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32.【王国SIDE】崩壊、大混乱の王都
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※ 30話と31話を間違えて投稿したので修正しました... ご注意ください
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何1つとして具体的な解決策も見いだせぬまま。
俺――アレクは、一週間もの時を自室に引きこもって過ごした。
(何かの間違いに違いない。姉上が見間違えただけだ。結界の穴なんて、気がついたら直っているかもしれない)
自分でも信じていない夢物語。崩壊はすぐそこに迫っていたのに、俺には何も選択出来なかったのだ。
そうして――ついにその時を迎えてしまう。
◆◇◆◇◆
「大変です!」
「な、なにごとだ!?」
城に勤める衛兵によって叩き起こされた俺は、そのまま謁見の間に呼び出された。
「暴徒と化した国民が押し寄せているだと? なぜ、このようなことになった!?」
そこで耳にしたのは、いつか来てしまうことを恐れていた未来。俺は焦りを押し隠し、どうにか平静を取り繕う。
「王国に逆らう不届き者どもが! すぐに騎士団に命じて、鎮圧してしまえ!」
「そ、それが騎士団すらも暴徒に味方しているとのことです!」
――は?
あまりのことに事態が飲み込めず、間抜け面を晒してしまう。
「何故、我が国の誇り高い騎士団が、暴徒なんぞに味方をする?」
「そんなの明らかに向こう側に、正当性があるからですよ!」
衛兵は悲鳴のような声を上げた。
「破られた結界とモンスターについて、王国は何も説明しない。それどころか、未だにくだらない権力闘争に明け暮れているんです」
「そ、それは……」
「騎士団長は公平な方です。実際に王都の様子を見て――決断なされたのですよ!」
――我が国はどうなってしまうのだ?
押し寄せてくる深い絶望。
「ここに押し寄せてきた者は何と?」
「結界の綻びから現れたモンスターにより、故郷を追われたと。国の守りはどうなっているのだ、と興奮状態です!」
どれほどの難民が、城下町まで押し寄せてきた? 国の守りがどうなっているかは、俺のほうが知りたいぐらいだ。
「城の守りは持つのか。バリケードを張っているのだろう?」
「どうにか持ちこたえていますが、人数が違いすぎます! 時間の問題でしょう……」
(くそっ。何ということだ)
貴族の住む上層には何の影響もなかったようだが、今回はそれが仇となった形だ。王城にいる者は、基本的に下々の暮らしなぞに興味が無い。
城下町の異常に、気づくのが遅れたのだ。
「押し寄せてきた難民により、王都は大混乱です。いつモンスターが姿を現すか、不安な時を過ごしています!」
「陛下、どうか説明を!」
国王の口から出てきたのは、重々しいため息。
「アレクよ、結界の大穴の件はどうなっている?」
国王は驚くことに、こちらに聞いてきた。この状況でまだ俺にすべてを任せきりなのだ。どうにかしている。
「ええ。ただいま全力で当たっている最中でして……」
国王の詰問。
俺はいつものように、誤魔化しを重ねた。
「え? アレク様の雇われた結界師たちは、すでに国に帰られているのでは?」
「おい、貴様!」
俺は口を滑らせた傍付きを睨みつけた。あっと口を抑えるも、もう遅い。
国王は燃えるような瞳で、こちらを見ていた。
「どうするつもりだ? おかげで、我が国は滅びの一歩手前だ」
なんの手も打たなかったことがバレた!
「ち、父上こそ何もしなかったではありませんか。一方的に責められる謂れはありません!」
「黙れ! 貴様は、私に逆らうと言うのか!」
「国が終わろうかというときに、国王という身分なんて関係ないでしょう!」
こうして、みにくい言い争いが始まった。国王は顔を見にくく歪め、ツバを吐きながら口汚く俺を罵る。
「いい加減にして下さい。そのようなことをしている場合ですか!?」
聞いていたひとりが悲鳴を上げたが、その程度でおさまるのなら、こうはなっていない。
(この国は、もう詰んでいるな)
俺は早々に見切りを付け、時間を稼ぎ、国外に脱出する方向に思考をシフトする。
(この状況をどうにかするために――偽聖女! タイミングは予定とは違うが、ちょうど良い奴がいるではないか)
「おい! 今回の件は、すべて姉上――エリーゼのせいだ。すぐに処刑の準備を執り行え!」
すべての元凶は、あまりに明白だった。国民のガス抜きには、ちょうど良い見世物となるだろう。名案だと思ったが、思わぬ人物が止めにかかる。
「待て。それは許可出来ないな」
止めたのはなんと、尋問官・ディールだった。どういうつもりだ? こいつは、エリーゼに深い恨みがあるはずなのに。
「何故だ?」
「まだ自白が取れていない。奴が国を滅ぼすつもりだったかは不明だ」
「そんなことは関係ない! 我らが黒だと言えば、黒だ!」
「やれやれ、殿下は尋問官の存在意義を否定するのですね。自白や証拠もなく、国民が納得するとでも?」
(正論ではあるが……何故、こいつが姉上を庇う!?)
あくまで公正を重んじる尋問官という職業柄か。頭でっかちめ。
「……部屋に戻る」
「今後について考える。私も部屋に戻らせてもらう」
(もう、この国は終わりだ――)
俺と父上は、同じ結論に至ったらしい。
国を脱出するつもりなのだろう――ある意味で似たもの同士。簡単に思考が読めた。
俺は大急ぎで、部屋に戻った。滅びゆく国の王位には、なんの価値もない。どんなコネを使ってでも、何をしてでも自分だけは生き延びる。
国の王子にあるまじき決意とともに。
後ろからはディールによる――冷たく底冷えのするような視線が注がれていたが……俺はついぞ気がつくことは無かった。
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何1つとして具体的な解決策も見いだせぬまま。
俺――アレクは、一週間もの時を自室に引きこもって過ごした。
(何かの間違いに違いない。姉上が見間違えただけだ。結界の穴なんて、気がついたら直っているかもしれない)
自分でも信じていない夢物語。崩壊はすぐそこに迫っていたのに、俺には何も選択出来なかったのだ。
そうして――ついにその時を迎えてしまう。
◆◇◆◇◆
「大変です!」
「な、なにごとだ!?」
城に勤める衛兵によって叩き起こされた俺は、そのまま謁見の間に呼び出された。
「暴徒と化した国民が押し寄せているだと? なぜ、このようなことになった!?」
そこで耳にしたのは、いつか来てしまうことを恐れていた未来。俺は焦りを押し隠し、どうにか平静を取り繕う。
「王国に逆らう不届き者どもが! すぐに騎士団に命じて、鎮圧してしまえ!」
「そ、それが騎士団すらも暴徒に味方しているとのことです!」
――は?
あまりのことに事態が飲み込めず、間抜け面を晒してしまう。
「何故、我が国の誇り高い騎士団が、暴徒なんぞに味方をする?」
「そんなの明らかに向こう側に、正当性があるからですよ!」
衛兵は悲鳴のような声を上げた。
「破られた結界とモンスターについて、王国は何も説明しない。それどころか、未だにくだらない権力闘争に明け暮れているんです」
「そ、それは……」
「騎士団長は公平な方です。実際に王都の様子を見て――決断なされたのですよ!」
――我が国はどうなってしまうのだ?
押し寄せてくる深い絶望。
「ここに押し寄せてきた者は何と?」
「結界の綻びから現れたモンスターにより、故郷を追われたと。国の守りはどうなっているのだ、と興奮状態です!」
どれほどの難民が、城下町まで押し寄せてきた? 国の守りがどうなっているかは、俺のほうが知りたいぐらいだ。
「城の守りは持つのか。バリケードを張っているのだろう?」
「どうにか持ちこたえていますが、人数が違いすぎます! 時間の問題でしょう……」
(くそっ。何ということだ)
貴族の住む上層には何の影響もなかったようだが、今回はそれが仇となった形だ。王城にいる者は、基本的に下々の暮らしなぞに興味が無い。
城下町の異常に、気づくのが遅れたのだ。
「押し寄せてきた難民により、王都は大混乱です。いつモンスターが姿を現すか、不安な時を過ごしています!」
「陛下、どうか説明を!」
国王の口から出てきたのは、重々しいため息。
「アレクよ、結界の大穴の件はどうなっている?」
国王は驚くことに、こちらに聞いてきた。この状況でまだ俺にすべてを任せきりなのだ。どうにかしている。
「ええ。ただいま全力で当たっている最中でして……」
国王の詰問。
俺はいつものように、誤魔化しを重ねた。
「え? アレク様の雇われた結界師たちは、すでに国に帰られているのでは?」
「おい、貴様!」
俺は口を滑らせた傍付きを睨みつけた。あっと口を抑えるも、もう遅い。
国王は燃えるような瞳で、こちらを見ていた。
「どうするつもりだ? おかげで、我が国は滅びの一歩手前だ」
なんの手も打たなかったことがバレた!
「ち、父上こそ何もしなかったではありませんか。一方的に責められる謂れはありません!」
「黙れ! 貴様は、私に逆らうと言うのか!」
「国が終わろうかというときに、国王という身分なんて関係ないでしょう!」
こうして、みにくい言い争いが始まった。国王は顔を見にくく歪め、ツバを吐きながら口汚く俺を罵る。
「いい加減にして下さい。そのようなことをしている場合ですか!?」
聞いていたひとりが悲鳴を上げたが、その程度でおさまるのなら、こうはなっていない。
(この国は、もう詰んでいるな)
俺は早々に見切りを付け、時間を稼ぎ、国外に脱出する方向に思考をシフトする。
(この状況をどうにかするために――偽聖女! タイミングは予定とは違うが、ちょうど良い奴がいるではないか)
「おい! 今回の件は、すべて姉上――エリーゼのせいだ。すぐに処刑の準備を執り行え!」
すべての元凶は、あまりに明白だった。国民のガス抜きには、ちょうど良い見世物となるだろう。名案だと思ったが、思わぬ人物が止めにかかる。
「待て。それは許可出来ないな」
止めたのはなんと、尋問官・ディールだった。どういうつもりだ? こいつは、エリーゼに深い恨みがあるはずなのに。
「何故だ?」
「まだ自白が取れていない。奴が国を滅ぼすつもりだったかは不明だ」
「そんなことは関係ない! 我らが黒だと言えば、黒だ!」
「やれやれ、殿下は尋問官の存在意義を否定するのですね。自白や証拠もなく、国民が納得するとでも?」
(正論ではあるが……何故、こいつが姉上を庇う!?)
あくまで公正を重んじる尋問官という職業柄か。頭でっかちめ。
「……部屋に戻る」
「今後について考える。私も部屋に戻らせてもらう」
(もう、この国は終わりだ――)
俺と父上は、同じ結論に至ったらしい。
国を脱出するつもりなのだろう――ある意味で似たもの同士。簡単に思考が読めた。
俺は大急ぎで、部屋に戻った。滅びゆく国の王位には、なんの価値もない。どんなコネを使ってでも、何をしてでも自分だけは生き延びる。
国の王子にあるまじき決意とともに。
後ろからはディールによる――冷たく底冷えのするような視線が注がれていたが……俺はついぞ気がつくことは無かった。
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王国は滅んでも、図書室は後世のためにも残したい。
番号も順番もハチャメチャな気がする...29が2つあるし、31のあとの話が30だし…
いっそ滅んだ方が良いのでは?