2 / 6
開拓村
しおりを挟む
私が送り込まれたのは、辺境にある開拓村。
罪人が流れつく流刑地だった。
「これは……。ひどい有り様ですね」
まさしく荒れ果てた不毛の地。
人々は暗い顔で、畑を耕していました。
土地が死んでおり、作物の実りもなく苦しんでいる様子。
おまけに結界も薄く、現れたモンスターに自力で対処する必要がありそうだ。
今まで王宮でぬくぬくと育ってきた貴族令嬢には、あまりにも過酷な地。
大方、イディル王子とスールは、私がここで野垂れ死ぬと思ったのだろうが……
***
「狩りの時間じゃああああ!」
開拓村で暮らしはじめて1週間後。
私は、すっかり辺境での暮らしに馴染みきっていた。
ちなみに王宮に慣れるまでは、丸一年かかった。
やっぱり私はこちらの方が性に合っているらしい。
そう。私もスールも、元はと言えばただの田舎娘。
おまけに私は、故郷では山にこもってサバイバル生活を楽しんでいた田舎娘だ。
王宮で慣れぬダンスに興じるより、野山を駆け回っている方が100倍楽しい。
「エリーゼ! そっちに行ったぞ!」
私の目の前には、まっとうな貴族令嬢なら悲鳴を上げそうな牛型モンスター。
凶悪そうな角を構えてまっすぐこちらに突っ込んでくるが、私の目には美味しそうなお肉にしか見えない。
「おまかせを……! セイントプリズン!」
私とて一応は聖女だ。
この程度のモンスターは、相手にもならない。
私の魔法を受けて、牛型モンスターはバタリと倒れた。
「何度見てもエリーゼちゃんの魔法は凄まじいな!」
「さぞ名のある術者なんだろうな! それなのに、こんなところに送り込まれるなんて……。いったい何をしでかしたんだい?」
「だから聖女だったって、何度も言ってるじゃないですか!」
「はっはっはっ。聖女様といえば、吹けば飛ぶような華奢な少女だって話じゃないか。『晩飯じゃああああ!』ってモンスターに飛びかかるエリーゼが名乗るには、ちょ~っとばかし無理があるんじゃないか?」
別段隠すことでも無い。
正直に「私が聖女なんですよう!」と主張したが、まるで受け入れられる様子がない。……解せぬ。
「今までならビーストボアが相手なら、犠牲者を覚悟するほどだった。それを、こんなにアッサリと倒せるようなるとはなあ──」
「みなさんがうまくこちらに誘導して下さったおかげですよ!」
「可憐な嬢ちゃんにモンスターを押し付けるなんて、普通だったら許されない行為だとは思うんだが……」
「まあエリーゼちゃんは例外だろ。可憐な女の子は、モンスターを一撃で仕留めたりはしねからな」
「ははっ。違いねえ」
随分と失礼な会話だ。
まあ下手に距離を取られるより、この距離感が心地よいのだけど。
「こう見えて私、元・聖女ですからね! その程度の相手なら、じゃんじゃん任せてください!」
「はっはっは、まだ言うか。こんな辺境に流されて目を輝かせるようなたくましい女が、可憐な聖女様である訳あるか!」
聖女というイメージが独り歩きして、すっかり色々な人を騙しているみたいですね。
……残念ながら中身、私なんですけどね。
「それでは畑の方で、豊作の祈りを捧げてきますね。ああ、新鮮でみずみずしい果物の美味しさたるや! 来年の収穫が、今から待ち遠しいです!」
「ま~たそんなに無茶をして。魔力はもうすっからかんだろう?」
「薬を飲めばへっちゃらです!」
「それは大丈夫って言わないんだ。いいから今日はもう休め!」
「まったく、油断もすきもあったもんじゃない。エリーゼは気を抜くと、ぶっ倒れるまで魔法を使っちまうんだからな」
王宮で聖女として働いていた日々を思えば、まだまだ楽勝なんですけどね?
過保護な村の住人たちは「いいからもう休め!」と私を食事処に連れていく。
むう。まだまだ信頼には程遠いということか。
開拓村の人に認められるまでは、まだまだ時間がかかりそうだ。
もっと頑張らないと……私は内心で、えいえいおー! と気合を入れるのだった。
罪人が流れつく流刑地だった。
「これは……。ひどい有り様ですね」
まさしく荒れ果てた不毛の地。
人々は暗い顔で、畑を耕していました。
土地が死んでおり、作物の実りもなく苦しんでいる様子。
おまけに結界も薄く、現れたモンスターに自力で対処する必要がありそうだ。
今まで王宮でぬくぬくと育ってきた貴族令嬢には、あまりにも過酷な地。
大方、イディル王子とスールは、私がここで野垂れ死ぬと思ったのだろうが……
***
「狩りの時間じゃああああ!」
開拓村で暮らしはじめて1週間後。
私は、すっかり辺境での暮らしに馴染みきっていた。
ちなみに王宮に慣れるまでは、丸一年かかった。
やっぱり私はこちらの方が性に合っているらしい。
そう。私もスールも、元はと言えばただの田舎娘。
おまけに私は、故郷では山にこもってサバイバル生活を楽しんでいた田舎娘だ。
王宮で慣れぬダンスに興じるより、野山を駆け回っている方が100倍楽しい。
「エリーゼ! そっちに行ったぞ!」
私の目の前には、まっとうな貴族令嬢なら悲鳴を上げそうな牛型モンスター。
凶悪そうな角を構えてまっすぐこちらに突っ込んでくるが、私の目には美味しそうなお肉にしか見えない。
「おまかせを……! セイントプリズン!」
私とて一応は聖女だ。
この程度のモンスターは、相手にもならない。
私の魔法を受けて、牛型モンスターはバタリと倒れた。
「何度見てもエリーゼちゃんの魔法は凄まじいな!」
「さぞ名のある術者なんだろうな! それなのに、こんなところに送り込まれるなんて……。いったい何をしでかしたんだい?」
「だから聖女だったって、何度も言ってるじゃないですか!」
「はっはっはっ。聖女様といえば、吹けば飛ぶような華奢な少女だって話じゃないか。『晩飯じゃああああ!』ってモンスターに飛びかかるエリーゼが名乗るには、ちょ~っとばかし無理があるんじゃないか?」
別段隠すことでも無い。
正直に「私が聖女なんですよう!」と主張したが、まるで受け入れられる様子がない。……解せぬ。
「今までならビーストボアが相手なら、犠牲者を覚悟するほどだった。それを、こんなにアッサリと倒せるようなるとはなあ──」
「みなさんがうまくこちらに誘導して下さったおかげですよ!」
「可憐な嬢ちゃんにモンスターを押し付けるなんて、普通だったら許されない行為だとは思うんだが……」
「まあエリーゼちゃんは例外だろ。可憐な女の子は、モンスターを一撃で仕留めたりはしねからな」
「ははっ。違いねえ」
随分と失礼な会話だ。
まあ下手に距離を取られるより、この距離感が心地よいのだけど。
「こう見えて私、元・聖女ですからね! その程度の相手なら、じゃんじゃん任せてください!」
「はっはっは、まだ言うか。こんな辺境に流されて目を輝かせるようなたくましい女が、可憐な聖女様である訳あるか!」
聖女というイメージが独り歩きして、すっかり色々な人を騙しているみたいですね。
……残念ながら中身、私なんですけどね。
「それでは畑の方で、豊作の祈りを捧げてきますね。ああ、新鮮でみずみずしい果物の美味しさたるや! 来年の収穫が、今から待ち遠しいです!」
「ま~たそんなに無茶をして。魔力はもうすっからかんだろう?」
「薬を飲めばへっちゃらです!」
「それは大丈夫って言わないんだ。いいから今日はもう休め!」
「まったく、油断もすきもあったもんじゃない。エリーゼは気を抜くと、ぶっ倒れるまで魔法を使っちまうんだからな」
王宮で聖女として働いていた日々を思えば、まだまだ楽勝なんですけどね?
過保護な村の住人たちは「いいからもう休め!」と私を食事処に連れていく。
むう。まだまだ信頼には程遠いということか。
開拓村の人に認められるまでは、まだまだ時間がかかりそうだ。
もっと頑張らないと……私は内心で、えいえいおー! と気合を入れるのだった。
25
あなたにおすすめの小説
『魔力ゼロの欠陥品』と蔑まれた伯爵令嬢、卒業パーティーで婚約破棄された瞬間に古代魔法が覚醒する ~虐げられ続けた三年間、倍返しでは足りない~
スカッと文庫
恋愛
「貴様のような無能、我が国の王妃には相応しくない。婚約を破棄し、学園から追放する!」
王立魔道学園の卒業パーティー。きらびやかなシャンデリアの下、王太子エドワードの声が冷酷に響いた。彼の隣には、愛くるしい表情で私を嵌めた男爵令嬢、ミナが勝ち誇ったように寄り添っている。
伯爵令嬢のリリアーヌは、入学以来三年間、「魔力ゼロの欠陥品」として学園中の嘲笑を浴び続けてきた。
婚約者であるエドワードからは一度も顧みられず、同級生からはゴミのように扱われ、ミナの自作自演による「いじめ」の濡れ衣まで着せられ……。
それでも、父との「力を隠せ」という約束を守るため、泥を啜るような屈辱に耐え抜いてきた。
――だが、国からも学園からも捨てられた今、もうその約束を守る必要はない。
「さようなら、皆様。……私が消えた後、この国がどうなろうと知ったことではありませんわ」
リリアーヌが身につけていた「魔力封印の首飾り」を自ら引き千切った瞬間、会場は漆黒の魔力に包まれた。
彼女は無能などではない。失われた「古代魔法」をその身に宿す、真の魔道の主だったのだ。
絶望する王太子たちを余目に、隣国の伝説の魔術師アルベルトに拾われたリリアーヌ。
彼女の、残酷で、甘美な復讐劇が今、幕を開ける――。
救国の代償で白髪になった聖女、一度のミスを理由に「無能の戦犯」として追放される ~隣国の覇王に拾われ、愛され、奇跡の力を見せつける~
スカッと文庫
ファンタジー
聖女アリシアは、百年に一度の大氾濫から国を守るため、禁忌の魔力全解放を行い、単身で数万の魔物を殲滅した。その代償として、彼女の美しい金髪は真っ白な「白雪色」に染まり、魔力は一時的に枯渇してしまう。
しかし、その功績はすべて現場にいなかった「偽聖女セシリア」に奪われ、アリシアは「結界を一部損壊させた戦犯」「魔力を失った役立たず」として、婚約者の王太子ギルバートから国外追放を言い渡される。
「失敗したゴミに、この国の空気は吸わせない」
泥の中に捨てられたアリシア。しかし、彼女を拾ったのは、敵対国として恐れられていた帝国の「武徳皇帝」ラグナールだった。彼はアリシアの白髪が「高純度の神聖魔力による変質」であることを瞬時に見抜き、彼女を帝国の宝として迎える。
数ヶ月後。アリシアが帝国の守護聖女として輝きを取り戻した頃、王国では「一度きりの奇跡」だったセシリアの魔力が尽き、本当の滅亡が始まっていた。
「今さら結界が解けたと泣きつかれても、もう私の魔力は一滴も残っていません」
家族の靴を磨いていた私が、実は【神の加護を磨き上げた聖女】だった件。隣国の冷徹皇帝に「君の献身は世界を救う」と誘拐、24 執着されています
唯崎りいち
恋愛
「お前は一生、靴でも磨いていろ」
家族に虐げられ、靴を磨き続けた私。
実はその靴、磨くたびに『神の加護』が宿る聖具になっていました。
噂を聞きつけた隣国の冷徹皇帝に、出会い頭にさらわれて――
「君は俺のものだ。24時間、指一本触れさせない」
靴を履かせてもらえず、移動は常に皇帝の腕の中!?
磨き上げた加護のせいで、皇帝の執着が神レベルに育ってしまう溺愛物語。
公爵令嬢ですが、実は神の加護を持つ最強チート持ちです。婚約破棄? ご勝手に
ゆっこ
恋愛
王都アルヴェリアの中心にある王城。その豪奢な大広間で、今宵は王太子主催の舞踏会が開かれていた。貴族の子弟たちが華やかなドレスと礼装に身を包み、音楽と笑い声が響く中、私——リシェル・フォン・アーデンフェルトは、端の席で静かに紅茶を飲んでいた。
私は公爵家の長女であり、かつては王太子殿下の婚約者だった。……そう、「かつては」と言わねばならないのだろう。今、まさにこの瞬間をもって。
「リシェル・フォン・アーデンフェルト。君との婚約を、ここに正式に破棄する!」
唐突な宣言。静まり返る大広間。注がれる無数の視線。それらすべてを、私はただ一口紅茶を啜りながら見返した。
婚約破棄の相手、王太子レオンハルト・ヴァルツァーは、金髪碧眼のいかにも“主役”然とした青年である。彼の隣には、勝ち誇ったような笑みを浮かべる少女が寄り添っていた。
「そして私は、新たにこのセシリア・ルミエール嬢を伴侶に選ぶ。彼女こそが、真に民を導くにふさわしい『聖女』だ!」
ああ、なるほど。これが今日の筋書きだったのね。
わたくしを追い出した王太子殿下が、一年後に謝罪に来ました
柚木ゆず
ファンタジー
より優秀な力を持つ聖女が現れたことによってお払い箱と言われ、その結果すべてを失ってしまった元聖女アンブル。そんな彼女は古い友人である男爵令息ドファールに救われ隣国で幸せに暮らしていたのですが、ある日突然祖国の王太子ザルースが――アンブルを邪険にした人間のひとりが、アンブルの目の前に現れたのでした。
「アンブル、あの時は本当にすまなかった。謝罪とお詫びをさせて欲しいんだ」
現在体調の影響でしっかりとしたお礼(お返事)ができないため、最新の投稿作以外の感想欄を一時的に閉じさせていただいております。
婚約者を処刑したら聖女になってました。けど何か文句ある?
春夜夢
恋愛
処刑台に立たされた公爵令嬢エリス・アルメリア。
無実の罪で婚約破棄され、王都中から「悪女」と罵られた彼女の最期――
……になるはずだった。
『この者、神に選ばれし者なり――新たなる聖女である』
処刑の瞬間、突如として神託が下り、国中が凍りついた。
死ぬはずだった“元・悪女”は一転、「聖女様」として崇められる立場に。
だが――
「誰が聖女? 好き勝手に人を貶めておいて、今さら許されるとでも?」
冷笑とともに立ち上がったエリスは、
“神の力”を使い、元婚約者である王太子を皮切りに、裏切った者すべてに裁きを下していく。
そして――
「……次は、お前の番よ。愛してるふりをして私を売った、親友さん?」
清く正しい聖女? いいえ、これは徹底的に「やり返す」聖女の物語。
ざまぁあり、無双あり、そして……本当の愛も、ここから始まる。
【完結】婚約破棄して泥を投げつけた元婚約者が「無能」と笑う中、光り輝く幼なじみの王子に掠め取られました。
ムラサメ
恋愛
「お前のような無能、我が家には不要だ。今すぐ消えろ!」
婚約者・エドワードのために身を粉にして尽くしてきたフィオナは、卒業パーティーの夜、雨の中に放り出される。
泥にまみれ、絶望に沈む彼女の前に現れたのは、かつての幼なじみであり、今や国中から愛される「黄金の王子」シリルだった。
「やっと見つけた。……ねえ、フィオナ。あんなゴミに君を傷つけさせるなんて、僕の落ち度だね」
汚れを厭わずフィオナを抱き上げたシリルは、彼女を自分の屋敷へと連れ帰る。
「自分には価値がない」と思い込むフィオナを、シリルは異常なまでの執着と甘い言葉で、とろけるように溺愛し始めて――。
一方で、フィオナを捨てたエドワードは気づいていなかった。
自分の手柄だと思っていた仕事も、領地の繁栄も、すべてはフィオナの才能によるものだったということに。
ボロボロになっていく元婚約者。美しく着飾られ、シリルの腕の中で幸せに微笑むフィオナ。
「僕の星を捨てた報い、たっぷりと受けてもらうよ?」
圧倒的な光を放つ幼なじみによる、最高に華やかな逆転劇がいま始まる!
虐げられた聖女が魔力を引き揚げて隣国へ渡った結果、祖国が完全に詰んだ件について~冷徹皇帝陛下は私を甘やかすのに忙しいそうです~
日々埋没。
恋愛
「お前は無能な欠陥品」と婚約破棄された聖女エルゼ。
彼女が国中の魔力を手繰り寄せて出国した瞬間、祖国の繁栄は終わった。
一方、隣国の皇帝に保護されたエルゼは、至れり尽くせりの溺愛生活の中で真の力を開花させていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる