虚弱で大人しい姉のことが、婚約者のあの方はお好きなようで……

くわっと

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「なんとかーー言えました」

カストリア様と別れた後、私はその場にへたり込んだ。
突然の好き宣言、加えての褒め殺し。
危うく本当に死ぬところだった。

だけど、なんとか目的を果たす事ができた。
計画の第一歩。
それは同時に、自らの手を汚す第一歩。
着実に私は穢れに染まっていく。
黒い、薄暗い泥に塗れていくような感覚。
ゆっくり、徐々に体に纏わりついてくる。

とてもーー気持ち悪い。
でも、今は我慢だ。
耐え凌ぐ時だ。
まずは進捗を出さねば、お父様を納得させるだけの成果と証拠をあげなくては。
そのために、私はあの男の力を借りたのだから。
悪魔の契約を交わしたのだから。

あれは、カストリア様と再会する数日前。
私はあの男と再会していた。
あの日のことを思い出す。
状況確認。
反省会。
それを、一人自分の頭の中でこなす。

ーー

待つ、というのは疲れる。
それも、重要な案件であれば尚更だ。
嫌いな相手で有れば、もっとである。
前回とは違う、アンドレアル様指定の会合場所。
変わらず趣味の悪い華美な調度品が並ぶ。
椅子はふかふかで柔らかすぎる。
体が沈み込み過ぎて、不安定になる。

「……はぁ」

溜息が溢れる。
最近、溜息ばかりの生活が続いている。
仕方のないことではあるけれど、昔はもっとましだった気がする。
ーーで有れば、過去の私は今の私ほど、頑張っていなかったのかもしれない。
現実逃避して、あのお方との逢瀬を満喫していただけなのかもしれない。
いや、やめそう。
自分を責めるのはよそう。
その結論は既に出ている、あの時に出している。
私は、私ができる最善を尽くした。
今は気持ちがへこんでいるから、そう思ってしまうだけだ。

ーーと、大きな扉ががとん、と大きな音と共に開け放たれる。
見覚えのある顔が、得意げな表情とともにやってくる。

「お久しぶりです、アンドレアル様」

私は立ち上がり、深々と頭を下げる。
挨拶は大事だ。
立場が違う相手なら、尚更。
それに、今日は私一人。
単独行動。
移動のために従者は連れているが、部屋には入れていない。
これは、私一人の戦い。
情報が漏れる可能性はなるべく小さくしたいし、それは相手も同じことだろう。

予定時間より大分遅れて、第一王子はやってきた。
世話役だろう、影のような細長い従者を一人連れて、のそのそと歩いて来る。
こちらに謝る様子はまるでなく、待たせて当然という顔つきで、どすんと自身の椅子に座る。
代わりに彼の従者が軽く頭を下げ、てきぱきと飲み物をグラスに注いでいく。
作業が終わると、また影のように彼の背後に控えた。
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