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24.幕間
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遡ること、数日。
これは幕間の物語。
当事者しか知らない、裏の物語。
表には決して出る事のない。
暗躍する者たちのお話。
ーー
「あの娘から連絡は来ますかね」
影のような従者は尋ねる。
ただの世間話。
彼が答えようと答えまいとどうでもいい。
王子は面倒な性格なのだ。
全く話しかけないと怒るし、話しかけすぎると面倒がられる。
第二王子のあのお方とは、性格面でも随分と差がある。
王子はふんっと鼻を鳴らして答える。
従者の問いに、興味無さげに答える。
「どちらでもいい。ただの暇潰しだ」
続けて言う。
「だが、結局は来る。恋する乙女とはそう言うもの。協力者のことを毛嫌いしていようと、想い人を不幸にしようと、そんな『過程』はあいつらにとってはただの飾り付けに過ぎない。寧ろ、それだけの代償を払うからこそ、それだけ燃え上がるというもの」
興が乗ってきたのか少し饒舌に話した。
「成る程、そういうものですか」
「そう言うものだ。いつだって自分がヒロインと思いたがる。物語の主人公だと誤解している。自分だけが特別と、そう思いたがる。他人だって、自身と同じ条件を与えられている可能性にも、思い至らずにな」
「そうかもしれませんね。相変わらず、貴方は酷いお方だ。あの方に提示した条件を、他の婚約者たち全員にも打診しているにですから」
「その半分弱には秒で断られたがな。まあ、半分残ればゲームとしては上々だろう」
あとは最後までついて来るのが何人か、と王子は見下げたように言う。
「自分の嘘はばれなくて、他人の嘘は見破っているつもりになっている。まだ二十と生きていない小娘なのに、世界を知った気になっている。箱庭の中にいる御身分で、何を知ったつもりなのやらーーまあ、そういう愚かさも俺は嫌いではないのだけどね」
「そうでしょうね。他人の苦しみ足掻く物語で、そこまで笑顔になる方も珍しい」
従者が言い終えたところで、重厚な扉が開く。
別の従者が手紙を携えやってくる。
「ほら、来た」
従者が中身を開封し、王子に渡す。
内容を軽く一瞥し、乱暴に投げ捨てる。
どうでもいい物のように、無価値なもののように。
「さて、俺も動くとするか」
「何をされるおつもりで」
「決まってる」
王子は言う。
弟に全てを奪われつつある王子は言う。
「恋する乙女を救うのは、いつだって王子様だ」
そう言って、王子は部屋を出た。
意気揚々と、楽しそうに。
だが、従者は思った。
ならば、貴方様もご自身を主人公と誤認している可能性はないのだろうか、と。
いつか背後から刺されるその時がないとは、限らないのではあろうか、と。
胸元に忍ばせた短剣の感触と共に、彼は思った。
これは幕間の物語。
当事者しか知らない、裏の物語。
表には決して出る事のない。
暗躍する者たちのお話。
ーー
「あの娘から連絡は来ますかね」
影のような従者は尋ねる。
ただの世間話。
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王子は面倒な性格なのだ。
全く話しかけないと怒るし、話しかけすぎると面倒がられる。
第二王子のあのお方とは、性格面でも随分と差がある。
王子はふんっと鼻を鳴らして答える。
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続けて言う。
「だが、結局は来る。恋する乙女とはそう言うもの。協力者のことを毛嫌いしていようと、想い人を不幸にしようと、そんな『過程』はあいつらにとってはただの飾り付けに過ぎない。寧ろ、それだけの代償を払うからこそ、それだけ燃え上がるというもの」
興が乗ってきたのか少し饒舌に話した。
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「そう言うものだ。いつだって自分がヒロインと思いたがる。物語の主人公だと誤解している。自分だけが特別と、そう思いたがる。他人だって、自身と同じ条件を与えられている可能性にも、思い至らずにな」
「そうかもしれませんね。相変わらず、貴方は酷いお方だ。あの方に提示した条件を、他の婚約者たち全員にも打診しているにですから」
「その半分弱には秒で断られたがな。まあ、半分残ればゲームとしては上々だろう」
あとは最後までついて来るのが何人か、と王子は見下げたように言う。
「自分の嘘はばれなくて、他人の嘘は見破っているつもりになっている。まだ二十と生きていない小娘なのに、世界を知った気になっている。箱庭の中にいる御身分で、何を知ったつもりなのやらーーまあ、そういう愚かさも俺は嫌いではないのだけどね」
「そうでしょうね。他人の苦しみ足掻く物語で、そこまで笑顔になる方も珍しい」
従者が言い終えたところで、重厚な扉が開く。
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「ほら、来た」
従者が中身を開封し、王子に渡す。
内容を軽く一瞥し、乱暴に投げ捨てる。
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「さて、俺も動くとするか」
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「恋する乙女を救うのは、いつだって王子様だ」
そう言って、王子は部屋を出た。
意気揚々と、楽しそうに。
だが、従者は思った。
ならば、貴方様もご自身を主人公と誤認している可能性はないのだろうか、と。
いつか背後から刺されるその時がないとは、限らないのではあろうか、と。
胸元に忍ばせた短剣の感触と共に、彼は思った。
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