守護していた竜が、アルペジオ様のような優しい方だったのには驚きました」

 ここには生贄として死ぬつもりで来たのです。
 それなのに待っていたのは、守護竜アルペジオによる熱烈な歓迎。
 もう怖さはありませんでした。


「イリス嬢は想像通りだったな。毎朝の祈りから伝わってきたとおり――優しくて慈悲深い心優しい少女だ」
「やめてください。私を持ちあげても何も出ませんよ?」

 ここまでストレートな好意をぶつけらるのは、生まれて初めてです。
 私は恥ずかしさを隠すようにお椀を手に取り、そっと顔を隠すのでした。
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