虚弱で大人しい姉のことが、婚約者のあの方はお好きなようで……

くわっと

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「思いのほか早かったな」

アンドレアル様は言う。
その言葉は、どちらにかかっているのだろう。
今日の約束のことか、
それとも、私が計画に参加することか。
ーーおそらくは後者だろう。
あの場でまともな回答をしなかった私が、この短期間で結論を出したことに。
お父様の一件がなければ、もう少し時間がかかっただろう。
もう少し、時間をかけて迷っていたことだろう。
行き着く結論は、一緒だったかもしれないが。

「どのような心境の変化だ。あれだけ黙っていたから、どちらの結論に至るにしろ、まだ時間がかかると思ったが」

やはり、回答の件だった。

「いえ、私の心は決まったのでこれ以上、お時間をいただく必要はないかと。それにーー達成できるならば、実行に移すのは早ければ早いほどいいかと。その方が、得られた果実を味わえる時間が長くなりますし」

私は笑顔を作る。
前よりは、うまく笑えている気がする。
嘘に塗れて、欲に濡れたおかげかもしれない。

「それは傑作、傑作だよ……ふっ、ふふふっ」

口を押さえ、机を叩きながら彼は笑う。
堪えるように、声を出して笑う。
それが私のように演技なのかどうかは、分からないが。

「そうかそうか、味うと来たか。すまない、俺は君という女性を侮ってーーいや、勘違いしていたようだ。従者が優秀なら、その主人も優秀か。これはいい、凄くいいぞ。面白くなってきた」

「お褒めにあずかり、光栄です。ですが、面白さよりも実現性について重点を置いてもらえると助かります」

「それは勿論だ。実現しての、成功してこその我らが計画だからな。安心しろ、、それ以外については心配ない。10割、とまではいかないが、8割9割達成している」

10割でなければ困るのだが、と内心で毒づく。
一発必中でなければ、二の矢は私にはない。
この放たれた矢が外れて仕舞えば、私に次はないのだから。

「だから、大丈夫だ。大船に乗ったつもりでいてくれ。君は自身の役割を果たしてくれればいい。そうすれば、我らが求める果実は手中にあるも同然だ」

ぐっと彼は拳をつくる。
まるで、果実を握るように。
握り潰すように。

「じゃあ話そうか」

ごくり、と息をのむ。
ここまで来たら、引き返せない。

「俺たちの共同作業について」

アンドレアル様は言う。
口元を少し歪めて、言う。

「×××の××計画について」

ーーん?
今、なんて言った?
私は、大事なところを聞き漏らした。ー
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